ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

大野病院事件 第3回公判

2007年03月17日 | 大野病院事件

コメント:

昨日、大野病院事件の第3回公判がありました。前回の公判に引き続いて、検察側の証人尋問があり、証人の麻酔科の先生が、「ミスと呼べるところがあったかは疑問だ」と弁護側に有利な証言をした模様です。

しばらく待てば、周産期医療の崩壊をくい止める会サイトに詳細な傍聴録が載ると思います。

参考:

福島県立大野病院事件第三回公判(1)、ロハス・メディカル・ブログ

福島県立大野病院事件第三回公判(2)、ロハス・メディカル・ブログ

OhmyNews 麻酔科医 「出血時、記憶にない」、調書揺るがす発言繰り返す

大野病院事件についての自ブログ内リンク集

****** 読売新聞、2007年3月17日

大野病院事件公判 被告の処置など証言

 大熊町の県立大野病院で2004年12月、帝王切開手術で女性(当時29歳)を失血死させたなどとして、業務上過失致死罪などに問われた産婦人科医、K被告の第3回公判が16日、福島地裁であった。

 前回に続いて検察側の証人尋問が行われ、手術に立ち会った麻酔担当医と助産師の2人がK被告が行った処置や女性の出血状況などについて証言した。

 麻酔担当医は子宮内の出血状況について、胎児を取り出すまでは「通常よりやや多いという印象」と述べ、その後出血量が増えたと証言。「水面がスーッと上がるように下からわくようだった」と説明した。

 弁護側の反対尋問では、K被告の過失の認識を問われ、「ミスと呼べるところがあったかは疑問だ」と弁護側に有利な証言をした。

(読売新聞、2007年3月17日)

****** 毎日新聞、2007年3月17日

大野病院医療事故:証人尋問で麻酔科医、刑事責任追及を疑問視--地裁公判 /福島

 ◇「明らかな過失ない」

 県立大野病院で起きた帝王切開手術中の医療事故で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた同病院の産婦人科医、K被告の第3回公判が16日、福島地裁(○○○裁判長)であり、証人尋問が行われた。手術に立ち会い、自身も被疑者として警察の取り調べを受けた同病院の麻酔科医は「ミスと呼べるようなことがあったかは疑問」と、K被告への刑事責任追及に疑問を投げかけた。

 麻酔科医の証人尋問では、助手として立ち会った同病院の外科医も被疑者として取り調べを受けたことが明らかになり、麻酔科医は「逮捕を覚悟した」と述べた。その上で手術について「他の臓器を傷つけるなど明らかな過失はなかった」と証言した。また、術中に「わき出るような出血があった」と証言したが、胎盤剥離が原因だったか「時期については記憶があいまい」として明言しなかった。

 この日は手術に立ち会っていた助産師に対する証人尋問も行われた。助産師は、県立医大病院で行われた同様の症例の手術で大量出血があったことを術前に聞いていたため、「うちの病院(大野病院)で対応できるのか不安だった」と述べた。【松本惇】

(毎日新聞、2007年3月17日)

****** 朝日新聞、2007年3月17日

院内採取血液使わず

 大熊町の県立大野病院で04年に帝王切開手術中の女性(当時29)が死亡し、産科医K被告が業務上過失致死などの罪に問われた事件の第3回公判が16日、福島地裁(○○○裁判長)で開かれた。血液センターから輸血用の血液が届く前に、病院の職員から採血して血液を集めていたにもかかわらず、使用していなかったことが、同院の麻酔科医の証言で分かった。

 この日、検察側の証人として、手術に立ち会った同院の助産師と麻酔科医の尋問が行われた。

 麻酔科医の△△△広医師によると、女性の出血が増えたため、いわき市のいわき赤十字血液センターに輸血用の血液を発注。看護師長からは「職員から血液を集めましょうか」などと申し入れがあり、発注した血液が到着する前に、約3千ミリリットルの新鮮血が集まった。だが、△△医師の判断でこの血液は使われなかったという。

 △△医師は、その理由について「GVH病という合併症の恐れがあるので、新鮮血は使わなかった」と証言した。GVH病は、供血者のリンパ球が輸血を受けた患者の体内で増殖し、患者を攻撃することで起きる。日赤の輸血用製剤は、それを防ぐために放射線照射して供給されている。

 ただし、厚生労働省の「輸血療法の実施に関する指針」によると、血液の搬送が間に合わない緊急事態の場合、院内で採取した血液を輸血に用いることができるとされている。

(朝日新聞、2007年3月17日)

****** 福島民友、2007年3月17日

麻酔科医「過失なかった」/大野病院事件

 大熊町の県立大野病院で2004(平成16)年12月、帝王切開で出産した女性=当時(29)=が死亡した医療事件で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた産婦人科医K被告の第3回公判は16日、福島地裁(○○○裁判長)で開かれた。検察側証人の尋問が行われ、手術に加わった麻酔科医と助産師の2人が証言した。麻酔科医は「手術ミスはなかった」とし検察側証人にもかかわらず、前回証言者と同様に弁護側主張に沿う発言をする一方、助産師は手術前から不安を持っていたことを述べた。

 弁護側からの尋問に、麻酔科医は「血管やほかの臓器の損傷はなく、(被告に)過失はなかったと思う」と証言。「専門外だが、はがした方が止血できると思う。クーパー(手術用はさみ)の使用も違和感はなかった」と弁護側主張に沿う発言をした。
 一方で検察側の主尋問に対し「剥離(はくり)中、わき上がるような出血があった」と証言。死因は出血性ショックだったとし、検察側が主張する「剥離の継続の結果、大量出血させ死亡させた」に沿うような発言もあった。

 助産師は「福島医大でも前置胎盤で大量出血を招いて大変だったことを聞いていた」とした上で「産婦人科医が加藤被告一人の大野病院で手術するのは不安だった」と証言した。

 この日の公判では、胎盤の剥離による出血量と時刻に関して、検察、弁護側双方が長く尋問時間を割いたが、証人のあいまいな証言が続き、午後5時の閉廷時間が約1時間ずれ込んだ。

(福島民友、2007年3月17日)

****** 福島民報、2007年3月17日

「手術前から不安」 大野病院医療過誤で助産師証言

 福島県大熊町の県立大野病院医療過誤事件で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた産婦人科医K被告の第3回公判は16日、福島地裁(○○○裁判長)で開かれた。帝王切開手術に立ち会った女性助産師と男性麻酔科医に対する証人尋問を行った。

 女性助産師は、手術前の気持ちについて「福島医大で似たような症例があり大量出血で大変だったと聞いたので、うちの病院で対応できるか不安だった」と証言した。被害者から取り出された胎盤について「(子宮と接していた)母体面がぐちゃぐちゃで、見たことがない胎盤だった」と述べた。

 女性助産師は、帝王切開手術の経験が5回から10回程度で、前置胎盤や癒着胎盤の症例は事件まで未経験だった。

 一方、男性麻酔科医はK被告について「産科医として未熟では全くない」と評価し「(手術中に)ミスと呼べるところがあったか疑問」と、K被告が刑事裁判に問われたことに疑問を投げ掛けた。手術中の出来事に関する質問には「覚えていない」との答えが目立った。

 質問方法などをめぐり検察、弁護の双方が異議の応酬となり、公判は予定より1時間以上延びて約7時間に及んだ。

 次回は4月27日午前10時からで、手術に立ち会った別の助産師と大野病院の男性院長への証人尋問を行う。

(福島民報、2007年3月17日)

****** 河北新報、2007年3月16日

「手術ミスなかった」 大野病院事件公判 福島地裁

 福島県立大野病院(大熊町)で2004年12月、帝王切開手術中、子宮に癒着した胎盤を剥離(はくり)した判断の誤りから女性患者=当時(29)=を失血死させたとして、業務上過失致死罪などに問われた産婦人科医K被告(39)の第3回公判が16日、福島地裁であり、手術に立ち会った麻酔科医が検察側証人として出廷した。

 麻酔科医は「剥離手術中には、間違えて血管を切るなど明らかなミスはなかった。立件されるだけのミスがあったかどうかは疑問」と証言。一方で、大量出血については「剥離した面からお湯が漏れ出るような大量の出血があった」と、剥離と出血の因果関係をうかがわせる供述をした。

 捜査時の調べについては「特に警察の取り調べで細かなニュアンスを無視された。断言していないのに断言した内容になり、(供述調書は)かなり不快な表現だった」と述べた。

 起訴状によると、K被告は04年12月17日、女性の帝王切開手術で胎盤と子宮の癒着を確認して剥離を開始。継続すれば大量出血で死亡することを予見できる状況になっても子宮摘出などに回避せず、クーパー(医療用はさみ)を使った剥離を続けて女性を失血死させた。

(河北新報、2007年3月16日)