ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

県立大野病院事件、第1回公判前整理手続き、福島地裁

2006年07月22日 | 報道記事

裁判の諸手続きに関しては、「公判前整理手続き」とか言われても、私には何が何だかさっぱり訳がわかりません。また、この事件に関しては、それぞれの立場によっていろいろな意見があるかとは思いますが、加藤先生が不当な基準によって刑事罰に処せられることがないように、裁判の今後の経過について、注視していく必要があると考えています。

****** 福島民報、2006年7月22日

大野病院医療過誤の公判前手続き/癒着胎盤措置が争点

 大熊町の県立大野病院の産婦人科医が業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた医療過誤事件で、公判前整理手続きによる第1回協議が21日、福島地裁で開かれた。無罪を主張する弁護団はその後に会見し、癒着胎盤というまれな疾患だった被害者への処置について「胎盤をはく離させたほうが出血をおさえられる場合が多い」という主張を打ち出した。検察側は胎盤をはがしたことを過失としており、癒着胎盤への措置の是非が争点の一つになりそうだ。

(福島民報、2006年7月22日)

****** 朝日新聞、2006年7月22日

公判前手続き開始

 大熊町の県立大野病院で帝王切開の手術中に女性(当時29)が死亡した事件で、業務上過失致死などの罪に問われて逮捕・起訴された同病院の産婦人科医、加藤克彦被告(38)の公判前整理手続きが21日、福島地裁(大澤廣裁判長)で始まった。争点整理などが目的で、今後、数回の会合を経て、今秋の公判開始を目指す。弁護側は記者会見し、「産科医一人の病院で彼はできる限りのことをした。事件は別の産科医が担当しても起こりえた」などと真っ向から反論していく姿勢を明らかにした。

 公判前手続きには、保釈後、自宅待機していた加藤被告が弁護人8人とともに参加した。弁護側は検察側に対し、起訴状や検察側の立証内容をまとめた「証明予定事実記載書」についての補足説明を求めた。

 手続き後、弁護団は福島市内の県弁護士会館で会見を開き、「子宮から胎盤を剥離(はくり)したほうが出血を抑えられる場合は多く、加藤医師はできる限りの処置をした」などとし、改めて被告の無罪を訴えた。

 また、一緒に手術した麻酔科医が記載した手術中の出血量の記録に基づき、「胎盤剥離を終えた時点で出血量は約2500ccと、多くなかった。その後20分間で約4500ccと大量出血しているのは何らかの理由で子宮が十分に収縮しなかったのが原因の可能性がある」と指摘した。その上で「大量出血は予見はできなかった」とした。

 女性の死亡を24時間以内に警察署に届け出なかった点については「加藤医師には医療ミスの認識がなく、病院の規則に基づいて院長にも相談している」として医師法違反にあたらないと主張。検察側の「院長にも正しく報告していない」とする見方と対立した。

 一方、検察側は「癒着胎盤には癒着の度合いに差があるのが前提。剥離困難な癒着胎盤では、無理に胎盤の剥離を継続した場合に大量出血を引き起こす危険がある」とした上で、今回のケースについて「手で剥離することが困難なほどの癒着が認められ、剥離を中止すべきだった」とした。

 また、「検察側は起訴状や証明予定事実記載書への求釈明に十分応じていない」とする弁護側の訴えに対して、検察側は「引き続き、手続きは行われる予定であり、弁護側が現段階でそう判断するのは早計」とした。

 第2回の手続きは8月11日に行われ、早ければ10月に初公判が開かれる見通し。

 ―県立大野病院事件とは―
 04年12月、県立大野病院で帝王切開手術を受けた前置胎盤の女性(当時29)が、手術開始から約4時間半後、出血性ショックなどで死亡した事件。05年3月に公表された県の事故調査報告書をきっかけに県警が捜査。06年2月、執刀した産婦人科医加藤克彦医師(38)が業務上過失致死と医師法(異状死の届け出義務)違反の疑いで逮捕され、3月に起訴された。

 関係者の話をまとめると、手術は加藤医師のほか、麻酔科医と外科医の3人体制で実施。胎児摘出後も胎盤がはがれ落ちないため、加藤医師が胎盤を手で剥がしていた途中、胎盤が子宮後壁に癒着していることに気づいた。手術用ハサミ「クーパー」の先端でそぐように、一部はクーパーで切って胎盤を剥離した。

 通常、胎盤が剥がれると子宮が収縮し、血管が圧迫されて止血が進むが、今回はそののち大量出血した。

 準備していた輸血用血液5単位(1単位は200cc)では足りず、いわき市の血液センターに輸血製剤を依頼。1時間15分後の血液到着を待って子宮を摘出したが、まもなく女性は死亡した。この女性にとって帝王切開手術は2度目。子宮温存の希望があったとされる。

 起訴状は、癒着が認められた時点で直ちに子宮摘出に移るべきだったなどと指摘。胎盤の無理な剥離を過失とした。また術後24時間以内の警察への届け出を怠ったと指摘した。

(朝日新聞、2006年7月22日)

****** 読売新聞、2006年7月22日

大野病院妊婦死 争点「胎盤はく離」是非
公判前整理手続き 弁護側は無罪主張

 大熊町の県立大野病院で2004年12月、帝王切開の手術中に県内に住む女性(当時29歳)が出血性ショック死した医療事故で、業務上過失致死と医師法(異状死体の届け出義務)違反の罪に問われた産婦人科医師加藤克彦被告(38)の第1回公判前整理手続きが21日、福島地裁で開かれた。この手続きは、審理の迅速化を図るため、公判前に非公開で争点を絞り込むもので、弁護側は「女性に対する処置に過失はなかった」などと無罪を主張した。

 手続きには裁判官、検察官、弁護人に加え、加藤被告も出席して、午前10時から同11時50分まで行われた。この日は、争点の絞り込みには至らず、第2回公判前整理手続きを8月11日に行うことを決めた。早ければ10月にも初公判が開かれる見通し。

 手続き後、会見した県立大野病院事件弁護団長の平岩敬一弁護士(横浜弁護士会)は「癒着胎盤でも胎盤をはく離させた方が出血を抑えられる場合も多い」とした上で、「最大の争点は、癒着胎盤を認識したら、胎盤のはく離を中止し、子宮を摘出するのが医師の注意義務かどうかだ」と語った。

 一方、福島地検の片岡康夫次席検事は「本件の場合、胎盤のはく離が困難なほど強度に癒着しており、無理にはく離を継続するべきではなかった」とした。

 起訴状によると、加藤被告は、胎盤が子宮に癒着し、大量出血する可能性を認識していたにもかかわらず、本来行うべき子宮摘出を行わず、胎盤を無理にはがして大量出血を引き起こしたなどとされる。

(2006年7月22日  読売新聞)

****** 毎日新聞、2006年7月22日

大野病院医療事故:全面対決の構図に--公判前整理手続き /福島

 県立大野病院の医療事故で起訴された産婦人科医の加藤克彦被告(38)の公判前整理手続きが21日始まり、弁護側が全面否認の方針を示したことで、法廷では被告弁護側と検察側が真っ向から対立する構図となった。
 午前10時から始まった手続きには裁判官3人、検察官3人、弁護士8人と加藤被告が集まり、1時間50分間行われた。
 手続き後に会見した加藤医師の弁護団は総勢11人。加藤医師が手術用はさみで胎盤をはがしたことについて弁護団は会見で「そうした措置は珍しくない」と述べた。また、大量出血も「胎盤をはがしたあとの出血量は異常に多いわけではなかった」とし、大量出血の原因については「まだ分からない」と述べた。
 弁護側は検察側に起訴状などに関する求釈明に応じるように求めており、この日も再度要請した。福島地検は「釈明の必要があるものは釈明した。まだ手続きの途中で、この時点で弁護側が『検察側が十分に応じていない』と発表することは早計であり、誠に遺憾」との見解を示した。【町田徳丈】

7月22日朝刊

(毎日新聞) - 7月22日15時0分更新

****** 共同通信、2006年7月21日

医師に過失なしと弁護団 具体的争点整理は持ち越し

 帝王切開手術で女性=当時(29)=を死亡させたとして、業務上過失致死などの罪に問われた福島県立大野病院の産婦人科医加藤克彦被告(38)の公判前整理手続きの第1回協議が21日、福島地裁であった。地裁、検察、弁護団とも医療専門用語の意味を事前に擦り合わせることを確認したが、具体的な争点については8月11日の次回協議以降に持ち越した。
 平岩敬一主任弁護士らは協議後、福島市内で記者会見し「大量出血の予見可能性がなく、過失はなかった。胎盤をはがす方が出血を抑えられることが多く、女性も子宮摘出を望んでいなかった。異状死という認識もなかった」と起訴事実を否認し、無罪を主張する考えを示した。
 加藤被告の逮捕、起訴をめぐっては、医師会が抗議声明を出すなど反発が広がっている。

(共同通信) - 7月21日17時14分更新

****** 毎日新聞、2006年7月21日

<帝王切開死亡事故>第1回公判前整理手続き行う 福島地裁

 福島県立大野病院で帝王切開手術中に女性(当時29歳)が死亡した医療事故で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた同病院の産婦人科医、加藤克彦被告(38)の第1回公判前整理手続きが21日、福島地裁で行われた。弁護側は、無罪を主張する方針を示した。初公判は10月ごろの見込みという。

(毎日新聞) - 7月21日20時21分更新

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福島民報、2006年7月20日、社会面記事

****** 参考

大野病院医療事故:産婦人科医弁護団の動き(毎日新聞)

大野病院事件に関する地元紙の報道