弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

米軍機による放射能モニタリングデータ・続報

2012-06-19 20:26:33 | サイエンス・パソコン
昨日に引き続き、昨年3月の米軍機による放射能モニタリング地図のニュースです。
本日の朝日新聞は以下のように報じています。
米提供の汚染地図「避難に生かさず反省」 保安院
2012年6月19日8時1分 朝日新聞
『東京電力福島第一原発事故の直後、米国から提供された実測に基づく汚染地図を政府が放置していた問題で、避難計画づくりを担う経済産業省原子力安全・保安院の山本哲也首席統括安全審査官が18日に記者会見し、「住民避難に生かさなかったことは誠に遺憾で、反省している」と謝罪した。経産相や保安院の幹部職員にもデータの存在は伝わっていなかった可能性が高いとしている。
山本氏によると、汚染地図は、保安院に設けられた緊急時対応センターで放射線への防護対策などに当たる「放射線班」に届いたが、同センターで住民避難を担う「住民安全班」には伝わらず、共有されていなかった。放射線班は主に文部科学省職員で構成され、汚染地図をどう扱ったかは今も不明だという。山本氏は、昨年3月18日と20日に加え、23日にも測定結果や汚染地図が外務省を通して電子メールで届いていたことも明らかにした。
一方、放射線測定を担う文科省科学技術・学術政策局の渡辺格次長は「必要なら保安院が公表すると思っていた。文科省の不手際はなかった」と記者団に説明した。(砂押博雄)』

この問題は、時期を2つに分けて別々に考える必要があります。

《去年3月18~22日》
外務省を通じて米国から情報提供を受けて以降、情報が世界に公開されるまでの時期です。
この間は、政府の一部官僚のみが情報を知っていた状況であり、なぜその情報が必要な箇所にタイムリーに伝わらなかったのかが問題となります。

[文部科学省]
原発周辺の人たち、福島県、日本政府がひっちゃかめっちゃかになって対応に奔走していたそのとき、文部科学省は全く他人事のように対応していたのですね。
文部科学省は、放射線モニタリングに関して責任を有し、一方で地震と津波の影響で地上モニタリングが困難な状況にあったのですから、こんな他人事で済ませてもらっては困ります。
このことは、SPEEDIは活用できなかったかで私が主張したことともつながります。文部科学省は事故直後、SPEEDIの生データを福島県庁にメールで送りつけるだけでした。受けとった福島県庁の放射線担当者は多忙を極めており、解読が難しいSPEEDIの生データを解読して避難に役立てることなど不可能でした。私は、「このとき、文科省は、SPEEDIの専門家を福島県庁に派遣すべきでした。そして、県庁職員と一緒になって、SPEEDIのデータをどのように活用して県民避難を行うべきか、サポートすべきだったのです。もしそのような対応をしていたら、SPEEDIデータを活用して住民避難を行うことができたことでしょう。」と主張したわけですが、他人事の文部科学省にそんな知恵が湧くはずがない、ということになります。

[原子力安全保安院]
昨日の朝日新聞記事によると、政府の緊急時対応センターが置かれた保安院の一室のホワイトボードに、汚染地図がA2判の大きさに拡大されて掲示されていました。本日の記事では、『一緒に仕事をしていた保安院の「住民安全班」がこの掲示に気づかないのは不自然』としていますが、全くその通りです。
経産省配下の保安院は、文科省デスパッチ主体の放射線班に責任を押し付けようとしているようにも見えます。
いずれにしろ、霞が関の「縦割り」とは、“実際には見えているものも見ない”という摩訶不思議な習性を有しているのでしょうか。

《3月23日以降》
米国時間3月22日に米エネルギー省は情報を公開しましたから、日本時間の23日以降、米軍機による放射線モニタリングマップは日本中が知るところとなりました。私も、24日の夕刊記事で知りました。
政府の原子力災害対策本部や官邸は、公開された米軍機による放射線マップに接して、いったいどのような対応を取ったのでしょうか。
明らかにすべきは次の2点です。
1.航空機モニタリング放射能マップに接して、その情報を住民避難にどのように活用したのか。
2.「公開前に日本に情報が伝達されていたのではないか」との認識を当然に有したはずだが、官邸はその点をどのように確認したのか。

私たちが現実的に知っていることは、20キロ圏外の高汚染地区に対する避難の対応が著しく遅延したことです。飯舘村を中心とする20キロ圏外の避難区域を指定したのは、4月22日になってからだといいます。
保安院と文科省が情報を伝達しなかったことを責める前に、その情報を知った後も役立てることができなかった政府をこそ責めるべきかもしれません。
コメント
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