その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、映画、本などなどについての個人的覚書。SINCE 2008

PARCO STAGE W.シェイクスピア <リア王> @東京芸術劇場プレイハウス

2024-03-18 07:36:56 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

段田安則さんがリア王を演じるということで、先月の<マクベス>に続いてシェイクスピア劇を観劇。TVでもしばしば目にする役者を多く揃え、熱量高い、充実した舞台であった。

段田さんは、傲慢国王から気がふれた哀れな老人へ転落するリア王を好演。身から出た錆とはいえ、権力を失った元権力者の悲哀が胸を打つ。

三姉妹の中では江口のりこさんが、ゴネリルの役柄にぴったりハマっていて、怖いぐらいだった。また玉置玲央さんが庶子エドマンドを活き活きと演じていていた。更に、この救いようのない絶望的な悲劇の中で唯一息をつけるのが、道化の振る舞い。とぼけたことばかりを言うが、実は世の中や人間が一番見えている。その道化を平田敦子さんが好演していた。

ショーン・ホームズさんの演出作品は初めて。衣装から察するに場を現代に置いているのだが、深い読替え的な意図はなさそう。舞台装置はシンプルで、椅子と白色のウオールボードが基本。手紙はOHPを使ってその壁型ホワイトボードに投影される。場面によってそのボードを吊り上げ、奥行きあるステージをフルに活用する。舞台天井に蛍光灯を多数設置し、そのON,OFFで嵐や天候が示された。

演出上、唯一の不満は、この天井の蛍光灯演出かな。この<リア王>はドーバー(の岸壁や荒野)、嵐、狂気が3点揃って最高のヤマ場というイメージを持っているので、ちょっと今回はその点において物足りなかった。

今回は事前に松岡和子さんの翻訳を読み返す時間なく、ぶっつけ本番となった。休憩入れての3時間の上演時間だったこともあり、舞台ではそれなりにカットが入っていたと思う。リアの放浪場面とか、もう少し長かった気がする。出来ればもう一度観なおしてみたいものだが、残念ながら今回はちょっと時間が合いそうにない。

(2024年3月14日)

 

作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:松岡和子
演出:ショーン・ホームズ
美術・衣裳:ポール・ウィルス
出演

段田安則 小池徹平 上白石萌歌 江口のりこ 田畑智子 玉置玲央 入野自由 前原滉 盛隆二 平田敦子 / 秋元龍太朗 中上サツキ 王下貴司 岩崎MARK雄大 渡邊絵理 / 高橋克実 浅野和之


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