その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、映画、本などなどについての個人的覚書。SINCE 2008

東京マラソン2024 完走記(2/2)

2024-03-07 07:30:35 | ロードレース参戦 (in 欧州、日本)

【ハーフ〜30k地点】

22キロ地点での給水ポイントで、カロリーメイトゼリーを取る。初めて飲むゼリー。味は癖が無いのだが、密度が濃く結構ヘビーだったので、少しずつ飲んだ。ハーフを過ぎて、トイレをどうするか頭をよぎる。昨年の大阪マラソンで得た、使い捨てカイロを下腹部に入れてお腹を温めるやり方が功を奏してか、差し迫ったトイレ欲求は体から発せられていない。ただ、行けるときに言っておいた方が良いのか、せっかく順調なペースで来ているので、このモメンタムを止めたくないし・・・。(驚きなのだが、結局、このレースではトイレは行かずに済んだ)

清澄通りは3キロほどの真っすぐな道で、東京マラソンのコースの中では一番変化の乏しいパートになる。だが、門前仲町に近づくにつれて声援がどんどん大きくなる。応援の雰囲気も、人情味あふれて、やんちゃというか、下町っぽい地域性を感じる。走りながら、東京の街の雰囲気の違いを感じられるのも、このコースならではだ。


<富岡八幡宮前>

富岡八幡宮の前を折り返してしばらく行くと25キロ地点。沿道の応援が相変わらず凄い。応援メッセージを印したプラカードに「あと17キロしか走れないよ。楽しんで!」というメッセージが目に入る。そうだよね〜、こんな応援の中、走れるのは今日しかないんだから、あと17キロで終わっちゃうなんて勿体ないよね〜、と激しく同意する。フルマラソンのレースでそんな思いがよぎったのは初めてかも。


<24キロ地点前後で、3時間45分のペースランナーに抜かれる>

しばらく走ると、また違うプラカードが。「笑って!楽しんで!」。プラカードだけでなく、一人一人に「笑って〜」「口角上げて〜」と声をかけてくれる。「そんなに苦しそうに走っているのかな?」と思いつつ、ちょっと気持ち悪いが、笑い顔を無理やり作ってみる。不思議なことに、体から力が抜け、なんか走りやすくなった感じ。沿道の声援、ボランティアのサポートは涙が出るほどうれしい。

大きなマイルストーンである30k地点を目指し、淡々と走るが、段々と考える余裕も無くなってきた。(なので、この辺りから記憶が飛び始めている)無心に脚を前に出すだけ。30k地点の明治座前まで辿り着いた。ストップオッチのボタンタッチを間違えて5kラップタイムは分からなかったが、30k地点で2時間40分台であることは確認できた。さあ、残り12キロを1時間20分で走りきれる。本当のクライマックスの始まりだ。

【30k〜ゴール】

明治座から再び兜町、日本橋に戻り、いよいよ銀座の中央通りに突入。この銀座の目貫通りを独占して走れるというのは何とも贅沢。だが、32k地点を超え、練習でも走ってない距離のゾーンに入ると、いよいよ脚が動かなくなってきた。練習は正直である。最後のお札でもあるアミノ酸ゼリーをポケットから取り出し、流し込んだ。


<中央通り 日本橋>


<中央通り 銀座松屋近辺>

走っていて、ドイツ、アメリカ、メキシコ、ウクライナ、オランダ、韓国、中国、台湾・・・いろいろな国旗が目に入るのも東京マラソンならでは。日本橋か、銀座か忘れたが交差点の角で中国応援団が、六大学野球の応援団が掲げる団旗より大きいと思わせる国旗を振っていた。

34キロ地点で、銀座・有楽町から日比谷通りに入る。この辺りに家族の面々が居るはずだとキョロキョロ。すると丁度、横で「頑張れ〜」と家人から声をかけられた。気づくのが遅かったので、力なく手を上げて応えた。35kで5kラップが約29分。ついに1キロ5分30秒のペースを下回る。どんどん脚が重くなりペースが落ちていく。

内幸町、西新橋、御成門、大門、田町はマイエリアなのだが、もう思考力が無くなって、考えられなくなっている。東京タワーや増上寺の写真を撮る余裕もやる気も出てこない。とにかく脚釣りや痙攣が発症しないことだけを念じて、ただただ脚を前に出す。腿裏がちょっとぴくぴくし始めているのが気になる。

田町駅前で折り返して、日比谷通りを北上。恐れていたのは、試走の時に経験した強い北風。一番苦しいところで、向かい風を真正面から受けることになる。だが、この日はマラソンの神様が味方してくれた。風向きは南風の逆向きでむしろ追い風。これには助けられた。

40キロ地点での5キロのラップは遂に30分を超えた。急速な減速だ。想定内とはいえ、1キロ6分を超える大ペースダウンである。ただ、嬉しかったのは丁度40キロ地点を過ぎた日比谷公園沿いで、再び家族に遭遇し、声を掛けてもらい元気貰った。

残り1キロ、丸の内仲通りは割れんばかりの大声援がビルにこだまする。やっとゴールを計算できるところまできた安堵感と疲れと応援の興奮がミックスされて、脚は動かしているものの、全ての感覚が麻痺している。これまでのいくつもの大会でラスト200メートルで足の痙攣とかを経験しているので、最後の最後まで油断はできない。最後のコーナーを曲がって、御幸通りに入って、東京駅前を皇居に向かって、ゴール。時計を止めたら、3時間52分台。ポンコツGarminでは42.88キロも走っていることになっていた。700mも遠回りして走ってたんですかね・・・


<仲通り>


<ゴール寸前>

9年前の記録更新には5分弱足りなかったが、目標としたサブ4は達成。3時間55分を切るのも数年ぶりである。素敵なデザインのガウンを頂き、念願の完走メダルを首にかけてもらう。う〜ん、よく走った。結局、4時間ハイな状態なまま走り続けたので、自分でレース組立て、走った感覚は無く、無我夢中のまま終わってしまった。それだけ、東京マラソンの舞台は特別なのである。走る楽しさ、喜びをこれほど味わせてくれる大会はホントまれだ。


<東京駅をバックにゴール>

次回、東京マラソンに当選するのは、何年後になるのだろうか?これからも毎年、応募はつづけなきゃ。そんなことをぼんやりと考えながら、大手町の更衣室に向かった。

(おわり)


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