その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、映画、本などなどについての個人的覚書。SINCE 2008

金沢八景で鯵釣りしながら、昔の職場・働き方について感じたこと

2022-05-31 07:30:25 | 日記 (2012.8~)

10年前の職場の元ボス・元同僚達20名ほどが集まって金沢八景に鯵釣りに行きました。当時は、釣りキチ上司の音頭の下、毎年恒例の組織イベント。胸張って「昭和職場ですが、それが何か。」と言える環境でしたね・・・。

定年、転職、異動などなど、もう皆それぞれの道を歩んでいる仲間達ですが、コロナによる中断もあり、今回は4年ぶりの開催。出船前から同窓会気分で夫々が今の環境を語り合い、高揚した雰囲気となりました。

船宿に7時集合で7時半には出船。参加者のうち釣りを趣味とする人は3名しかいないので、残りのメンバーは釣りと言えばこのイベントだけ。私も、4年ぶりで、仕掛けの付け方、リールの操作、餌の付け方すっかり忘れており、船長さんに教えを請いました。


〈出船を待つ釣り船〉


〈八景島シーパラダイス〉

夏日となったこの日、湿度は高くないので、本当に気持ちがいい。釣りしなくてもビール飲んでいるだけで幸せ。日差しは強いですが、海風が頬に当たるのが何とも気持ちいい。大学のヨット部でしょうか?横浜国大と記された数艘のヨットを若者達が風に読みながら、操っていました。「飛び出せ青春」って感じで羨ましい。

肝心の釣の方ですが、こんな素人でも鯵は、棚さえつかめば、結構簡単に釣れます。レク目的ですので、午前中の3時間半ほどの釣時間ですが、私でも11尾釣ることが出来ました。釣りキチ・元ボスは40匹ぐらい釣っていましたね。私ではないですが、鰺の他にも、イシモチ、サバ、キスが釣れていました。


〈釣った鯵。このあと、クーラー行き〉

例年なら釣った魚で船宿横の空きスペースを借りてBBQなのですが、残念ながらコロナ禍でBBQは不可とのこと。各自で釣った魚をクーラーボックスに入れて持ち帰りとなりました。

釣のド素人でも楽しめるこの企画とってもお勧めです。竿、仕掛け、餌、長靴などなど全てその場でレンタルできますので、手ぶらでも全然OK。

コロナで久しく忘れていたこうした職場関連のイベント。昔の職場・働き方の楽しかったプラスの面が久々に蘇った1日でした。ここ数年で、「働き方改革」「多様性・自主性・柔軟性のある働き方」にコロナ禍が加わり、すっかり社員間の接触の機会は減りました。特にオフタイムは。もちろん、懐古的に「以前は良かった」と振り返るつもりはないですし、総体で見れば日本の労働環境に変革が必要であることは間違いありません。職場に求める必要も無いと言えば、それも正しいのですが、こうした仕事を通じた一つ一つの出会いや触れ合いが人生を豊かにしてくれるというのも再認識させられたイベントとなりました。

2022年5月28日

 


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良心的なリーダー心得帳だが私は苦手: 丹羽宇一郎「社長ってなんだ!」講談社新書、2019

2022-05-30 07:30:23 | 

当ブログの読書カテゴリーで前回紹介したサイボウズ青野社長の本と一緒に、地元図書館の返却本棚に並んでいたので借りてみた。伊藤忠商事の社長を務め中国の大使も歴任した日本の経済界の重鎮が、自身の経験をベースに経営者、リーダーとしての心得や行動について述べた一冊だ。

書いてあることは極めて正論。

・私心や私欲を捨てる
・社員との信頼関係が一番大事で、それは情報共有が第一歩。そのために全社員集会や週1回の幹部との顔あわせの情報交換の場が必要
・何事も一流に触れる。
・現場に行って目と耳で確認する
・ゴマ不感症(ゴマ擦りに鈍感になること)に気を付ける

などなど。まあ、仰る通りですね。ということになる。

同じ社長でも、先に読んだサイボウズとこの伊藤忠商事では全然違うだなあと。自分で0から作りあげるベンチャー企業、型や仕組みが出来上がっている日本有数の名門企業。主張に異論は全くないが、読み物としてどちらが面白いか、ワクワクするかと言えば、青野さんの経験談に軍配が上がる。

内容的には勉強になる話も幾つかあるし、至って良心的なのだが、どうしても元・大企業サラリーマン社長の「私の履歴書」っぽさもあり、ちょっと私は苦手なタイプの一冊だった。

 

 

〈目次〉

  • はじめに――リーダー不信の時代に問う
  • 第1章 孤独と覚悟――攻めと守りを同時に行う
  • 第2章 資質と能力――畏れを知るべし
  • 第3章 報酬と使命――社長で稼ごうとは思わない
  • 第4章 自戒と犠牲――ビジネスは義理人情で動く
  • 第5章 信頼と統治――人のつながりが不祥事を防ぐ
  • 第6章 後継と責任――「社員の喜び」こそがリーダーの感激
  • おわりに――社長の器以上に会社は大きくならない

 


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N響5月B定期、指揮ファビオ・ルイージ、リムスキー・コルサコフ/交響組曲「シェエラザード」他

2022-05-28 07:30:05 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

先週末に続いてのルイージ、N響。濃厚で充実感一杯の3曲、2時間でした。

プログラムによると、この日のテーマは「海」。

スタートはメンデルスゾーンの序曲「静かな海と楽しい航海」。全く初めて聴く曲でしたが、標題を知らなくても、これは海の情景と分かる豊かな映像性を持った美しい音楽でした。

2曲目は、小菅優さんソロによるラヴェルのピアノ協奏曲。小菅優さん、名前はもちろん存じ上げてますが、聴くのは初めてです。青のドレスで現れた小菅さんは落ち着いて余裕すら感じます。第1楽章、Jazz風のリズムも交えて活き活きとした演奏は格好いい。今シーズンからマイシートとなったP席だと、ピアノ協奏曲のピアノの音は聴きにくさで欲求不満になるときあるのですが、この日は気にならずクリアに聴こえました。第2楽章の美しさはうっとり。あやうく海で舟漕ぐとこでした。第3楽章はトビウオが海面を跳ねるような演奏。聴いている方も体が弾みます。

そして、おまけなのにおまけ以上のご褒美だったのは、アンコールのラヴェル「水の戯れ」。アンコールとしては長めの曲で、もうこのままずーっと弾いてもらいたいと思いながら聴いていました。

小菅さんは自然体の振る舞いが良いですね。なんか、姐御って感じで。これからは、小菅姐っと呼ぼうっと。

休憩後のシェエラザード。こちらも、劇的でした。脳裏に絵巻が展開されるドラマチックな演奏でした。ソロのマロさんの繊細かつ情感豊かなヴァイオリンを筆頭に、N響の名手たちの素晴らしい個人技と、厚く熱いアンサンブルの組み合わせがすばらしい。ルイージさんの歌劇場でのキャリアのためでしょうか。N響のシェエラザードは何回か聴いてますが、これほど映像が頭に浮かんでくるのは今回が一番ではなかったかな。残念だったのは、第2楽章でのホルンソロのずっこけ。私でも明確に分かる「・・・おっと・・」の瞬間で、かなり衝撃的。思わずルイージさんに目が行きましたが、ルイージさんは表情一つ変えず音楽は進みました。フィナーレの盛り上がりは鳥肌立つほどで、本の最終ページが閉じられて終演となりました。

私はソロ鑑賞ですが、帰り際の聴衆の皆さんの会話も弾んでましたね。高揚した雄弁な会話の渦が、演奏会の盛り上がりと居合わせた皆さんの満足感を如実に表していました。

第1958回 定期公演 Bプログラム
2022年5月26日(木)開演 7:00pm

サントリーホール

指揮:ファビオ・ルイージ
ピアノ:小菅 優

メンデルスゾーン/序曲「静かな海と楽しい航海」作品27
ラヴェル/ピアノ協奏曲 ト長調
リムスキー・コルサコフ/交響組曲「シェエラザード」作品35

No. 1958 Subscription (Program B)
Thursday, May 26, 2022 7:00p.m.

Suntory Hall

Fabio Luisi, conductor
Yu Kosuge, piano

Mendelssohn / Calm Sea and Prosperous Voyage, overture Op. 27
Ravel / Piano Concerto G Major
Rimsky-Korsakov / Scheherazade, symphonic suite Op. 35


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10年先行ってた働き方改革: 青野慶久『チームのことだけ考えた』ダイヤモンド、2015

2022-05-27 07:59:02 | 

図書館の返却本コーナーに置いてあったので借りてみたのだが、とっても示唆に富む本であった。
著者であるサイボウズの青野社長はメディアでも「働き方改革」の旗手としてしばしば取り上げられているし、サイボウズは数年前の「働き方改革」ばやりの時に、社員の本音をズバリと言い当てたコピーの広告が鮮明に記憶に残っている。

本書は、サイボウズ社の起業から事業を軌道に乗せるまで、経営者としての組織、人事の仕組み作りの考アされてえ方が経験談と一緒に記されている。巷のビジネス・ノウハウ本と異なって、この手の経験談が面白いのは、その時々の課題感や悩みを踏まえて、どういうアクションを取ったかというが、リアリティをもって記述されることだ。もちろん一介のサラリーマンとしての私と、創業者・経営者としての筆者の環境や責任は大いに異なるものの、課題感は相似形であったりする。

コロナ禍をきっかけに、日系企業においても在宅勤務など柔軟で多様な働き方が広まって来たが、同社はそれをコロナ禍以前に実践している。世の中を10年近く先取りしているところが驚きなのだが、本書を読めば、それが会社のミッションや業績向上と社員の幸福の両立をロジカルな思考で考え、実践した結果として生まれたことが良くわかる。

要約してしまうと、単なるノウハウになってしまって面白くないのだが、私にとってのいくつかの学びは、
・組織作りにおけるぶれないミッション・目的の重要性。そしてそれを言葉に表し、言葉の定義をしっかり定めて理解を共有すること
・原因と課題は「行動」。例えば、売上減の原因は、不景気ではなくて、「不景気に対して施策を打たなかったから」。
・制度・施策は目的が大事。目的に沿わない状態になったら、さっさと止める。

タイトルにあるように、筆者の思考の焦点は「チーム」にある。
「共通の理想が存在するところにチームは生まれる。そして、顧客ですらチームのメンバーとなりうる。(中略)チームとは、ビジョンに共感するメンバーがタスクを実行する(=ワークする)集団だ

図書館に本を返却と同時に、アマゾンでぽちった。


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N響5月C定期、指揮:ファビオ・ルイージ、ベートーヴェン交響曲第8番ほか

2022-05-22 07:30:50 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

来季から主任指揮者に就任するF.ルイージさん指揮による演奏会。来る新時代を大いに期待させる演奏会でした。

ルイージ効果か東京芸術劇場は明らかに満員。Aプロのヤノフスキさんのときも9割弱ほどの入りでしたが、この日は更に熱気むんむんの会場となりました。満員のホールは嬉しいです。

プログラムはモーツァルトとベートーヴェンという新古典派の大作曲家の作品でオーソドックスな構成です。

冒頭の「ドン・ジョバンニ」の序曲に続いて演奏されたモーツァルトのピアノ協奏曲20番は痺れました。独奏者メルニコフさんのピアノは実に煌びやか。一つ一つの音が飛び跳ね、光ってました。

休憩なしの演奏会ですが、3曲を揃えたプログラムはほぼフルラインナップ。メインのベートーヴェン交響曲第8番も聴きごたえたっぷりの名演。重層的なアンサンブルが深い造形を描いてました。ルイージさんの音楽は、音がとても明るく、輝いて聴こえます。情熱的な指揮にN響メンバーも前のめりで応え、熱量も高い。

もう何度も共演していることもあり、ルイージさんとN響の関係ももうしっかり構築されている様子がうかがわれます。安心・安定・大満足の今日の公演は、来季からのルイージ時代へのワクワク感を更に高めてくれました。

 

第1957回 定期公演 池袋Cプログラム
2022年5月21日(土)開演 2:00pm(休憩なし)

東京芸術劇場 コンサートホール 

指揮:ファビオ・ルイージ
ピアノ:アレクサンドル・メルニコフ

モーツァルト/歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲
モーツァルト/ピアノ協奏曲 第20番 ニ短調 K. 466
ベートーヴェン/交響曲 第8番 ヘ長調 作品93


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松岡正剛『日本文化の核心』講談社新書、2020

2022-05-21 07:35:15 | 

日本文化の真骨頂・正体・核心、ディープな日本の特色がどこにあるのかについて、筆者独自の切り口で解説した一冊。筆者の博覧強記ぶりに舌を巻くとともに、私たちの生活や文化の源流が紐とかれ、朝靄が晴れるような気持ちで読めた。同時、如何に自分が自分の国について無知であるかも思い知らされた。

現代を生きる我々の様々な習慣・文化・風俗が、筆者がジャパン・フィルターと呼ぶ客神、米、神仏習合、家、かぶき、数寄、面影、まねび、経世済民といった切り口を通して説明される。そして、筆者は「日本文化の正体は「変化するものにある」」と言う。Jポップ、アニメ、日本現代アートからコギャル、ポケモン、寅さん、漫才などなど、これらのカルチャーもジャパンフィルターを通して観察すれば、過去と現代がしっかりと結びついていることが分かる。

筆者は「西洋的な認識方法や二分法的なロジックにどっぱり浸かりすぎてしまった」我々は、「その見方のまま日本的な思考法を理解しようとするからわかりにくくなる」(p338)と指摘しているが、これも首肯できる。

一方で、腹落ちしてできないところもある。日本文化を西洋的でない日本的な概念・認識方法を通して読み解くのは大事だと思う一方で、海外に対してどう説明できるのか。また、国内においては、安易な日本特殊論に結び付けられやしないかという点だ。独りよがりで内向きな日本賛美や伝統回帰を志向する本では全くないと思うのだが、「美しい日本」と言ったようなフレーズで復古主義的な主張を声高にする日本の某政治家たちに勝手に利用されたりしないのだろうかとの心配は感じる。

日本の今と過去を結び、更にその深層を探る。刺激に満ちた一冊だ。

 

<本書の構成>

第一講:柱を立てる
第二講:和漢の境をまたぐ
第三講:イノリとミノリ
第四講:神と仏の習合
第五講:和する/荒ぶる
第六講:漂泊と辺境
第七講:型・間・拍子
第八講:小さきもの
第九講:まねび/まなび
第一〇講:或るおおもと
第一一講:かぶいて候
第一二講:市と庭
第一三講:ナリフリかまう
第一四講:ニュースとお笑い
第一五講:経世済民
第一六講:面影を編集する


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笑いの中に考えるヒントあり: 演劇〈ロビー・ヒーロー〉 @新国立劇場

2022-05-19 07:30:17 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

シリーズ「声 議論, 正論, 極論, 批判, 対話...の物語」の第2弾。ニューヨークのマンションのロビーを舞台に、とある殺人事件を巡って、マンションの警備員2名とニューヨーク市警の警察官2名(一人は見習いの婦人警官の卵)の4名により繰り広げられる会話劇。第1弾の「アンチポデス」に続いて、完成度高く、笑いの中にいろんなことを考えさせられた芝居であった。

テーマは「正義の捉え方」「人種・性などによる差別」「コミュニケーションの相互作用性」など。観る人によって様々に取れるだろう。

私個人は、「正義」や「差別」観点よりも、「コミュニケーション」にこの芝居の面白さがあると感じた。チャラ男ジェフ(中村蒼)が、一見、相手を顧みず好き勝手に話してコミュニケーションが成立してないように見えながらも、聴くことで相手の話を受け止めていて、会話により相互理解を深めている。欠点だらけのジェフであるが、オープンであること、正直であること、相手を理解しようとすることが、人の関係性を大きく変える力を持っていることに気づかされれる。

4名で3時間近くを喋り倒す芝居だが、役者さん夫々が、役柄に完全に入り込み、夫々の際立ったキャラを演じきっていた。それが、舞台の安定感と集中度をぐっと高めていた。中でも、ジェフの成長物語とも取れる本作において、中村蒼の熱演は圧巻。しっかりとした軸を作っていたと思った。

台本はアメリカっぽく、ストレートで分かりやすく、テーマも明示的。ロビーの一場面芝居を様々な角度で見せる演出も良く出来ていると感心した。

いよいよ来月、シリーズ第3作。こちらも見に行くつもり。

 

 

ロビー・ヒーロー
Lobby Hero

日本初演

2022年 5月13日[金]

予定上演時間:2時間55分(1幕:85分 休憩:15分 2幕:75分)

 

スタッフ

【作】ケネス・ロナーガン
【翻訳】浦辺千鶴
【演出】桑原裕子
【美術】田中敏恵
【照明】宮野和夫
【音響】島貫 聡
【衣裳】半田悦子
【ヘアメイク】林みゆき
【演出助手】和田沙緒理
【舞台監督】野口 毅

キャスト

中村 蒼、岡本 玲、板橋駿谷、瑞木健太郎


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N響A定期、指揮:マレク・ヤノフスキ、シューベルト交響曲 第8番「ザ・グレート」ほか

2022-05-16 12:11:47 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

楽しみにしていたヤノフスキさんとN響の定期公演。期待通りの、心臓バクバクの演奏会でした。

特に、圧巻は後半のシューベルトの交響曲第8番グレート。この曲、実演に接したのは数回です(前回は2017年のパーヴォ、N 響)が、グレートという通称に相応しいスケールですね。プログラムに「顔を上げて堂々たる晴朗な交響曲」とあるように、全体に外向きのエネルギーに満ち溢れていて、元気がいっぱい貰えます。音楽を聴く悦び、快楽を堪能しました。

この日のN響は管も弦も緊張感と集中力が怖いぐらい感じられました。ステージ横のRB席からは、強面のヤノフスキさんの表情も加わって、ステージ空間一杯にただらなぬ「気」が漂っています。

加えて、第2楽章のシューベルトらしい歌心一杯のオーボエの美しさは悶絶級。そして、第4楽章の弦の厚く押し寄せるようなアンサンブルも圧巻です。前のめりで聴いているのですが、気迫と音圧に押されてのけぞりそうなぐらい。

終演後はもう大拍手だったのですが、いつもとは違ったような印象がありました。私の勝手な観察ですが、いつもだと、カーテンコールの際には楽員さんから、演奏が終わった安心感と満足感のような安堵の表情が見て取れるのですが、この日は演奏中の緊張感が暫しそのまま続いているとも、エネルギーを使い果たした放心状態と言う感じともとれる、安心感や満足感とは違った表情に取れました。解散になって、やっとホッとした感じに戻ってきたような。それほど、今回の演奏は楽員さんにとっても、いろんなチャレンジがあったのではと感じました。私の一方的な受け止めなのですが、この辺り、楽員さんの正直な思いを伺ってみたいものです。

前半は、アリョーナ・バーエワさんの独奏によるシューマンのヴァイオリン協奏曲。全く初めて聴く曲だったので、YOUTUBEで1回事前に聴いておきました。細身で長身の体に紅色(に見えた)の目の覚めるようなドレスで登場。現れた瞬間に場を支配するオーラです。演奏姿も凛として、かつ力強い。演奏も意志を感じる力強い響きで、第2楽章は低弦とのやりとり、第3楽章は管楽器とのインターアクションが楽しかった。

アンコールの曲は分かりませんでした(FBでバツェヴィチ作曲、ポーランド奇想曲と判明)が、変化に富んだ音楽で次はどんな音が発せられるのかとじっと固唾を飲んで聴ききました。

池袋芸劇のA定期があと1回で終わりかと思うと寂しいです。RB席と言うステージ至近で指揮者、楽員さんの動き・表情をガン見できて、音圧をダイレクトに受け止められる素晴らしい席だったので、なんとも残念。こういう席にいると、音楽はやっぱり生に限ると、心底思います。

 

第1956回 定期公演 池袋Aプログラム
2022年5月15日(日)開場 1:00pm 開演 2:00pm

東京芸術劇場 コンサートホール

シューマン/ヴァイオリン協奏曲 ニ短調

指揮:マレク・ヤノフスキ
ヴァイオリン:アリョーナ・バーエワ  

【アンコール曲】バツェヴィチ/ポーランド奇想曲(ヴァイオリン:アリョーナ・バーエワ)

 

No. 1956 Subscription (Ikebukuro Program A)
Sunday, May 15, 2022  2:00p.m. (Doors open at 1:00p.m.)

Tokyo Metropolitan TheatreSchumann / Violin Concerto D Minor
Schubert / Symphony No. 8 C Major D. 944, The Great

Marek Janowski, conductor
Alena Baeva, violin


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まだの人は是非とも! メトロポリタン美術館展 @国立新美術館

2022-05-14 07:30:00 | 美術展(2012.8~)

質量ともに充実の美術展で見応えたっぷりだった。

「目玉」作品と「その他の出番少なし」作品との抱き合わせ美術展とは明確に一線を画している。

ルネサンス期から印象派までの作品が時代別に展示され、さながら西洋美術史実習という感じ。企画としてはスタンダードだが、質の高い各展示作品のため、鑑賞には時間がいくらあっても足りない。65作品中46作品が日本初出品と言うのも嬉しい。

個人的には、前半のルネサンス期の宗教画や17世紀のオランダの風俗画が好み。フラ・アンジェリコ〈キリストの磔刑〉、ピエロ・ディ・コジモの〈狩りの場面〉、フラ・フィリッポ・リッピ〈王座の聖母子と二人の天使〉などは絵から発せられる強力な磁力に引き付けられた。

オランダ絵画では、フェルメール〈信仰の寓意〉には、背景にキリストの磔刑の絵がかかっていた。先日の「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」で、修復で塗りつぶされていた背景にキューピットが現れた《窓辺で手紙を読む女》作品を鑑賞したが、本作品は塗りつぶされることがなかったようだ。メツー〈音楽の集い〉、ヤンステーン〈テラスの陽気な集い〉などの風俗画で当時の人々の生活に思いをはせるのも楽しい。

最後にメトロポリタン美術館を訪れてから25年が経っている。また現地に足を運びたいのだが、いつになることやら・・・

これは絶対にお勧めです。


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ゴールデンウィークお出かけ: 山中湖

2022-05-10 07:30:31 | 旅行 日本

箱根から戻ってきて、自宅に1泊後、続いて家族と山中湖へ。今年のGWはお天気に恵まれ、ここでも素晴らしい新緑を満喫することができました。


〈夕焼けの渚展望台から〉

いつもならジョギングなのですが、長野マラソンで足首の後ろを痛め、現在は練習自粛。なので、午前中は宿で自転車を借りて、湖畔をゆるゆる1周。暑くなく、寒くなく、爽やかな空気の中、のんびり自転車を走らせます。箱根に比べると、気温が低い分、新緑のつき方も若干遅めですが、新しい生命の息ぶきを体で感じます。


〈苔の散歩道も若緑〉


〈苔の芽〉

湖畔の道路はいたるところで車が数珠繋がり。湖にも釣り、カヌー、ジェットスキーなどを楽しむ人たちが。人の移動がいよいよ本格化しているのがわかります。人気のないリゾート地も落ち着きますが、人の活気を感じるリゾートは息を吹き返したように活き活きしています。


〈「山中湖交流プラザきらら」からの富士山〉

お昼は忍野村のうどんやさんで冷やしタヌキうどん。一本一本を噛みしめないと消化できないような腰満点のうどんです。

午後は宿のロビーでビールを飲みながら読書。久しぶりのゆったりとした時間を堪能しました。

 

2022年5月4日

 


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ゴールデンウィークお出かけ: 箱根 ポーラ美術館

2022-05-08 07:28:24 | 旅行 日本


湿生花園に続いてポーラ美術館へ。林の中に建ち、ガラス窓から新緑の緑と春の木漏れ日が差し込む美術館は、これ以上の美術鑑賞環境はないと思えます。

丁度、この時期、開館20周年記念展として「モネからリヒターへ 新収蔵作品を中心に」が開催中でした。「光」をテーマに印象派から現代美術までを所蔵作品で振り返るという意欲的な企画です。ほとんどの部屋を使っての100を超える展示という規模も、私のポーラ美術館訪問歴では最大でした。見応えたっぷりです。

クロード・モネ〈睡蓮の池〉

ゲルハルト・リヒター〈抽象絵画〉
→この2作品が並んで展示してあったのですが、何をどう比較すればよいのか、分からずじまい。

印象派からキュビズム、更に第2次大戦期ぐらいまでの絵画は見慣れてますが、戦後の現代美術は馴染みなく、どう鑑賞すればいいのか見当がつかないものも多いです。「一体、これのどこが芸術なのだろうか?」と感じるのもあります。ただ、いつもとは違った脳の領域が刺激されていることがわかりますね。



館外の森の遊歩道の散策も贅沢な時間です。陽に温まる前のひんやりとした空気の中、木漏れ日を浴びながら、木道を歩く。日々の雑事でたまった澱が洗い流されるような感覚でした。

 


ロニ・ホーン〈鳥葬(箱根)〉
→林の中に放置してあるかの如く展示してある作品。鋳放しの鋳造ガラスとのことです。

リフレッシュってこんな感覚なのでしょうね~。

2022年5月1-2日

コメント (2)
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ゴールデンウィークお出かけ: 箱根 湿生花園  

2022-05-07 07:52:17 | 旅行 日本

ゴールデンウイーク前半は母と箱根に出かけました。

行動制限なしのGWということで凄い人出だったのと、もともと保養目的であちこちを見て回ることは予定してませんでしたが、素晴らしい新緑を満喫しました。

とりわけ、朝一番で訪れた湿生花園が素晴らしかったです。前日の雨で水をたっぷり吸いこんだ草花は生命力に溢れたものでした。野草好きの母は、私が見過ごしてしまうような小さな花を見つけては、花の名前の記憶を辿っていました。林の中に身をさらすと免疫力が高まると聞いた覚えがありますが、自分の中にエネルギーが溜まっていくのがわかりますね。1時間半ほど園内を回遊し、元気を貰いました。




〈水芭蕉〉













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MBAとは真逆のリーダーシップ論: 鈴木忠平『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』(文芸春秋、2021)

2022-05-05 07:28:57 | 

ゴールデンウイークの読書。ページをめくる手が止まらず、最後のページが終わった時は、張り詰めた気持ちから解放され、ため息が出る一冊だった。

中日ドラゴンズの監督として、2004-2011の8シーズンの間、リーグ優勝4度、日本一1回を遂げた落合博光を追いかけたドキュメントである。多くを語らない監督だっただけに、番記者として密着した著者の取材記録と選手たちの視線を中心に、落合の流儀に迫る。落合監督の個性、プロ野球というプロフェッショナルの世界、筆者の筆力が相まって、緊張感あふれる内容だ。

読んでいて、私がビジネスの基本として学んで、実践してきたリーダーシップと全く逆ともいえるやり方を取り、かつ結果を出していて、頭を殴られるような衝撃だった。チーム・コミュニケーション、エンパワーメント、コーチング、論理と感情のバランス、アカウンタビリティ、信頼関係構築、中長期的人材育成・・・。落合の流儀は、ビジネス上のリーダーシップや人材マネジメントの枠組みなんぞ糞くらえと言っているかのようである。プロフェッショナルとは?、チーム力とは?、結果(成果)を残すリーダーとは?などなど、改めて自問を迫られ、自分がこれまで持ってきた「あるべき論」が大きく傾いた。

もちろん落合だから・・・というところも多分にあるだろう。自分にはやろうと思ってもできないことも間違いない。ただ、本書を通じ、自分の既成概念が揺らぎ、新たな世界を垣間見ることができた。これぞ読書の醍醐味だった。

 

〈目次〉
プロローグ 始まりの朝
第1章 川崎憲次郎/スポットライト
第2章 森野将彦/奪うか、奪われるか
第3章 福留孝介/二つの涙
第4章 宇野勝/ロマンか勝利か
第5章 岡本真也/味方なき決断
第6章 中田宗男/時代の逆風
第7章 吉見一起/エースの条件
第8章 和田一浩/逃げ場のない地獄
第9章 小林正人/「2」というカード
第10章 井手峻/グラウンド外の戦い
第11章 トニ・ブランコ/真の渇望
第12章 荒木雅博/内面に生まれたもの
エピローグ 清冽な青


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井上靖『額田女王』(新潮文庫、1972)

2022-05-03 07:06:51 | 

家人の書棚にあって手に取ってみた。飛鳥時代の歌人、額田王の半生を描いた物語。淡々とした静かな文体で、神に仕える巫女としての主人公と彼女をめぐる時の人、中大兄皇子と大海人皇子らとの恋愛が描かれる。味わい深い小説だ。

幾通りかの読み方を楽しめる。額田王の巫女・女性・母・歌人としての伝記として。2人の皇子の三角関係を描いた恋愛小説として。大化の改新後の遷都・蝦夷征討・白村江の戦い・壬申の乱といった国として形を整え始めたヤマトの成立過程を綴った歴史小説として。

あくまでも小説なのだが、教科書や歴史書ではわからない時代の空気感を感じ取れるのも嬉しい。この小説を通じて、自分なりに、歴史的転換点において彼らがどういう考え・思いだったのかを想像を駆け巡らせるのも楽しい。

出会いに感謝する一冊だった。


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