その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、映画、本などなどについての個人的覚書。SINCE 2008

H.G.Wells "A DREAM OF ARMAGEDDON" (1901)

2023-08-31 07:39:24 | 

数年前に新国立劇場で「アルマゲドンの夢」(作曲:藤倉 大、演出:リディア・シュタイアー)としてオペラ化されたH.G.Wellsの原作を原語で読んでみた。Amazonが本当にありがたいと思うのは、こうした洋書が簡単にダウンロードして読める。しかも英英辞書機能を使えば、難度一定レベル以上の単語の意味は原文に注記されるので、辞書を引くことなく読めるのだ。

それでもフィクションを原語で読むのはしんどい。短編なので一気に読み通せるかなと期待したのだが、SF小説独特の世界観などもあって、単語は知っていてもしっかり読むのはかなり骨が折れて、中断に次ぐ中断の上、足かけ2年半かかった。オペラのイメージも残っていることもあって何とか読了した感じ。

作品としては、夢の中の話ということではあるし、第1次世界大戦前の作品(1902年)でもあるのだが、全体主義に傾く国や人々など、古さを全く感じさせないのが凄い。ただ、表紙も含めて挿絵が物語のイメージと離れていて、私の読解力のなさなのか、想像力の違いなのか、わからなかったが、読んで落ち着かないところがある。

小説そのものよりも、こういう英文学をスラスラと読めるようになりたいものだ、という思いが強く残った。


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渋谷らくごに行ってみた。

2023-08-26 07:51:08 | 日記 (2012.8~)

渋谷らくごという企画があるのを知り、行ってみた。毎月第二金曜から5日間、渋谷のユーロライブという小シアターで開催している。

この日の夜の部は、仕事帰りに嬉しい夜8時から。4名の落語家さんが約30分ずつで、計2時間の上演だ。

シアターそのものはきっと満員になれば150名程度は入りそうだが、お盆の時期ということもあってか、がらがら。目測20名のちょっと寂しい入りだったが、逆に落語家さんとパーソナルにお近づきになった気がして、個人的にはこれはこれで良い(興行としては辛いだろうが・・・)

新しいシアターなので、寄席や地元のホールよりも椅子の座り心地がすこぶる良くて快適だ。逆に眠くなってしまいそう。

4名の落語家さんはどなたも初めての方。どの落語さんも個性が違って楽しい。30分あるので、しっかりまくらも付いていて、まくらのほうが面白かったりする時もある。

立川志ら乃さんという立川流の落語を始めて生で聴くこともできた。立川志らくの弟子なのだが、談志師匠を思わせる迫力が凄く、聴くものを前のめりにさせる力を持っている。持ち時間超えて、40分ほどしゃべり倒してた。

四者四様の芸を楽しんで、帰宅。

2023年8月14日

柳亭小痴楽 道具や

三遊亭游子 寄合酒

立川志ら乃 火焔太鼓

橘屋園太郎 三年目

 

 

 

コメント (2)
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寺社は朝に限る!:聖観音宗 浅草寺 @浅草

2023-08-22 07:04:01 | 旅行 日本

夏休み都心ステイの最終日。朝ランで戦争犠牲者慰霊碑廻りの途中、浅草寺に立ち寄り参拝。朝6時台の浅草寺なんて初体験。

まずは言わずと知れた浅草のシンボル雷門。今回は見仏目的ではないので、風神雷神はチラ見のみ。当たり前だが、仲見世の店はどこも開店前でシャッターだし、観光客も居ない。

人気のない仲見世を駆け抜け、宝蔵門まで来る。両脇には仁王様が立っているが、今朝はここもチラ見のみで通過。

 

本堂前には早起き観光客もそれなり居るので感心する。ぱっと見、外国人比率80%。良い時間帯に来てる。本堂から朝の念仏の合唱が聞こえてくる。

浅草寺は建物自体は鉄筋コンクリート製(関東大震災や東京大空襲で旧本堂は焼失)なためか、建物から歴史的な重みを感じることは無い。それでも建物自体の壮大さは威圧感たっぷりだし、五重の塔をバックにした絵柄は絵になる。夏の朝の青空に映える寺院の赤色とのコントラストも美しい。

続いて、影向堂と薬師堂を見学。本当ならこの辺りもゆっくり巡りたいところだ。特に、影向堂には観音さまをお助けする十二支の守り本尊のお堂衆)を祀ってあり、仏像ファンには堪らない場所。堂内は中央に聖観世音菩薩が祀られ、その左右に千手観音、虚空蔵菩薩、文殊菩薩、普賢菩薩、勢至菩薩、大日如来、不動明王、阿弥陀如来を祀る。入り口でお参りだけで済ませた。

7時近くになるともう空気も熱くなって、朝特有のみずみずしさや気持ちよさは、あっという間に煙のように消え去った。私もホテルに向かって、帰路のランに出た。

 

奈良・京都の寺社の朝とは全く趣は異なるが、浅草寺の朝も普段と違った姿が見られるので、朝の浅草寺訪問、機会ありましたら一度お試しください。

2023年8月11日


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これはお値打ち!: 古代メキシコ文明展 @東京国立博物館

2023-08-19 08:11:58 | 美術展(2012.8~)

テオティワカン、マヤ、アステカの文明からの様々な出土品をもとに古代メキシコ文明を紹介する特別展。

非常に見応えあった。修復努力の賜物だとは思うが、どの遺物も状態良く保存されている。

全般的に日本の繊細で柔らかい文化との違いが印象的だ。スケール大きく、硬質な印象を受ける。対象となった時代が紀元前1500年から紀元後1600年という広範囲にわたる上に、未だ分かっていないことも多いとされる古代メキシコ文明なので、出土品から勝手に当時の様子や人々の想像を膨らませるのが楽しい。

個人的に最も印象的だったのは、目玉出品とも言えるマヤの都市国家パレンケのパカル王の妃とされる赤い辰砂に覆われて見つかった通称「赤の女王」の遺物。7世紀に埋葬された女王の棺が現代に開かれるって、時間の封印を解く緊張感がたまらない。本人に被せてあった、ややくすんだエメラルドグリーン色のマスクが、観る者に何かを語りかけているように見えた。


赤の女王のマスク・頭飾り・冠・首飾り:マヤ文明 7世紀後半(パレンケ、13号神殿出土)

展示の仕方も工夫が一杯で多くの人が楽しめるように企画されていた。例えば、個人利用目的の写真は撮り放題。鑑賞よりも撮影に熱心な方が沢山いたのは微笑ましかったが、面白い試みだと思う。以下、いくつか個人的に気に入ったブツのスナップ。


モザイク立像:テオティワカン文明 200~250年 (黒曜石)


嵐の神の壁画:テオティワカン文明 350~550年


トニナ石彫171:マヤ文明、727年ごろ


猿の神とカカオの土器蓋:マヤ文明 600~950年


鷲の戦士像:アステカ文明 1469~86年

会場内も大スクリーンによる遺跡の映像投影や壁に遺跡風景をはることで、あたかも遺跡の中に居るような雰囲気を出してくれたのも、気分が盛り上がって良い。「赤の女王」は石室の棺に納められように展示がしてあり、女王の遺体の大きさ(思いのほか小柄)がよりリアルに感じ取れるともに、納棺に居合わせているような臨場感もある。

日本ではなかなかこうした中米の歴史や遺物に触れる機会は無いので、とっても貴重な展覧会だと思う。大混雑という程では無かったが、家族連れ、外国人観光客も多数で、大変賑わっていた。東京では9月3日までなので、少しでも興味のある方にはお勧めします。

2023年8月12日 訪問

 

(構成)
▼第一章古代メキシコへのいざない
▼第二章テオティワカン 神々の都
▼第三章マヤ 都市国家の興亡
▼第四章アステカ テノチティトランの大神殿


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らくごカフェに行ってみた @神保町

2023-08-16 08:40:05 | 日記 (2012.8~)

以前から一度訪れてみたかった神保町のらくごCaféに行ってみた。

神保町の交差点の南西側から徒歩1分の神田古書センタ5階(いわゆる雑居ビル)で開催されている。

開始30分前にビルに着いたら1階からの階段にずいぶんの人が並んでいたので、「この行列が5階まで続いているのか!」と思ったら、2階に入っている人気カレー店ボンディの行列だった。5階の会場に入ると、小学校の教室の1/3ぐらいの広さのところにパイプ椅子が30席ほどぎっしりと詰まった独特の空間。超、密で下北沢の小劇場を思い起こさせる。前から3列目(全部で5-6列)に陣取ったが、高座が手に届くようなところにある。ホール落語では味わえない臨場感だ。

この日は「三三と若手」というテーマで、柳家三三師匠と春風亭三朝さんと柳家勧之助さんが登場。若手と言っても2人も立派な真打である。

勧之助さんと三朝さんは初めてお目にかかります。勧之助さんは「寝床」。話は「どらえもん」のジャイアンのワンマンショーの江戸版だが、旦那と聴き手のやりとりが絶妙。三朝さんはまくらからマシンガントークが圧倒的。演目の「妾馬」は前半部分はYoutubeで聴いたことあるが、後半も入った話は初めて新鮮だった。

後半、三三さんは何度か聴いていて、その歯切れのよい話しぶりが好み。三三さんの「星野屋」も実演は確か2回目。お花の演じが、したたかで、色っぽくッて、可愛くある。ちょっとした目の泳ぎや表情がつぶさに読み取れるこの会場ならではの面白みも多い。

ここは結構、癖になるかも。

 

2023年8月10日

◆三三と若手

出演:柳家三三・春風亭三朝・柳家勧之助
開場:1​3時半 開演:14時 
料金:予約・当日:3000円(1ドリンク付)


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旅ラン@東京: 戦争犠牲者鎮魂ラン

2023-08-12 07:35:34 | 旅行 日本

今年の夏休みは家庭事情により遠出できないため、代替として都内の水道橋駅エリアにあるホテルに3日ほど滞在しました。これはこれで、ゆっくりとした時間が過ごせます。

早朝旅ランはいつものルーティーン。今回のテーマは、時機を踏まえて「戦争犠牲者への慰霊」。ホテルからアクセス可能(半径5k圏内)な慰霊碑等をリサーチし、それらを巡るコースを設定しました。

1日目は西方面へ。

【靖国神社】
まずは九段下方面へ走り出し、靖国神社へ。戦争犠牲者の慰霊ならここを外すわけにはいきません。戦争犯罪人を祀ることについては議論ありますが、国に殉じた兵士たちへの慰霊に異議を唱える人はいないでしょう。境内には、様々な戦争にかかわる記念碑、記念像が建てられていました。


(朝6時頃。まだ人もまばらです)


(6時開門)

境内にある資料館遊就館の前には特攻勇士の像があります。まだ少年の面影残る顔だちを見ると、非合理的で無謀な作戦に従い、殉じざるをえなかった若者の人生を想い、涙を禁じ得ないものがあります。


(まだ少年ですね)

靖国神社を出ると飯田橋駅を経由して、外堀通りを後楽園方面に向かいます。(ラン後にコースを振り返ったら、靖国神社と並んで大事な千鳥ヶ淵戦没者墓苑を訪るのを忘れるという痛恨のミス)

【東京都戦没者霊苑】
地下鉄丸ノ内線後楽園駅の北側に隣接している礫川公園(この公園の敷地は戦前は陸軍の砲兵工廠だったらしい)の奥に東京都戦没者霊苑があります。満州事変から太平洋戦争終結迄の16万人ほどの戦没者の霊を祀られているとのこと。残念ながら開場は9時からで、門の外からお参りだけしました。


(礫川公園、噴水の水は出てませんが、美しくデザインされた公園です)


(東京都戦没者霊苑)

【番外 牛天神北野神社】
戦没者霊苑の周囲を廻っていたら、住宅街の台地にひっそりと佇むように小さな神社がありました。天神様を祀った神社で、北斎の版画にはここから見る富士山を描いたものがあり、切手にもなったことがあるようです。


(階段上って境内へ)


(牛天神北野神社)

再び総武線沿線に出て水道橋方面へ。グーグルマップによると、神田川沿いの昭和第一高校の東側に防空壕跡があるはずなのですが、該当箇所はマンション?の建設工事中で、それらしきものは発見できませんでした。1日目は、以上で終了。道に迷ったり、寄り道したりして走るので、9キロを1時間半近くかかってます。


(この壁沿いに防空壕跡があるはずなのですが・・・)

2日目は、水道橋を北東方面へ走り始めます。目指すは浅草エリアです。

水道橋→お茶の水→秋葉原と来た道すがら、秋葉原駅を過ぎたところにある地域の慰霊碑にお参り。


(佐久間公園:JR総武線の線路脇に佇むどこにでもあるような小公園)

【戦災殉難者慰霊碑】

秋葉原駅と浅草橋駅の間にある佐久間公園に立つ昭和20年3月9日の東京大空襲の犠牲となった秋葉原東部地区の殉難者慰霊碑です。400人余りの霊を慰霊するものです。南無阿弥陀仏。
(戦災受難者の碑)


(慰霊碑の向かいにはこんな碑も)

そのまま、東に進み浅草橋駅過ぎて日光街道に当たったところで、日光街道を北へ。駒形橋西詰の交差点を東に曲がり、隅田川に出ます。朝日が川や町全体を照らし、輝いています。


(朝6時15分頃。朝日を受けて輝くスカイツリー)

【東京大空襲犠牲者追悼碑】

隅田川にかかる言問橋の西側・北側の隅田公園に太平洋戦争中の東京大空襲により亡くなった方々の追悼碑があります。当時、空襲で亡くなられた多くの方々の遺体はここに仮埋葬されたとのこと。合掌。




(丁度、一人のお年寄りが新しいお花が供え、線香に火を灯されました)

【浅草寺】

言問橋から走って3分ほど。浅草寺に到着。浅草寺の影向堂の敷地内にも記念碑がありました。浅草寺自体、空襲で大きな被害を負っています。黙禱。

(左の掲示板は、空襲後の浅草の町の写真)

浅草寺にもお参りし(これはまた別ポストで)、復路に入ります。往復で11キロ程、前日ほど道に迷うことも無く、スムーズな朝ランでした。

この時期、戦没者に思いを寄せると必然的に胸に沸き上がるのは現代世界の平和への希求の思い。今ある戦争が終結を願うのはもちろんのこと、先行き不透明な世界情勢の今後の平和を願うばかりです。

改めて平和の大切さを認識します。

思い付き企画の慰霊碑ランでしたが、とっても重かったけど、この時期に、ひとりの日本人として過去を振り返り、慰霊を行い、現在・未来を考えることの大切さを感じることができた貴重な機会でした。ちょっと調べると、都内にもまだまだ様々な慰霊碑、平和記念碑、戦争跡があります。また、機会を見つけて、訪れてみようと思います。

 

2023年8月10日、11日


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一読の価値あり: 安倍晋三 (著), 橋本五郎 (その他), 尾山宏 (その他), 北村滋 (監修)『安倍晋三 回顧録』(中央公論新社、2023)

2023-08-10 11:00:24 | 

安倍さんの回顧録ということで興味深く読んだ。

編集面と内容面、それぞれにおいて、良かったと思うところと、がっかりのところがあり、読後はミックスした感想となった。

まずは、編集面においては、こうした首相の回顧録を出版したということ自体が貴重で価値があると感じた。日本の首相が、辞任後時間をおかず、自分の言葉で自分の政策やその結果を振り返って公にするというのはこれまで例が無いそうである。当事者としての思い、状況を知ることができるのは、歴史の記録としても非常に大切だと思うし、われわれ国民としてもありがたい。

逆に、安倍さんの在任期間の長さは、実行・実現してきた政策の幅広さを考えると、あまりにもインタビュー(もしくは掲載部分のインタビュー)が表面的で深みに欠ける。次から次へのトピックが移り、掘り下げが浅さは否定できない。更問が弱いので、本人が言いたいことを話して終わりになっているケースがほとんどに見える。本人が言いたくないことを引き出すのが、この手のインタビューの妙だと思うが、本書は到底そのレベルには達していない。(まあ、官邸スタッフだった人が監修としてチェックしてるから、こうなるのは当然と思うが・・・)

内容面において、良かったと思うこととしては、在任中の報道だけでは見えてなかった安倍内閣の裏舞台を知ることができたこと。例えば、安倍さんの毛並みの良さのメリット。外交面での交渉や海外トップ達との関係構築に現れるし、国内では人の使い方にも出ている。また、安倍さんを支えた菅さん、麻生さん、秘書官たちの動きの重要性も興味深い。首相の意思決定のプロセスが垣間見れる。

安倍さんの官僚不信はとりわけ印象的だ。財務省に対しては特に凄まじい。森友の文書問題も、安倍下ろしのための財務省の策略の可能性とする発言には唖然とした。文書が捨てられた今となっては検証できない仮説になってしまったが、真実を知りたいものである。

がっかりは、安倍さんの思考や行動の癖が改めて確認できたことだろうか。在任中、政策的というよりも言動的(例えば、国会でのヤジに現れるような幼稚な姿勢)について、私自身はアンチ安倍だったのだが、インタビューでの語り口に触れて、改めて、やっぱりこういう人だったのだなと感じられた。深く考えるというより、(時にリーダーとしては必要な資質かもしれないが)思い込んで突き進むタイプであり、思考的な深みや教養は感じられない。人の器としても、(政治の世界で生き抜くためには、「敵」と「味方」の見極めが生死を決するのは理解しつつも)味方には優しいが、敵には徹底的に厳しい姿勢は、国のリーダーの器として個人的に好きになれない。

最大のがっかりは、これは時系列的に致し方ないが、統一教会の話が全く出てこないことである。あれだけ、「美しい日本」や安全保障の重要性を繰り返していた安倍さんが、明らかに日本の国家利益に反する活動をしている(公言している)統一教会を支援したのか。(これは安倍さんに限ったことでなく、多くの自民党議員に言えることだが)言行不一致も甚だしい。どんなに格好の良いことを言っても、足元で真逆なことを行っている人を、どうして信頼できるだろう。

天皇退位や元号の背景、保守論客との関係、など、新たに知ったこと多数。いろんな思いが浮かんだ一冊だった。計36時間のインタビューというから相当数の部分がカットされているだろう。完全版を出して欲しい。

いろんな思いは行き来するが、政治学、現代政治史の活きたテキストとして、非常に価値ある一冊だと思う。

 


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ロンドン・デリー公演 「アンダーグラウンド」 @せんがわ劇場

2023-08-07 07:24:26 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

友人が出演したので応援観劇。

1991年に設立されたというロンドンデリーという劇団。ホームページはここ数年更新が無く、どうも休眠状態にあったようで、久しぶりの公演のようである。会場のせんがわ劇場には、初めて訪れたが、駅チカで、設備もシンプルだが綺麗。収容108名の小劇場で好印象。

芝居は、暴力団が看板を書き換え「企画会社」となって、そこに勤める元暴力団員たちとその周辺の人たちが織りなす地下社会(アンダーグラウンド)の人間ドラマ。社会系でもあり、人情系でもあるが、最後は悲劇である。主要テーマが絞りにくいが、テンポよく話が流れていくので、1時間45分の公演時間も長さを感じない。

役者さんも熱演で、特に主役のサブローを演じる津本泰雅さんと「社長」の連城力丸さんが緊張感ある演技で、舞台の中心軸がしっかりしていた。

役者の息遣いまで聞こえる小劇場は、その臨場感の魅力が素晴らしい。コロナ以降、下北沢の小劇場には脚が遠のいているので、機会を見つけて行ってみよう。

2023年7月21日


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15倍速の「指環」: ヴァイグレ、読響、ドイツ音楽プログラム @フェスタサマーミューザ

2023-08-04 17:06:35 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

先週の都響に続き、今季2回目のサマーミューザ。

今回は読響と常任指揮者のヴァイグレさんコンビによるドイツ音楽プログラム。この日は4階席1列目に着席。

前半のベートーヴェン交響曲第8番は、とってもオーソドックスな演奏。端正で、音がとっても瑞々しい。読響は弦と管のバランスがとっても良いですね。楽聖の名曲のすばらしさを引き出してくれた演奏でした。

後半はワーグナーの『指環』の抜粋版(デ・フリーヘル編曲)です。ヴァイグレさん指揮のワーグナーは昨年「パルジファル」、一昨年に「タンホイザー」を観ていて、いずれも素晴らしい公演だったので期待も高かったです。その期待に十二分に応えてくれる演奏でした。

前半、ややエンジン抑え気味なのかと思ったところはありましたが、「ワルキューレ」「ジークフリート」と進みにつれ尻上がりに音楽に活気と力がみなぎります。ホルンのソロの見せ場がいくつかあり、見せ所だけど大変な重圧だろうなあと思いましたが、見事なソロを披露してくれました。この曲からも読響の管・弦・打のバランスの良さが引き立ちます。

ヴァイグレさんの指揮は実に堅実で、全体の流れを踏まえつつ、個々の見せ場を作りこむ技が素晴らしいですね。10倍速以上で進む物語ですが、それをまとめ上げる職人的な技を感じます。

4部、計15時間の「指環」を1時間足らずで走り抜けるので、15倍速。「え、もうここ!?」とあっけなさ感は残りますが、致し方ないですね。終演後の歓声、拍手は前週の都響を上回るのものでした。ソロカーテンコールではヴァイグレさんは大活躍のホルン首席奏者と一緒に登場。ステージマナーにもヴァイグレさんの丁寧なお人柄が表れている気がしました。

フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2023
読売日本交響楽団
サマーミューザ初登場!オペラの名匠ヴァイグレ×指環

ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮:セバスティアン・ヴァイグレ(読売日本交響楽団 常任指揮者)

ベートーヴェン:交響曲第8番 ヘ長調 Op. 93
ワーグナー(デ・フリーヘル編曲):楽劇『ニーベルングの指環』 ~オーケストラル・アドヴェンチャー

Festa Summer MUZA KAWASAKI 2023
Yomiuri Nippon Symphony Orchestra

Tuesday 1 August 2023 Start at 19:00
MUZA Kawasaki Symphony Hall

Sebastian Weigle (Yomiuri Nippon Symphony Orchestra Principal Conductor), Conductor
Beethoven: Symphony No. 8 in F major, Op. 93
Wagner (arr. H. de Vlieger) : Der Ring des Nibelungen (an Orchestral Adventure)


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記憶に残る「オテロ」: チョン・ミュンフン指揮、東フィル @東京オペラシティコンサートホール

2023-08-01 07:09:25 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

圧倒的なパフォーマンスでした。独唱陣、合唱、オケどれも素晴らしい出来で、演奏会方式ながら本格的な演技と小道具も入り、ヴェルディ晩年の傑作オペラを十二分に堪能しました。

独唱陣では表題役のグレゴリー・クンデさんが圧巻。ホールを貫き通す声量と美声に加え、演技も感情の入った表情、身体表現で、孤独で嫉妬に狂う将軍オテロを演じました。

加えて、影の主役ともいえるイアゴー役のダリボール・イェニスさんの悪人ぶりも、大柄な体躯とワイルドな外見、圧を感じる声量で存在感が凄まじい。オテロとイアゴーが並び立つ様は映画のプロモーション・スチール写真のように絵になります。2幕ラストの二重奏の迫力は、ヘビー級ボクサーのパンチを貰うような衝撃でした。

デスポーザ役の小林厚子さんさんも健闘。グールドを目の前で歌われて耳が大丈夫なのだろうかと心配になるほどでしたが、可憐で純真な女性を涙を誘う演技でした。第3幕のアリア「柳の歌」は涙なしには聴けません。

合唱団は国立劇場合唱団。第1幕冒頭の嵐の場面から迫力ある合唱で緊張感を高めてくれました。

歌手陣・合唱と比べ、勝るとも劣らずに素晴らしかったのが東フィル。普段は新国立劇場のビッドからの演奏を聞いていますが、こうしてステージ上の東フィルを聞くのは初めてかも。しかも、指揮はチョン・ミョンフンさん。きっと15年以上前にN響でマーラーの9番を聴いて以来です。

チョンさんは暗譜でした(オペラを暗譜で振って、あまり見たことない)。創り出される音楽は、ダイナミックかつ、1本のしっかりした芯が通っています。ブレが無くて、実に強靭な印象です。(新国オペラハウスではいつも4階、今日はTOCコンサートホール1階という違いもあるのかもしれませんが)パワフル歌手陣と競うような音圧がすごい。また、静かな場面では優しく奏でられるアンサンブルが胸を打ちます。失礼ながら、「東フィルってこんなに上手なんだ~」と思ったぐらいでした。

終演後は、ホールは熱狂的と言っていいような、大きな拍手と歓声に包まれました。オペラシティコンサートホールならでは音の反響で、ホール全体感の一体感が倍増される感じです。とっても、レアで貴重な音楽体験でした。

 

2023年7月27日(木)19:00
東京オペラシティ
コンサートホール

第156回東京オペラシティ定期シリーズ 
指揮:チョン・ミョンフン(名誉音楽監督)

オテロ(テノール):グレゴリー・クンデ
デズデーモナ(ソプラノ):小林厚子
イアーゴ(バリトン):ダリボール・イェニス
ロドヴィーコ(バス):相沢 創
カッシオ(テノール):フランチェスコ・マルシーリア
エミーリア(メゾ・ソプラノ):中島郁子
ロデリーゴ(テノール):村上敏明
モンターノ(バス):青山 貴
伝令(バス):タン・ジュンボ

合唱:新国立劇場合唱団(合唱指揮:冨平恭平)

ヴェルディ/歌劇『オテロ』
全4幕・日本語字幕付き原語(イタリア語)上演

原作:ウィリアム・シェイクスピア『オセロー』
台本:アッリーゴ・ボーイト

公演時間:約2時間50分(休憩含む)

 

July 27, 2023, Thu 19:00
Tokyo Opera City (Concert Hall)

The 156th Subscription Concert in Tokyo Opera City Concert Hall
Conductor: Myung-Whun Chung (Honorary Music Director)

Otello: Gregory Kunde
Desdemona: Atsuko Kobayashi
Iago: Dalibor Jenis
Lodovico: Hajime Aizawa
Cassio: Francesco Marsiglia
Emilia: Ikuko Nakajima
Roderigo: Toshiaki Murakami
Montano: Takashi Aoyama
A Herald: Junbo Tang

Chorus: New National Theatre Chorus

Verdi: Opera "Otello" in concert style


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