その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、映画、本などなどについての個人的覚書。SINCE 2008

駒場キャンパスでホガースと学生気分を満喫:「東京大学経済学図書館蔵ウィリアムホガース版画(大河内コレクション)のすべて」

2023-06-22 07:19:31 | 美術展(2012.8~)

東大駒場キャンパスで開催中のウイリアム・ホガースの銅版画展を訪れた。フォローしてるブロガーさんの記事で知ったのだが、自称ホガース好きの私にはたまらない企画だった。

東大駒場キャンパスは人生2度目の訪問。本郷キャンパスのような広大さはないが、緑いっぱいで若い学生さんが行き会う環境は青春映画の一幕のようである。土曜の午後とあって、キャンパスにはクラブ活動の学生さんたちが行き来したり、図書館帰りのような学生さんが本を歩きながら読んでいた。その場に居るだけで、数十年、時間が戻った感覚になったり、急に勉強したくなる。学校は不思議な力を持っている。

今回のホガース展は、展覧会ホームページによると東大経済学部で「長く教鞭をとられた大河内一男・暁男両教授が、親子二代にわたって収集されたもの」で、「経済学図書館・経済学部資料室の貴重なコレクションの一つ」ということだ。(大河内一男先生ってどっかで聞いたことあるなあと記憶を辿ったら、学部時代の「社会政策」の授業テキストの著者であったことを思い出した)


<駒場博物館前>

入館して、充実の展示に驚いた。展示目録がない(たまたま品切れ?)のが残念だったが、優に50は超える版画が展示されていた。想像以上に多くの作品、それも有名どころが展示してあって一枚一枚じっくりと鑑賞した。ホガースの絵は当時のイギリス風俗を風刺的に描いているので、その読み解きが楽しい。≪ジン横丁≫・≪ビール街≫、≪放蕩息子一代記≫、≪娼婦一代記≫などなど、著名な作品群だ。

興味深かったのは、各作品について、見学者(きっと多くは学生さん)のコメントや疑問を付箋紙で作品の下にペタペタと張り付けている。その付箋コメントを見ては、「こんな見方もあるのね。」「ここは気づかなかった。」とコメント読み比べも楽しかった。所々、先生が書いているのだろうか。色の違う付箋紙で質問付箋紙に回答しているようなメモも張り付けてあった。様々な見方が、作品と同時に楽しめる、大学美術館ならではのやり方で感心した。


<絵の下の付箋紙に感想や質問が>

博物館自体はさほど広いものではない(高校の小体育館ぐらいかな?)が、キャンパスの中にこんな博物館があって、無料で見学できるなんで、なんと羨ましい。確かに、以前訪れたハーバード大やオックスフォード大、ケンブリッジ大なんかのキャンパスには、信じられないような素晴らしい美術館・博物館があった。大学は「知」の拠点であるはずなのだから、「知」の継承の場としての博物館や美術館はその大学の歴史や風格が現われるのだろう。

博物館を出ると、キャンパス内にあるカフェテリア(イタ・トマ!)で、読書したり、勉強してたり、だべったりしている学生さんたちに交じって、コーヒゼリーを頂いた。昔の時間がフラッシュバックする。

とっても贅沢な時間だった。

6月25日までです。

2023年6月3日訪問

 

東京大学経済学図書館蔵ウィリアムホガース版画(大河内コレクション)のすべて
 「近代ロンドンの繁栄と混沌(カオス)」

 


コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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いけませんでした (守屋)
2023-06-24 05:45:02
おはようございます。

時間が合わなくてていけませんでした。残念です。

イギリスのメディアがホガースの作品を使うときは、大抵、なにかネガティヴなことが起きた時。なので、Beer Streetが取り上げられるのは少ない印象があります。

質屋のサイン(3つの球体)がかしいでいるのは、社会が安定していることを示している、という意味だったかなと。
Unknown (かんとく)
2023-06-28 05:21:01
守屋さん
もっと早くにご連絡できれば良かったのですが、ギリギリ過ぎました。丁度、ホガース関連書籍の紹介コーナーがあり、新刊で中村隆『ホガースの時代: 版画で読むイギリス』(山形大学出版会、2023)という本を知りました。早速、ポチッて、読み始めてます。いろんな謎解きの解説もあり、面白いです。