その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、映画、本などなどについての個人的覚書。SINCE 2008

空いている京都!:宇治散策

2018-09-30 08:30:00 | 旅行 日本
 平等院を出た後は、周囲を散策しました。まずは裏にある宇治川へ。学生時代に愛読した「平家物語」でも有名な「宇治川の先陣争い」の舞台です。急流として描かれた宇治川も、今は上流部分にダムができて、水量が調整されているようですが、それでも水量多く、流れはかなり早い。宇治川の戦いの実際の場所は良く分かりませんが(丁度この近くに宇治川の戦いの記念碑があったのを後で知りました)、「先陣争い」の当時に思いを馳せながら川沿いを歩きました。


《宇治川橋から上流を望む》


《朝霧橋》


 川を渡ると宇治神社へ。本殿は国の重要文化財にも指定されています。


《階段上って拝殿へ》


《本殿前の鳥居》


《本殿は三間社流れ造り桧皮葺きの社殿で、鎌倉時代初期の建造物とのこと》

 宇治神社の奥には、対になる宇治上神社があります。こちらは、世界遺産の構成資産の一つです。本殿は平安時代後期の造営で、日本最古の神社建築だそうです。そして、「本殿前に建てられている拝殿は鎌倉時代前期の造営で、寝殿造の遺構といわれいる」(Wiki)とのことです。世界遺産ではありますが、人気少ない神社は落ち着いていて清らかであり、境内の木々からはマイナスイオンを貰っている感じがします。




《拝殿》


《本殿》

 再び、平等院の参道に戻って、遅めの昼食を取り、お茶屋さんらを覗いたのち、京都駅に戻りました。


《平等院の参道》


《駅前の中村銘茶》




《お昼を取った「はなれ 中村製麺」。とり天うどんが美味しかった!これで880円!!》


《車両の色が緑なのはお茶を意識しているのでしょうか?》

2018年9月15日

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空いている京都!:初めて平等院を訪れる

2018-09-25 07:30:00 | 旅行 日本
 この8,9月は私としては珍しく、プライベート・仕事の双方で国内外をあっちこっち行ってます。先週末(9/15・16)は所要で京都に出かけたので、その機会を利用して京都観光を少しばかり楽しみました。

 2日間で2回タクシーを利用したのですが、2人の運転手さんが口を揃えたように言っていたのが、「お客さん、良い時に来ましたね~」。というのは、9月頭の関西地方直撃の台風で関空(へのアクセス)が機能しなくなっていたため、中国からのお客さんがここ数日激減しているとか。「久しぶりに、落ち着いた京都ですな~」(とっても優しい京都なまりな語りでした)。確かに、思いのほか観光客も多くなく、ストレスなく観光スポットを巡ることができました。、昨夏に京都を訪れた家人が、「あんな人だらけの京都にはもう当分行かない」と疲れ果てて帰ってきたので、混雑覚悟でしたが予期せぬ幸運でした。

 初日に訪れたのは、宇治の平等院。世界遺産でもあり超有名なスポットですが、私は初めて。ご存じのとおり10円玉の表面にデザインされている寺院です。1052年に藤原頼道が造営したこの寺院は、「西方極楽浄土とその教主である阿弥陀如来を観想(特定の対象に心を集中させること)するために造られたとするのが定説」(Wikiから引用)とのことです。当日はお天気が心配でしたが、何とか持ったのも阿弥陀様のお導きでしょうか?



 初めて見た鳳凰堂は想像していたよりはこじんまりとした御堂でした。ゴールデンウイークに訪れた厳島神社のイメージが残っていたからかもしれません。でも実に絵になる佇まいですね。浄土式庭園を池に沿って歩いていると、極楽浄土の世界が自然とイメージされます。







 鳳凰堂の入場指定時間(別売りの入場券を購入)まで1時間あったので、その間に、平等院の宝物館とも言える「平等院ミュージアム鳳翔館」を訪れました。これが近代的な非常に良くできたミュージアムで、国宝の梵鐘や鳳凰のオリジナルが身近に見れてお勧めです。鳳凰堂にあった木造雲中供養菩薩像 52躯のうち半数の26体もここで展示されています。雲に乗った様々な楽器を持った菩薩様一群が何とも可愛い。かぐや姫を迎えに天から降りてきた一団を思い出しました。

 鳳凰堂見学までまだ時間があったので、ミュージアムに隣接する茶房でお茶を一杯。普段抹茶を飲む機会はほとんどありませんが、せっかく宇治に来たんだからお茶ぐらい飲まないと。私には味は良くわかりませんが、香り良い抹茶は疲れた体に染みわたります。



 鳳凰堂は待ってでも入る価値ありますね。堂内の中央に坐する阿弥陀如来坐像を見ると何もかも自分が見透かされた感じ。周囲の壁にはミュージアムでみた木造雲中供養菩薩像が掛けられ、色は褪せてますが極楽浄土図も描かれています。ミュージアムで身近にみるのと、また暗くて良くわからないところはあるものの、本来あるべきところにあるものがある自然さの両方が楽しめるのが良いです。


《お堂のなかは撮影禁止なので、池の向こうからズームで撮ったお堂の阿弥陀如来様》

 鳳凰堂を出て、今一度、浄土庭園を散歩し、ミュージアムへ行って復習。仏様に怒られそうですが、動物園の動物と、自然の中にいる動物の両方を見ている感じです。


《鳳凰堂の屋根に輝く鳳凰》


《敷地内にある源頼政の墓所》

 約二時間、十二分に楽しんで平等院を後にしました。

 2018年9月15日

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N響9月定期Cプロ  オール・シベリウス・プログラム 指揮:パーヴォ・ヤルヴィ/「クレルヴォ」ほか

2018-09-23 19:36:19 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


4つの楽曲がオール・シベリウス、そしてそのすべてに男声合唱が入るという、パーヴォさんらしいユニークな構成。N響、エストニア国立男性合唱団、そして後半の「クレルヴォ」で登場したヨハンナ・ルサネンとヴィッレ・ルサネンら夫々がレベルの高いパフォーマンスを発揮し、プログラムを堪能した。

1,2曲目は初めて聴く曲だったが、3曲目のフィンランディアを合唱付きで聴くのも初めて。「フィンランディア」はN響の厚い音圧と抑制のきいたエストニア国立合唱団の組み合わせが美しく、背筋が伸びる演奏。

後半の「クレルヴォ」はフィンランドの民族叙事詩『カレワラ』の一部を取り上げたものだが、聴くのは初めて(以前、フランクフルトオペラでアウリス・サッリネン作曲のオペラの実演に接したことはあり)。シベリウスらしい民族色豊かな音楽で、初めての私にも聴きやすく、感情移入できるものだった。

この物語、クレルヴォとその妹との近親相姦が描かれるが、独奏者のソプラノのヨハンナ・ルサネンとバリトンのヴィッレ・ルサネンも姉弟とのこと。両名とも迫力満点の熱演だった。N響とエストニア国立男性合唱団のコラボから、壮大な歴史絵巻が瞼に浮かぶようである。

終演後、大活躍のエストニア国立合唱団にはとりわけ大きな拍手が寄せられ、オケが解散した後、合唱団の全員がステージから去るまで、会場からは拍手が続いた。それなりに長く会員を続けている私も、あまりこうした光景は記憶がない。私も拍手に参加したが、気持ちの良い拍手だった。こうした合唱団を招聘できたのもパーヴォさんのコネクションなのだろう。

先週・今週と、今シーズンのN響の更なる飛躍を期待させてくれるのに十分な演奏会だった。


第1892回 定期公演 Cプログラム

2018年9月22日(土)
開場 2:00pm 開演 3:00pm
NHKホール

シベリウス/「レンミンケイネンの歌」作品31-1
シベリウス/「サンデルス」作品28
シベリウス/交響詩「フィンランディア」作品26(男声合唱付き)
シベリウス/「クレルヴォ」作品7*

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
ソプラノ*:ヨハンナ・ルサネン
バリトン*:ヴィッレ・ルサネン
男声合唱:エストニア国立男声合唱団


No.1892 Subscription (Program C)

Saturday, September 22, 2018
3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)
NHK Hall

Sibelius / "A Song for Lemminkäinen", op.31-1
Sibelius / “Sandels”, op.28
Sibelius / “Finlandia”, tone poem op.26 (Version for Male Chorus and Orchestra)
Sibelius / “Kullervo”, op.7*

Paavo Järvi, conductor
Johanna Rusanen, soprano*
Ville Rusanen, baritone*

Estonian National Male Choir, male chorus

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映画 ”Life of the Party” (2018)

2018-09-20 07:30:00 | 映画


 飛行機の中で見たのですが、日本ではまだ未公開のよう。大学生の娘を持つ中年女性が、夫から離婚を持ち出され、人生の再起をかけて若き日に結婚のため中退した大学(娘の大学と同じ)に復学し、卒業目指してチャレンジ。キャンパスライフで巻き起こる騒動を通じて、友情・愛・努力を描いたコメディ映画。

 私的にはこれ以上典型的アメリカ的な映画は無いんではないかというぐらい、アメリカ・コメディ映画の典型だった。このぐらい王道を行くコメディも今どき珍しいんじゃないかな。学生時代はこのジャンルの映画をビデオを借りて良く見ていたが、観た映画のタイトルは全部忘れた。この映画もそうなりそう。

 とネガティブなコメントから入ったが、主演のメリッサ・マッカーシーの熱演、存在感が素晴らしいし、とにかく笑える。飛行機の中で見るのには最適だし、ちょっとブルーな時に観てみよう。元気をもらえる。

Directed by Ben Falcone
Writing Credits
Melissa McCarthy (written by) & Ben Falcone ..(written by)

Cast (in credits order) verified as complete
Melissa McCarthy ...Deanna
Matt Walsh ...Dan
Molly Gordon... Maddie
Ben Falcone ...Uber Driver
Jacki Weaver ...Sandy
Stephen Root ...Mike
Maya Rudolph .. Christine

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4年目突入のパーヴォ/N響。そして衝撃的な歌姫登場。N響定期Aプロ(2018年9月)/指揮:パーヴォ・ヤルヴィ/ マーラー 交響曲 第4番 ト長調ほか

2018-09-17 13:51:30 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 N響2018-2019シーズンのオープニングコンサートです。パーヴォさんとN響のコンビもいよいよ4年目に突入。月日が経つのは早いですね。就任前のマーラー交響曲第1番や就任記念の同2番の演奏会からもう3年が経つとは。あの時から、私自身も3つ年を重ねたかと思うと、ちょっと怖いものがあります。

昨年もそうでしたが、シーズン頭の9月の定期演奏会に、オーケストラの顔であるパーヴォさんが登壇してくれるのは、非常に好感が持てます。やっぱり、常任指揮者たるものそうでなきゃ。さあ今シーズンもやるぞという、気概が感じられる気がするからです。楽員さんたちにとってはどうなんでしょ。あんまり関係ないのかしら。

さて、この日は前半がシュトラウス一家の舞踏音楽もの5本と後半がマーラーの交響曲4番という「変わった」取り合わせでした。世紀末ウイーンという共通項があるとのことです。シュトラウスとマーラーがほぼ同時代というのは、私自身はほとんど意識したことがなかったので、新鮮な切り口でした。更に、小宮正安氏のプログラムノートに、各作品の時代背景が簡単に紹介されていて、「世紀末」と言っても年によりウィーンの状況は異なっていて、それが作品にも反映していることが記載されており、勉強になりました。

前半のシュトラウス一家シリーズは、華やかで楽しい時間でした。さすがに5品もワルツ、ポルカを聴くと、やや飽きがきますが、似てるとはいえ違うところはもちろん違いますし、シーズンオープニングに相応しい祝祭的な雰囲気が醸し出されます。テーマを持たせつつ、こんな演出をするのも、さすがパーヴォさんという感じ。

後半のマーラー交響曲4番はこれまた出色でした。この3年間のパーヴォ/N響コンビで、1,2,3,7,8を聴き、どれも素晴らしかったのですが、その黄金シリーズに更に4番が加わりました。第1楽章では、今回は意外とスタンダード風だなあと思ったのですが、第2楽章以降、特色満載。第2楽章のマロさんのヴァイオリ独奏は、不気味さが引き立ってましたし、第3楽章は逆にスローテンポの中で実に繊細な演奏で、牧歌的と言うよりも宗教的な気高さを感じるものでした。

そして、第4楽章に入る少し前に舞台に登場したソプラノ、アンナ・ルチア・リヒター嬢が衝撃的でした。水色のドレスに身を包んで登場したその瞬間、あの殺風景なNHKホールに、いきなり花が咲き、春が訪れたように、色彩が施され明るくなります。西洋人歌手としては珍しいほどに、細身で、顔だちや身のこなしがロイヤルファミリーのプリンセスと言ってもそのまま信じられるような気品。そして、その歌声は、天上から響くような、清らかで濁りなく、無色透明の神々しいソプラノ。天国にいるかのようです。歌姫とはこういう人を言うのだろうなと、耳と目の両方を完全に奪われ自失状態でした。

歌以外にも素晴らしい点は色々あったのですが、結局リヒター嬢にすべてを持ってかれた感じでした。以前、ロンドン響と一緒に来日歴もあるようですが、今回、彼女を連れてきてくれたパーヴォさんにも大感謝。

さて、ツイッター上でどなたかが呟いていてその通りと思ったのですが、パーヴォとN響の関係性も就任当時から着実に変わってきていると思います。マーラーの第1,2番を演奏した2015年当時はとにかくN響メンバーが必死になって、パーヴォに食らいつこうとしている様が手に取るように見て取れました。その、ぶつかりあいが聴く者にとっては興奮の源泉だったわけですが、3年たって以前のような食らいつこうとする一途な様子は見られなくなりました。逆に、より大人の関係に近づいた感じ。これが吉と出るのか、凶とでるのか、まさにその真価が問われるのが、このシーズンだと思います。

備忘ですが、オーボエのトップにあまり見ない若手の奏者が就いてらしたので、ツイッター上でお尋ねしたところ、兵庫芸術文化センター管弦楽団の吉村結実さんと言う方とのことでした。



第1891回 定期公演 Aプログラム

2018年9月16日(日)
開場 2:00pm 開演 3:00pm
NHKホール

ヨハン・シュトラウスII世/喜歌劇「こうもり」序曲
ヨハン・シュトラウスII世/ワルツ「南国のばら」作品388
ヨハン・シュトラウスII世/ポルカ「クラップフェンの森で」作品336
ヨハン・シュトラウスII世/皇帝円舞曲 作品437
ヨーゼフ・シュトラウス/ワルツ「うわごと」作品212
マーラー/交響曲 第4番 ト長調*

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
ソプラノ*:アンナ・ルチア・リヒター


No.1891 Subscription (Program A)
Sunday, September 16, 2018
3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)
NHK Hall


Johann Strauss II / “Die Fledermaus”, operetta - Overture
Johann Strauss II / “Rosen aus dem Süden”, waltz op.388
Johann Strauss II / “Im Krapfenwald’l”, polka op.336
Johann Strauss II / “Kaiser-Walzer”, op.437
Josef Strauss / “Delirien”, waltz op.212
Mahler / Symphony No.4 G major*

Paavo Järvi, conductor
Anna Lucia Richter, soprano*
コメント (2)
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やっぱり楽しい スタンフォード大学キャンパス ジョギング

2018-09-15 07:30:00 | 日記 (2012.8~)
 2週間ほど前になりますが、米国カリフォルニア州のパロ・アルトへ現地2泊、機内1泊、計3泊4日の出張に行ってきました。今回はラッキーなことにホテルがスタンフォード大学の真ん前。唯一の自由時間である打ち合わせ前の、朝の一時間余りを使って、キャンパス・ランニングに出かけました。朝6:45出発。

 日本より日の出は遅いようで、6:45ではようやく明るくなったという雰囲気です。大学の入り口の門というのは見当たらないのですが、強いて言えばこういうところなのでしょうか?



 授業棟や研究棟までの1キロはあると思われる真っ直ぐの道をまずは走ります。朝の冷たい風が頬に心地よい。



 これは以前にも紹介した覚えがありますが、大学付属の博物館です。当然、まだ空いてません。博物館の隣にはロダンの彫刻が。





 大学の中心部とも言える芝生広場。左奥には大学の塔が見えます。



 カリフォルニアとは言っても、ベイエリアは朝は肌寒ぐらいで、木々の色が変わり始めている木もありました。



 先ほどは違った角度で塔を。



 キャンパス中にリスが跋扈しているのもアメリカの大学らしい。



 前夜がカレッジ・フットボールの開幕戦。



 土曜日の7:00前後という時間もあって、広大なキャンパスを殆ど一人占め。とっても贅沢な気分で1日が始められました。

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大満足!・・・東京二期会/プッチーニ〈三部作〉外套/修道女アンジェリカ/ジャンニ・スキッキ @新国立劇場

2018-09-10 07:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 プッチーニの〈三部作〉は、唯一の観劇経験である2011年のロイヤルオペラの公演(パッパーノ指揮)がとても秀逸だったので、今でも強烈に記憶に残っています。「外套」のミケーレがルチオ ガッロ、ジョルジェッタがエヴァ・マリア ウェストブロック、アンジェリカがエルモネラ・ヤオ、そしてジャンニ・スキッキもルチオ ガッロという実力派歌手陣の個性がぶつかり合う舞台でした。今回の二期会はどんな公演になるのか、期待を大きくして出かけましたが、見応え十分のパフォーマンスでした。

 演出、歌手陣、オケがバランス良く組み合わさった、総合点の高い舞台という印象です。中でも、特筆すべきはミキエレットの演出でしょう。ロイヤルオペラで見た際も「なんでこの関連のない3つの話が三部作として一つのオペラとして公演されるのか」全く不思議でしたが、今回の演出では3つの話が一つの流れの中にまとめられていました。「外套」から「修道女」への移行では、「外套」が終った拍手の中、幕が下りることなく舞台そのままで設定が修道院に変わり、ジョルジェッタを演じていた北原さんがアンジェリカに変わっています。また、「ジャンニ・スキッキ」のラストでは、スキッキが1幕で使われた外套を羽織り、親戚筋の連中が1幕で使われたコンテナに閉じ込められて終わるというのもので、その仕掛けにびっくり。

 ベルトラン・ド・ビリー指揮、東フィルの演奏も素晴らしかったです。「外套」のどろどろしさ、「修道女」の美しい旋律、「ジャンニ」の軽妙な明るさが、それぞれ丁寧に表現されていました。東フィルの奏者さんたちが、終演後、ド・ビリーに向かって熱烈な拍手をしているのを見て、楽員たちの信頼とリスペクトも感じられました。

 歌手陣も安定したパフォーマンスでした。特に良かったと思ったのは、2役を演じた北原さんと上江さん。北原さんは、官能的なジョルジェッタと一途に我が子を想うアンジェリカという対照的な二人の女性を同じ人が演じているとは思えないほど演じ分けてました。ジョルジェッタのエロチックさにそそられた男性観衆者も多数と予想します(と人のせいにする)。上江さんは、ジャンニ・スキッキが特に良かったですね。この役柄が際立ってないと劇そのものの活気がなくなると思いますが、上江さんは明るく楽しく、ユーモラスに舞台を盛り上げてくれました。

 好きな作品を期待以上に楽しめて、余韻を噛みしめながらの嬉しい家路となりました。




〈三部作〉外套/修道女アンジェリカ/ジャンニ・スキッキ
オペラ各1幕
日本語字幕付き原語(イタリア語)上演
台本:『外套』ジュゼッペ・アダーミ/『修道女アンジェリカ』および
   『ジャンニ・スキッキ』ジョヴァッキーノ・フォルツァーノ
作曲:ジャコモ・プッチーニ
会場:新国立劇場 オペラパレス
公演日:2018年9月8日(土) 14:00

スタッフ
指揮:ベルトラン・ド・ビリー
演出:ダミアーノ・ミキエレット

演出補:エレオノーラ・グラヴァニョーラ
装置:パオロ・ファンティン
衣裳:カルラ・テーティ
照明:アレッサンドロ・カルレッティ


合唱指揮:冨平恭平
演出助手:菊池裕美子
舞台監督:村田健輔
公演監督:牧川修一
公演監督補:大野徹也

キャスト
『外套』
9月6日(木)/8日(土)

ミケーレ:上江隼人
ジョルジェッタ:北原瑠美
ルイージ:樋口達哉
フルーゴラ:塩崎めぐみ
タルパ:清水那由太
ティンカ:児玉和弘
恋人たち:新垣有希子、新海康仁
流しの唄うたい:高田正人

『修道女アンジェリカ』
9月6日(木)/8日(土)
アンジェリカ:北原瑠美
公爵夫人:中島郁子
修道院長:塩崎めぐみ
修道女長:西館 望
修練女長:谷口睦美
ジェノヴィエッファ:新垣有希子
看護係修道女:池端 歩
修練女 オスミーナ:全 詠玉
労働修道女I ドルチーナ:栄 千賀
托鉢係修道女I:小松崎 綾
托鉢係修道女II:梶田真未
労働修道女II:成田伊美

『ジャンニ・スキッキ』
9月6日(木)/8日(土)
ジャンニ・スキッキ:上江隼人
ラウレッタ:新垣有希子
ツィータ:中島郁子
リヌッチョ:新海康仁
ゲラルド:児玉和弘
ネッラ:小松崎 綾
ベット:大川 博
シモーネ:清水那由太
マルコ:小林大祐
チェスカ:塩崎めぐみ
スピネロッチョ:倉本晋児
公証人アマンティオ:香月 健
ピネッリーノ:湯澤直幹
グッチョ:寺西一真

合唱:二期会合唱団
新国立劇場合唱団、藤原歌劇団合唱部
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

IL TRITTICO
Collection of three one-act operas IL TABARRO,
SUOR ANGELICA,and GIANNI SCHICCHI
In Italian language with Japanese supertitles
Libretto by Giuseppe Adami (IL TABARRO), Giovacchino Forzano
(SUOR ANGELICA and GIANNI SCHICCHI)
Music by GIACOMO PUCCINI

SAT. 8. 14:00 September 2018
at New National Theatre, Tokyo - Opera House (Japan)

STAFF
Conductor:Bertrand de BILLY
Stage Director:Damiano MICHIELETTO
Associate Stage Director:Eleonora GRAVAGNOLA
Set Designer:Paolo FANTIN
Costume Desiner:Carla TETI
Lighting Designer:Alessandro CARLETTI
Chorus Master:TOMIHIRA, Kyôhei
Assistant Stage Director:KIKUCHI, Yumiko
Sage Manager:MURATA, Kensuke
Production Director:MAKIKAWA, Shûichi
Associate Production Director:ÔNO, Tetsuya

CAST
IL TABARRO
Michele:KAMIE, Hayato
Giorgetta:KITAHARA, Rumi
Luigi:HIGUCHI, Tatsuya
La Frugola:SHIOZAKI, Megumi
Il Talpa:SHIMIZU, Nayuta
Il Tinca:KODAMA, Kazuhiro
Due amanti:ARAGAKI, Yukiko SHINKAI, Yasuhito
Un venditore di canzonette:TAKADA, Masato

SUOR ANGELICA
Suor Angelica:KITAHARA, Rumi
La zia principessa:NAKAJIMA, Ikuko
La badessa:SHIOZAKI, Megumi
La suora zelatrice:NISHIDATE, Nozomi
La maestra delle novizie:TANIGUCHI, Mutsumi
Suor Genovieffa:ARAGAKI, Yukiko
La suora infermiera:IKEHATA, Ayumi
Novizia / Suor Osmina:CHON, Yong Ok
La prima conversa/ Suor Dolcina:SAKAE, Chika
La prima cercatrice:KOMATSUZAKI, Aya
La seconda cercatrice:KAJITA, Mami
La seconda conversa:NARITA, Yoshimi

GIANNI SCHICCHI
Gianni Schicchi:KAMIE, Hayato
Lauretta:ARAGAKI, Yukiko
Zita:NAKAJIMA, Ikuko
Rinuccio:SHINKAI, Yasuhito
Gherardo:KODAMA, Kazuhiro
Nella:KOMATSUZAKI, Aya
Betto:ÔKAWA, Hiroshi
Simone:SHIMIZU, Nayuta
Marco:KOBAYASHI, Daisuke
La Ciesca:SHIOZAKI, Megumi
Maestro Spinelloccio:KURAMOTO, Shinji
Ser Amantio:KATSUKI, Takeshi
Pinellino:YUZAWA, Naoki
Guccio:TERANISHI, Kazuma

Chorus:Nikikai Chorus Group, New National Theatre Chorus, and Fujiwara Opera Chorus Group
Orchestra:Tokyo Philharmonic Orchestra

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映画 「ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期」(監督:シャロン・マグワイア、2016)

2018-09-09 07:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズの第3作。原題は"Bridget Jones's Baby"。

 物語のリアリティ、ブリジット役のゼルウィガーのチャーミングさが魅力だった第1作からは15年を経て、第3作でも、40代となったブリジットをゼルウィガーがそのまま演じる。

 映画としては第1作に足元にも及ばないどころか、私的にはブーイング対象の作品だった。主人公の行動、心情に全く共感できない。まあ、私に40代の女性の気持ちなど分かるはずもないのだが、こんなもんなんですかねえ?

 ゼルウィガーの熱演は評価したいが、主人公の行動に無理があるので痛々しさを感じてしまう。

 映画サイトの読者評はそれなりのレイティングを得ているようなので、個人的趣味の問題かもしれないが、残念な映画リスト入り。


スタッフ
監督:シャロン・マグワイア
製作:ティム・ビーバン
エリック・フェルナー
デブラ・ヘイワード
ヘレン・フィールディング

キャスト
レニー・ゼルウィガー:ブリジット・ジョーンズ
コリン・ファース:マーク・ダーシー
パトリック・デンプシー:ジャック・クワント
ジム・ブロードベント:ブリジットの父
ジェマ・ジョーンズ:ブリジットの母

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ジャーナリズムについて考える硬派映画 「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」(監督 スティーヴン・スピルバーグ、2017)

2018-09-07 07:32:01 | 映画


 こちらもロードショーで観たかったが、機会を逸した作品。夏休みのロンドン行の機内で観れた。
 
 ベトナム戦争に関しての政府の情報秘匿に挑むワシントン・ポストのジャーナリストとその女性社主を軸に、ジャーナリズムについて描く社会派映画。監督はスピルバーグで、原題は"THE POST"。

 紙・ネットを問わずメディアに、いかさま情報・フェイクニュースがあふれるこの現代社会の中で、ジャーナリズムの役割、質とは何かを正面から問う本映画の意義は高い。真実を明らかにし、国民・市民にメッセージを伝えるには、志、勇気、コストが必要だということが良くわかる。今のジャーナリズムが何と軽く見える事か。

 メリル・ストリープ、トム・ハンクスという超大物俳優が演じるだけあって、作品全体の安定感は抜群だ。ストリープは父親から引き継いだ社主としての責任感を力みなく自然体で演じていた。

 最近では、新聞メディアを扱った映画としては「スポットライト 世紀のスクープ」(監督トム・マッカーシー、2015)があったが、それと同様に良質の一本である。



キャスト

メリル・ストリープ:キャサリン・グラハム
トム・ハンクス:ベン・ブラッドリー
サラ・ポールソン:トニー・ブラッドリー
ボブ・オデンカーク:ベン・バグディキアン
トレイシー・レッツ:フリッツ・ビーブ
ブラッドリー・ウィットフォード:アーサー・パーソンズ
アリソン・ブリー:ラリー・グラハム・ウェイマウス
マシュー・リス:ダニエル・エルズバーグ

スタッフ

スティーヴン・スピルバーグ:監督
ティム・ホワイト:製作総指揮
トレヴァー・ホワイト:製作総指揮
アダム・ソムナー:製作総指揮
トム・カーノウスキー:製作総指揮
ジョシュ・シンガー:製作総指揮
リズ・ハンナ:脚本
ジョシュ・シンガー:脚本
ジョン・ウィリアムズ:音楽



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映画館で見たかった・・・ 『グレイテスト・ショーマン』

2018-09-04 06:27:17 | 映画


 映画館で観よう観ようと思いつつ、機会を逸してしまっていた「グレイテスト・ショーマン」を機内で観ることができた。実在のアメリカの興行師P・T・バーナム(1810-1891)を描いたミュージカル映画である。

 批評家の受けは良くなかったらしいが、展開はテンポ良いし、ストーリは楽しく、流れる音楽・踊りは見ていて自然と体が動くウキウキする映画。

 ホンモノのP・T・バーナムはもっといかさまペテン師に近いらしいが、ヒュー・ジャックマンが演じたのは、夢と情熱を持ったリスクを恐れない魅力的人物だ。アメリカンドリームの体現者と言って良いだろう。脇役陣も光っていて、其々の個性を持つサーカスの芸人さんたちをはじめ、パーナム婦人役のミシェル・ウィリアムズ(どっかで見たことあると思ったら「マリリン 7日間の恋」の主演だった)、オペラ歌手役のレベッカ・ファーガソン(この人初めてでしたが、目茶綺麗な人ですね)、相棒ザック・エフロンなど、皆、存在感が凄まじい。

 俳優陣以上に素晴らしいのは歌。キアラ・セトルの"This is me”、"A Million Dreams”など、音楽の素晴らしさが堪能できる。

 あまりにも楽しいので、サンフランシスコから羽田への帰国便の中で2回も見てしまった。どこかの映画館でもう一度やってくれないかなぁ〜


タイトル:グレイテスト・ショーマン
原題:THE GREATEST SHOWMAN
製作年度:2017年
上映時間:104分
製作国:アメリカ

監督:マイケル・グレイシー
製作総指揮:
ジェームズ・マンゴールド
ドナルド・J・リー・Jr
トーニャ・デイヴィス
脚本:
ジェニー・ビックス
ビル・コンドン
音楽:
ジョン・デブニー
ジョセフ・トラパニーズ

キャスト
ヒュー・ジャックマン:P・T・バーナム
ザック・エフロン:フィリップ・カーライル
ミシェル・ウィリアムズ:チャリティ・バーナム
レベッカ・ファーガソン:ジェニー・リンド
ゼンデイヤ:アン・ウィーラー

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