教団「二次元愛」

リアルワールドに見切りをつけ、二次元に生きる男の生き様 (ニコニコでは「てとろでP」)

アニメーターの給料が低い理由はいかに (下巻)

2009-04-17 00:01:33 | オタネタ全般
(前回はアニメーターの給料が低い件について、アニメ製作会社の求人が少なすぎることに関して分析した。今回はアニメーター志願者が多すぎることに関して)



[2].アニメーター志願者が多すぎる

『アニメーターは1日15時間働いても月収5万円がふつうだ』

これは前回述べた。
アニメーターやるよりコンビニでバイトしたほうが遥かに儲かる。
にもかかわらず、アニメーターはコンビニのバイトとは比較するのもバカらしいほど非常に高い熟練技能労働を要求される。

経済学的な観点からだけ見たら、こんなことが起こりえるはずがない。
ケインズが見たらひっくりかえるかもしれない。

では、なぜこのような事がおきるのか。
経済学的な観点でムリヤリ説明すると、アニメーターという職につくこと自体にコンビニのバイトの賃金と同額のインセンティブがはたらいている、となる。
そして、コンビニのバイトは自分の労働力を提供するかわりに賃金を貰うわけだが、アニメーターは自分の労働力を提供して賃金以外の「何か」貰う、とでも言わないと説明できない。
「何か」というのをうまく説明できないのだが、ようは、人はマルクス主義者のようにイヤイヤながらに仕事をするのではなく、楽しんで好きな仕事をしたいのだ、というところに解がある気がする。

これは悪いことではない。
とある職につきたい人が多いというのは大変好ましいことだ。
現に、理系志願者は減る一方で、技術屋は不足する一方だ。それに比べれば何とうらやましいことか。

そうはいってもアニメ製作会社の求人がさして多くない以上、現状のようにアニメーター志願者ばかり多いのも、労働者にとって良い環境ではない。
さっきの例で逆にいうと、理系の院卒は求人のほうが多いので、労働環境はアニメーターほど悪くはない。(労働環境が良いかというとギモンだけど(笑))

では、どうすればよいかというと、アニメーターの労働環境が劣悪だということを世間に知らしめるネガティブキャンペーンを展開すれば、アニメーター志願者が減るので賃金は上がる。
しかし、100歩ゆずっても良い方法とは言いがたい。

他の方法としては、参入障壁を上げるという手が考えられる。
ようするに、アニメーターになりたくても簡単にはなれないようにするという方法だ。

例えば弁護士がそうだ。
弁護士でなければやってはいけない業務がいくつかある。
弁護士は司法試験に受からなければなれない。
司法試験に受かる人はほとんどいない。
ということは、弁護士でなければやってはいけない業務をこなしたいとき、司法試験に受かった超レアキャラを連れてこなければならず、どうやっても高い金つまないと来てはくれない。

アニメーターの場合は弁護士とは事情が違う。
弁護士や医者など独占業務の資格の仕事は他人の生命や財産を守らなければならないので、一定以上の能力がない人は排除しなければならない。
アニメーターの場合はそうではない。
だから、そういったやりかたで参入障壁を上げるのはムリだ。

アニメーターの参入障壁が低すぎるのは、絵心のある高校生でも雇ってしまうことに原因があるように思う。
たとえば研究開発職なんかでは、ふつうの理系の高校生をやとって一線級のエンジニアに育て上げるのはしんどいから、工学部系の院卒をやとってそこから一線級のエンジニアに育て上げる。
これを学歴差別だとか思ってほしくない。
ふつうの高校生と工学部系の院卒では専門知識や論理的思考能力に大きな差がありすぎてしまい、ハイテク企業にとっては低賃金でふつうの高校生をやとって一線級のエンジニアまで育てようというインセンティブが薄れるからに他ならないのだ。

だからアニメーターも、ほんらいならば専門の高等教育を受けた学生が平均的にそれだけの高い能力を備えているのが望ましい。
それだけの高い能力というのは、アニメ製作会社にとって低賃金で絵心のある高校生を雇って一線級のアニメーターに育て上げようという気がおこらないほどの専門能力という意味だ。
そうなればアニメ製作会社も高い金はらってアニメーション学科卒業生を雇いいれるので、必然的に労働者の給料も上がる。

これは教育の問題である。
アニメーターに関する専門の高等教育を施す学校、とくにアニメーション学科を備える美術系の大学に期待するところが大きい。

べつに美術系の大学の教育が怠慢だとか批判したいわけではない。
一般的な学問であれば、明治政府が早期に教育に力を入れていたこともあって教育にはかなりの歴史があり、暗記偏重だとか批判も多いが教育方法も確立されている。
ことアニメに関してはどうだろう。
高等の教育機関の歴史はおそらく10年とか15年くらいではなかろうか。
まだ教育方法や技能習得手順も試行錯誤があってもしかたあるまい。
批判に値するほど悪いとも思えんが、いくらか改善の余地があるのではなかろうか。

せっかく時間とお金をつかってアニメーション学科に入学してくれる前途有望なヤル気と希望に満ちた若者が多いのだから、安ければ高等教育を受けていない人でもいいから雇うとアニメ製作会社に思われているような現状を打破してほしいと願う。
アニメ製作会社にとっても優秀な人材を確保しやすくなるし、人材の定着率は上がるし、1人あたりの生産性も上がるし、教育にかける手間も幾分省けるし、悪いことは1つもない。
アニメ業界全体のためなのだ。