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昭和のプロレス:シャツを破かれるのが仕事です

2019-01-04 06:39:00 | 日記
不満の絶頂で反撃開始

 毎週金曜日は「甦れ!金曜8時の昭和のプロレス」、プロレス全盛時代のリングを
支えた脇役達を取り上げています。
年の初めの今週登場するのは、レスラーではありません。
ファンの非難を浴びながら、プロレスを盛り上げる為に体を張っていた名レフリーです。

 昭和40年代前半の金曜8時のテレビ中継で、メインイベントを裁くのは何時も
レフリー沖織名でした。
 1904年生まれですから、当時既に60過ぎ。
今でいうメタボ体型を太めのズボンとダボダボのTシャツで隠し、スローな動きで
試合を裁きました。
その様子は右往左往しているとしか見えませんが、実は試合を盛り上げる大事な働きを
していたのでした。

 当時のプロレスの図式は「正義の味方の日本人vs反則ばかりの憎き外国人」
その演出に必要なのは、馬場や猪木のヒーローと凶器を振り回す外人。
そして忘れてはいけないのが外人の反則に全く気付かない「呆けたレフリー」でした。
 馬場のタイツを掴んでマットに倒す反則、凶器で猪木を血だるまにする反則、いずれも
観客には丸見えなのに何故か沖は気が付きません。
何してるんだレフリー、凶器を取り上げろ!観客は叫びますが気付く素振りも見せません。
 ファンは外人の反則とレフリーの不手際にイライラが募るばかり。
不満が最高潮に達したところでヒーローの反撃が始まります。
凶暴な外人をなぎ倒し、ついでに沖を小突きます。
これを見てファンは溜飲を下げるのでした。

最高の決着

 沖を小突くのは日本人だけではありません。
時には外人勢が沖を襲います。
勝利を飾った日本勢が引き揚げたリングには、外人勢が取り残されます。
漸く息を吹き返して立ち上がると、目の前にいるレフリーに腹いせの暴行を浴びせます。
 派手に投げ飛ばされた沖は、誰もいなくなったリング上で破れたTシャツ姿を晒すのでした。

 このお約束の最高傑作がNWAチャンピオンのキニスキーが、馬場の持つインター王座に
挑戦した一戦でした。
最高峰NWA王者に負けは許されず、一方の馬場も防衛が至上命題です。
両者の顔を立てた上に観客をも満足させる試合の決着は、実に良く練られたものでした。
 馬場がキニスキーをリング中央でコブラツイストに捕えます。
逃げる手段を失って悶絶するキニスキー、とそこに沖が様子を窺おうと近づきます。
その瞬間キニスーは沖の襟首を掴んで引き倒します。
シャツを破かれた沖は反則負けを告げます。
 こうしてキニスキーに瑕をつけぬまま、馬場の優勢がファンに伝わりました。
次回はきっと馬場が勝てる、そう思ってファンは次の戦いを心待ちにするのでした。

 試合を裁き終えた沖レフリーはシャワー室に向かいます。
その胸の内は恐らくこんな具合です。
「今日も良い仕事ができた、ビールがうまいぞ。
おっとその前に新しいTシャツを請求しておかにゃ」

コメント
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