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日本の伝統文化2「浮世絵」 小林忠著 (山川出版社)を読む

2020-03-23 | 絵画

山川出版社70周年企画の「日本の伝統文化」シリーズ6巻の1冊。新年の日経の書評にも取り上げられていたが、ようやく手にした。
浮世絵が誕生するまで、浮世絵の本質、浮世絵のさまざまな受容者たち、浮世絵の主題、浮世絵の魅力の源泉の5章。
浮世絵については、それなりに知識があるつもりでいるが、気になった話も多く楽しめた。

例えば、

「浮世絵」という用語の話。「憂世」から「浮世」になった意味内容の変化について、浅井了意の「浮世物語」(1661or 1665)にあるという。「当座々々にやらして、月、雪、花、紅葉にうちむかひ、歌をうたひ、酒のみ、浮きに浮いてなぐさみ、手前のすり切りも苦にならず、沈み入らぬこころだての、水に流るる瓢箪のごとくなる、これを浮世となづくなり」。Floating Worldという訳もここからきているという。

「漫画」は北斎の造語だという。北斎漫画の序文に、半洲山人が「北斎が文化九年の秋にやってきて、牧墨僊の家に逗留し、約300図の略画を描いた。絵を描くことを学ぶ人々に手本になるはずだ。書名付けた「漫画」とは北斎自身の命名によるものである」が記しているというという。

師宣の「見返り美人図」の説明も成程と読んだ。箱書きは「半面美人図」。長い黒髪を折り返し結ぶ「玉結び」の髪型、赤い振袖の小さな花の地模様の上の菊と桜の丸模様の刺繍、役者上村吉弥が流行らせた「吉弥結び」に結んだ帯を見せるためのポーズだという。

また師宣の「歌舞伎図屏風」(東博)、「月並風俗図巻」(静嘉堂文庫)などは無款だが、小林先生は貴顕から注文画だからと推定している。

国芳の「人をばかにした人だ」などの「寄せ絵」、影と図がセットの「其面影程能写絵」は、「当時」のヨーロッパ絵画を参考にして書いた図だという。アンチボルドではないという。国芳が参考した原画と通じる参考図面が掲載されている。国芳は数百枚も西洋絵画を有していたいう。

広重花鳥画として「月に雁」(こむな夜が又も有うか月に雁 の句)のほかに「松の上のみみずく」(「三日月の船湯山してみみずくの耳に入たき松風の琴」の和歌)(海のみえる杜美術館所蔵)が紹介されていた。また記念碑的な広重風景画の第一作として洋風な画風の「(一幽斎がき)東都名所・両国之宵月」も紹介されていた。広重といえば月に雁は兎も角、保永堂版東海道五拾三次之内や江戸名所百景ばかりだが、「松の上のみみずく」や「(一幽斎がき)東都名所・両国之宵月」にも着目したい。

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