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【会津野】「海の牙」を読み、南九州の旅がしたくなりました

2016年08月09日 | 宿主からのブログ

おはようございます。旅人宿 会津野 宿主の長谷川洋一です。

昭和35年に出版された推理小説「海の牙」(水上勉著)を読みました。

私が産まれる前に起きた水俣奇病(この頃はまだ水俣病と言う名前はついていなかった)という現象が水俣市を中心とした不知火海周辺で起きていました。この奇病は、水俣市内で操業する化学製品製造会社による水銀の海への垂れ流しという公害が原因ではないかと推測されていましたが、これが書かれたのはまだ原因が特定されていない頃の話です。同様の水銀垂れ流しが新潟県鹿瀬町(現在の阿賀町)の工場からも起きつつあり、こちらは後に新潟水俣病として知られることになります。

2つの地域で同じ問題が起きる事を予想してか、小説では、水俣と新潟から1文字づつとり、水潟という地名が使われており、作者の社会観察の鋭さがうかがえます。

まだ公害の全体像が解明されていないにもかかわらず、企業としての補償問題や、地域住民の感情や行動などを取材し書き記した推理小説は、読み手に推理の面白さとともに、社会問題の解決に向けた方法を考える2つの視点を与えてくれます。

ここでの公害発生原因となった企業は純然たる民間企業で、他の企業との競争という面を持つことから、地域独占の東京電力の原発事故とは背景が少し異なっているものの、企業による補償問題などは昭和30年台とたいして変わっていないなという感想を持ちました。

あくまでもフィクションなので、水俣病を詳しく知るには更に文献をあたる必要があります。ただ、時代背景やその経過を知るにはかなり参考になる小説でした。

九州南部は、火山灰により農作物が育たない不毛のシラス大地から農地への開墾による入植から過疎化への変遷、水俣病、川内原発の設置・停止・再稼働・最近の鹿児島県知事による停止要請など、時代の暗部となってしまった社会現象がたくさん起きている地域であることを感じ、あらためて旅をしてみたくなってきました。

今日も素晴らしい一日を過ごしましょう。

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