おはようございます。旅人宿 会津野 宿主の長谷川洋一です。
2月24日のエントリーで【会津野】うなぎの怪を紹介しました。
同じ「会津ふるさと夜話」(小島一男著)から、昔話をもうひとつ。
「高田城の蛇妻」という話です。
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会津美里町の高田中学校のあるあたりに、むかし高田城があって、小俣右京太夫幸高というお殿様がおられました。
このお殿様がある日、狐狩りをしての帰り、雷神様のそばをお通りになりますと、突然馬がヒヒーンとないて棒立ちとなりました。危うく落馬しそうになったお殿様は慌てて馬を静めながら、馬が何に驚いたのだろうと思って夕暮れ迫る雷神様の方を見てみると、そこにはアヤメのように美しい娘が一人、しょんぼりと休んでおりました。
お殿様は、こんなに美しい娘は見たことがありませんでしたから、このまま此処に置き去りにして帰るのも心残りと、娘をお城に連れて帰って来られました。
日がたつほどに、お殿様はその娘が大変お気に召して、妻の座にすえてたいそう可愛がっておられましたが、娘もまめまめしくお殿様にかしづいて、幸福な日々を送っておりました。
ところがある日、戦争がはじまって敵が押し寄せて来ました。お殿様はたいそうご心配になりました。というのは、敵を防ぐために掘ってあるお堀があいにくと水が渇れていたからでした。城中では敵の防禦について、ご重役殿がよりより寄ってご相談をしておられましたが、その間にも敵はどんどん押し寄せてきて、今にも空堀を渡ろうとしています。と、その時。奥方様がしずしずとお堀の端までお出ましになりました。そして何やら呪文をお唱えになると、不思議や不思議、今まで空っぽであった堀にはみるみるがうちに水が溢れて来ました。堀の中ほどまで攻めて来ていた敵は、たちまちのうちに水に溺れて、一時の退却を余儀なくされました。
しかし敵もさるもの、いったんは引きさがったものの、態勢を整えると今度はお城を四方八方から取り囲み、火矢を放って火攻めにして来ました。これには城中なすすべがなく、お城はついに焼かれてしまったのでした。そして最後に城の落ちるとき、巨大な火焔と一緒に、一匹の大蛇が天に向かって登ってゆきました。
その後土地の人々は、そのときの蛇は、お殿様が雷神様からお連れになった奥方様だったと言い伝え、その化身がたたりをしないようにと普済寺を建てて、奥方様の菩提を弔ったのでしたが、この寺もやがてはすたれてしまい、今では布才地(ふさいち)という地名だけが残っております。
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さあ、このお殿様、かなりのナンパ師ですね。美しいから連れ去ったとは、現代だったら大変なことです。
美しい娘に化けていた大蛇は、お殿様につけ入って良い暮らしをしたいと思っていたならば、こちらも騙しをはたらいているので、これもダメですね。
たたりがないようにとお寺を建て弔ったのはよいけれど、それを守れなかったのも残念なことです。
本質を追求し、本質を知る。そうしないと、このようにすたれてしまう良い例のようです。
ちなみにここにでてきた中学校、いま子どもたちが通っています。
しっかりと実在し、そこでは、大蛇のようなことではない本質を持った先生方が教えていらっしゃる。
この本質的なものがすたれて中学校跡のようなことにならないよう、地域が考えていくことも大事ですね。
今日も素敵な一日を過ごしましょう。
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