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(会津野)旅の本質

2018年06月23日 | 宿主からのブログ

おはようございます。旅人宿 会津野 宿主 ならびに 古書 会津野 店長の長谷川洋一です。

昨日の宮台さん、旅にまつわる話しを聴かせていただきました。

2018年6月22日放送の「TBSラジオデイキャッチ」のニュースの中で、社会学者の宮台真司さんがおっしゃっていたことがとても良かった。

以下に文字起こしをしてみたので、ぜひお読みいただきたいと思います。

先に感想を述べますと、旅というのは「現代社会システムの外を見に行き、生きる力を得るのが本質」ということを実感したことが一番大きかった。

宿を運営するものとして、「安心・安全・便利・快適」を提供しようとばかり考えてしまうけれど、それは旅の本質から外れること。

近頃、我が宿の周りでは熊の出没が相次いています。これに対する対処をどうしようかと迷っていたのですが、「熊に遭わないように危険な場所には行かない」ではなく、「熊に遭ったらどうすれば良いか」ということを知ることををサポートするのが、旅人へのサービスの本質だと思った次第。

いろんな気付きを与えてくれる内容でした。

それでは、書き起こしたものをお読みください。

((片桐)、(強啓)は番組進行役のアナウンサーの発言、(宮台)のところが宮台さんの発言です)

★ ★ ★

(ニュース)日本人のクルーズ旅行、利用者が過去最多。前の年に比べ、27%増加。

(片桐)
国土交通省によりますと、2017年のクルーズ人口は、前の年に比べ6万7千人増化し、31万5千人となったことがわかりました。
この場合のクルーズとは、船の中で1泊以上する国内外への船旅のことです。
また、読売新聞では、料金を10万円以下に設定し、若者を呼びこもうとするクルーズ会社の狙いを紹介しています。

(強啓)
これが宮台さんの「気になるニュース」ということでチェックが入りました。
さて、その話を頂戴する前に、クルーズを楽しむ人口というのを見てみたいと思いますが。
確実に、着実に、増えているんですね。

(片桐)
みたいですね。
日本人のクルーズ人口全体は、6万7千人増えて31万5千人となりました。
そのなかで、スタート地点を含む旅のどこかで海外に出る外交クルーズ人口は、4万2千人増えて、19万7千人。
すべて国内の国内クルーズ人口は、2万5千人増えて11万8千人となっています。

(強啓)
はい。宮台さん。クルーズについては、どう見ておいでですか。

(宮台)
このニュースって言うのは、伝え方によって印象が変わるなと思いますね。
あるいは統計もそうだよね。
実は、今回の最も伸びしろが多いのが、1泊なんですね。
で、みなさん、クルーズって言うと、少なくとも1ヶ月くらいを考えるでしょ。

(強啓)
そうですね。長期って感じ。

(宮台)
ふつう、そうですよね。僕が乗船するピースボートだってね、全て乗れば3ヶ月以上ですよね。
しかしですね、なんとね、2週間以上って言うのは、シェアでいうと2.9%。
つまり、もしクルーズを2週間以上と定義するのであれば、3%いないので、その3%いいですか。クルーズするとされている人の3%ですよ。
だから0.2%(注:日本人の総人口におけるクルーズ人口の割合)の、そのまた3%なので、ほとんどいないと同じなんですよ。
でね、結局、この景気、ある種、なんて言うんでしょ、そのお祭り的に盛り上げるっていうことで、このニュース有るのかもしれないけれど、実態、あるいは、構造に注目するとね、若い人がやっぱりクルーズから離れているんですよ。
僕の言うクルーズっていうのは、1泊で釜山へ行くとか、2泊で上海行くとかじゃなくて、アジア一周、世界一周のクルーズです。
若い人たちがここから離れていると言う状況を、どう捉え、どういうふうに対処するのか、あるいはなぜ対処しなければいけないのかって話しを今日はしたいんですね。
たとえば、ピースボートという船で見てみると、昔、いわゆるバックパッカー系の人たちがたくさん乗っていた。
バックパッカー系の人っていうのはね、日常を離れて、たとえば、自分を試すとか、自分が知らない世界を見るってところに、最大のポイントがあったんですね。
ところが、このピースボートも、たとえば、今世紀に入ってからの状況、僕が乗船した限りで見てみると、まったく来客層が変わった。
バックパッカー系は、むしろもうほとんどいない。
日常をそのまま持ち込む人たちばかり。
もちろんね。不況、景気が悪いので、現役世代、あるいは、大学生とかはなかなか参加出来なくて、リタイヤ組が多くなっているんです。どこでもね。
そういう状況を念頭に置いたうえで見てもと、若者のメンタリティーの変化がかなり大きい。
僕がね、どういうところでそれを感じるのかっていうとね。
たとえば、アジアからアフリカにかけて、インドもそうだけど、トゥクトゥクっていうね、むかしから三輪車、自動三輪車に荷台をつけたみたいな。これがありましたよね。
これがとりあえず安いので、タクシー代わりに使うわけだ。でも料金がふっかけられるので、交渉しなきゃいけないし、ほっとくといろんな土産物屋に連れて行かれて、3個で千円とか言って、あるいは、タダだよって言って店に入ると、むりやり買わされたりとかして。

(強啓)
海外って、そういうところに遭遇すること。ありますよね。

(宮台)
まあ、それは当たり前だよね。僕に言わせるとね。
ところがそれでね。「もう二度とインドに来ない!」とか、「二度とアフリカに来ない!」とか言っているクズがいっぱいいるんです。若い人にね。
むしろね、日本みたいに、無防備でいられる場所っていうのは、世界でめずらしいっていうか、ないんですよ。
中国だってそうですもの。
交渉しないと、快適な買い物は出来ないわけだよ。
なのにそういう状況も知らないで、つまりね、僕に言わせると、いわばそういうバーゲニングにどう対処するのか、生存戦略だしさ、トゥクトゥクで連れて行かれるんだったら、Go straight まっすぐ行ってだとか、I will give you chip チップをあげるよ、でなかったら、たとえば、他の言い方でもいいけど、連れて行く人たちはお金が欲しくてさ、店に立ち寄るわけだからさ。
彼らをそういうふうにさせないように交渉すればいいんだよ。トゥクトゥクの運転手とさ。
それが知恵じゃん。
それなのに、「やっぱ、インドって最低ですよね」とかなるわけ。「最低なのはおまえだよ」っていうふうにいつも言ってました。
それで、ピースボートのスタッフにも、こういう人間たちがどんどん乗って来ると、国際親善ボートじゃなくて、逆になってんじゃねーの、という話しですよね。
ということでね、僕達バックパッカー世代は、やっぱり「自分探し」じゃなくて、「世界探し」あるいは、自分が甘やかされて、「生きる力を失っているいるんじゃないかな」っていうふうに考えて、それでバックパッカー的な旅行をしたわけだけど、今はそうじゃないんですよね。
乗船しても、安心・安全・便利・快適を求めている。
今言ったような「世界探し」じゃなくてね、「自分探し」を求めてるんですよ。
「自分探し」っていうのはね、今の自分の悩みにとって程よい刺激がほしいってだけだから。
結局、いいとこ取りなんですよ。
いずれにしても、テーマパーク化と、自分探し化。
テーマパークだったら、どこでもいいだろう。自慢したいためにやるんじゃなくて、ディズニーランド行っとけとかね、ディズニーシー行っとけでいいんですよ。
自分探しだったら、これもそうだよね。海外なんか行く必要無いじゃんね。
結局、本当は海外旅行なんかどうでもいい連中がね、海外に行く。
で、今回は、そういう連中たちが、1泊、2泊クルーズにどんどん繰り出す。
観光のカネを回すっていう意味では、意味が有るかもしれないけれども、昔からの旅の構造を知っている人間からするとね、これはぜんぜんダメな方向に来ているなと。
これは実はボイス(次の番組コーナー)につながる問題で、非常に重大なことなんだよね。
要は、程よい快適さしか求めない。「自分探し」しか求めないっていうのが、わかりやすく言えば、さっきの「生きる力が無い」ってことに通じることだけれども、人間としての幅も奥行きも、なんて言うんだろう、魅力が無いじゃん。
いろんなこと知ってるけど、いまのところは日本だからね、日本のシステムに合わせて暮らしてると。
たとえば災害が起こるかも知れない、災害があった時に、システムに頼らない暮らし、あるいは、システムを頼る代わりに仲間を頼る生き方に「オレ、いつでもシフトできるぜ」っていう奴がいたほうが、頼りがいがあるでしょ。
あるいは、自分がそういう存在だっていうふうに感じられたほうがいいじゃない。
そのためには、「自分はぜんぜんまだまだダメだな」と思って、トラブルに遭いに行くんです。
僕のよく言う話しね。
地球の歩き方は90年代の頭までは手記だったのね。
「どこどこに行くな!ヤバイぞ!」って書いてあると、僕なんか、行ったんですよ。
だって、みんな行った。それ読む人はね。
でも、このムックというか雑誌も変わって、結局そういう手記は全部削除されて、程よいガイドブックになったんですよ。
ヤバイところが書いてあって、「行くな」って書いてあったら行くでしょ。
それだったら、ヤバイところを書かない方がいいんだよ。
だから、そんなふうになってきちゃったんだよね。

(強啓)
だけど、いろんなところへ行って観光ルートとか、それから、ガイドブックには無いところを探して行って、出会うっていうのは、どんだけ面白いことだったんだよね。

(宮台)
ウヨ豚問題につなげるとね。そういうノイズも知らなくてね。程よいシステムの中でね、適度に甘やかされて生きた奴がさ。「右翼だ」とか言ってるわけでしょ。本当にクズだよね。何もわからない奴が「何言ってんのコイツ」。

(強啓)
私ごとで恐縮なんですけど、スイスへ行ったときに、団体から外れて自由時間があったときに、ちょっとした山間の農家のところへ行って、そこで自家製のチーズをたくさん作っているところがあって、そこのチーズを乾燥させているのが外から見えて、「すいませんが、そのチーズって、ぜひ一口食べさせていただけませんか」って言ってね。一緒に行った男二人でもって、チーズフォンデュ、自家製の。それが本場もので、ふつうの民家の、そこでのね。おいしかったよ。

(宮台)
強啓さん、大事なことをおっしゃった。
今から四,五十年前、僕がひとりで国内を旅行していた頃、それってありましたよね。
僕も、遠野へ行ったときに、貸自転車屋さんで、当時僕、中学生でしたけれども、「飯食っていくか」って言われて晩ごはん食っていきましたもん。
全く知らないところで。
飯食って行くかですよね。
そういうことって、ふつうにあったし、いろんなところで、いろんな出会いがあってね。やっぱりそれって、僕がいえば
法外、システムの外なんですよね。
前も言ったけれども、システムが良くなれば、あるいは、制度がよくなれば幸せになれるっていうのを、「左」って言ってね。それでは人間は絶対に幸せになれないっていうのを「右」って言うんですね。
それがこの2500年の本当の使い方なんですよね。
だから、システムの中でぬくぬくとしている連中がね、インターネットで「中国人はなんとかだ」って書いてあって、「中国人はなんとかだ!」って言っている奴が、本当のクズなんですね。

(強啓)
宮台さんの気になる項目、「日本人のクルーズ旅行利用者が過去最多」というニュース。そこから、あれこれと話しを頂戴いたしました。

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今日も素晴らしい1日を過ごしましょう。

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