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【会津野】中世の高田初市に出ていたお店

2016年12月07日 | 宿主からのブログ

おはようございます。旅人宿 会津野 宿主の長谷川洋一です。

昨日は【会津野】高田の大俵引きと初市を投稿しました。

今日は、1675年に高田の市立て方式が敗北してしまうまでのあいだ、高田の初市にどんなお店が出ていたのかを調べてみます。

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「中世商人の世界」(国立歴史民俗博物館編)には、このようにお店のことがまとめられていました。数えると上町は26職種なので、間違いがあるかもしれませんが、大方あっていると思います。

薬師如来を祀る下町(12店)からみていくと、畳・筵・笠縫い・蓑売りは名のとおりなので説明はいらないと思いますが、その他については次のような職業です。

「いたのごぜ」・・・ごぜ(瞽女)とは、眼病を患った女性たちが自活するために三味線と唄を習い覚え、米などの農産物と引き換えに芸を披露した女性のことを言います。

「傾城」・・・「けいせい」と読み、絶世の美女のことを言います。さすがに青空の元の市で身売りということはないでしょうから、美しい姿を売り物にしていたのかも知れません。

「白拍子」・・・「しらびょうし」と読み、歌舞をする芸人のこと。

下町では藁を編んだ品物と、芸能サービスを売っていたことがわかります。下町は会津高田駅に近いところなのですが、いまは芸能の面影はなく、ちょっと驚きに感じるお店の構成です。

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次に薬師如来を祀る上町(48店)を、衣食住に分類してから見てみましょう。

【衣】衣類の関する物・・・呉服、紺掻き、針

【食】食べ物・・・朱米、大豆、伊勢物(酢?)、塩、あい物(塩魚)、草物(海草)

【食】食器・調理用品・・・桧物、白器(木地)、ごき(御器)、土器(カワラケ)、鍋、釜、灰、炭

【住】その他生活用品・・・紙、弓矢、蝋燭、油、鍛冶、番匠、差笠、提灯、櫛


【衣】裁縫については、針屋があるものの、生地屋がありません。木綿生地を売る店があっても良さそうなものですが、染め物屋(紺掻き)がいるので、布を編むのは庶民自らが行い、染め物は職人の手を借りたのかも知れません。

【食】穀物や野菜などは、朱米屋と大豆屋しか見当たりません。朱米というのは想像なのですが、お赤飯のようなお祝い用のものだったのかなと感じます。農村であるが故に、米や雑穀、野菜などは、自家栽培していたのでしょうか。酢、塩、塩魚、海草は、高田では採れないものなので、他の地域から行商に来ていたのだろうと思われます。調理用品として、木の器(白器)や木の曲げ物(桧物)、漆などを塗った御器、釉薬を塗らないせともの(カワラケ)、鍋、釜など、台所や食卓で使う品々で賑わった様子が見えます。灰は、山菜のアク抜きに使ったのでしょう。

【住】明治11年に会津を旅したイギリス人女性のイザベラバードが、高田では紙漉きが盛んだったことを記しています。明かりを灯す蝋燭、提灯や油、狩りに使う弓矢、鉄加工の鍛冶屋、工芸品を扱う番匠、櫛屋など、日常の生活用品を扱う店も、大きな存在であったことがわかります。

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現代の初市では、起き上がり小法師と福を呼ぶ風車が欠かせませんが、それは番匠が扱っていたのだと思います。衣食住に関する生活用品の他で目につくのは、下町の芸能くらいなので、現代でいうサービス業の分野はほとんどなかったのでしょう。ただ、反対に農具を扱う店が見当たらないのが不思議に感じます。

昨日、文献として示した連釈之大事「修験山伏の市立図」では、60の店の他に「タンクワ屋」と「風呂屋」が下町の外れにあります。タンクワ屋というのは、鍬(くわ)を扱う農機具の店なのかもしれません。風呂屋が市に登場するのもなかなか理解し難いところですが、私が昨年ドイツで見たクリスマスマーケットに、箱蒸しのように温まるサウナ屋があったのを覚えています。そんなものかなとも思いますが、14世紀にそんなものがあったとも考えにくいし、謎が残るところです。

私は、立場として、観光を活かしたまちづくりの視点で物事を見ることが多く、どうしても、中世の初市を加工資源のネタとして見てしまいます。しかし、実状は暮らし中心のものだったようです。ただ、中世の行事を再現できたら、中世を体験できるというレアな観光資源になるかもしれないなどとも考えさせられました。

謎がたくさんある中世の暮らしですが、昔の様子をあれこれ想像するのも、楽しいものですね。

今日も素晴らしい一日を過ごしましょう。

【続き】→【会津野】中世の高田初市は「会津の初市」のなかでも独自のものだった

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