今回の旅の目的は、ポーラ美術館訪問が初めてという友人を案内することでした。
開催中の企画展のテーマが「自然と都市」。ポーラ美術館は印象派の作品収集で有名ですから、結構楽しみでした。
会場入り口には、会期前半の人気投票で一位のラウル・デュフィの「パリ」が展示され、ワクワク感を盛り上げています。パリの観光案内を一つの作品の中に朝・昼・夕がた・夜に分けて描いてあります。画材も楽しいのですが色がまた楽しさを増しています。「音楽が聞こえるよう」というコメントが添えられていました。
作品の写真は撮りませんでしたが、教科書に載っているような作品がたくさんあって、なんだかうれしかった(笑)
友人が最初のブースに展示されていたモネの風景画2点、「ジヴェルニーの積みわら」と「エトルタの夕焼け」を見て「近くから見るのと遠くから見るのとでは、雰囲気が違う。遠くから見たほうが雰囲気が出るというか温度まで感じられる」というので、二人で会場隅まで下がってみたり、逆に画面にぐっと近づいて筆のタッチを確認したりもしました。
確かにその場所の空気が感じられたような気がします。
夏の日差しを浴びた「ジベルニーの積みわら」からは、暖かい日差しと木立を渡る風、そのあたりから漂ってくる草いきれを感じます。「エトルタの夕焼け」は、日没のベストタイミングを狙う気持ちも感じられるし、ひんやりしてきた空気はもちろんのこと今から闇に向かう覚悟のようなものも感じました。
入場者が少ないので、このように好き勝手に3時間近くもかけてじっくり観賞しました。
実は、もう一つの楽しみもあって、それは2013年にオープンした遊歩道を散策することでした。
富士箱根伊豆国立公園内という立地です。ヒメシャラやブナなどの落葉樹林の間に枕木の歩道が敷き詰められています。
こんなに大きなヒメシャラはなかなか目にすることはできません。
ブナも世代交代するときがあるのですね。たくさんサルノコシカケが!
本当にサルが腰かけられそうです。
こんなに元気なブナの木。
せせらぎもあります。
かわいい彫刻が、木漏れ日を浴びて林の中にありました。
こうして「建物外の自然林」と「建物内の美術品」を両方楽しんで、ふと思いました。
今日のテーマは「自然と都市」でした。美術館の内部では、例えテーマが「自然」であったとしても「人間の活動の結果」が展示されています。画家たちが感動のたねをキャッチし、表現方法を模索し、たゆみない努力や斬新な工夫を駆使して作品を完成させていく…それを企画し継続させていくのは、まさにその画家たちの前頭葉です。
そして、画家たちの前頭葉の働きを追体験するのは、どこまで体験できるかはさておき、私の前頭葉。
モネの二点の風景画が私たちを迎えてくれました。その時に様々な思いが湧き上がったということは、私がそのような体験をしたことがあるということなのです。幼い日に、祖母の待つ田舎に行ったときの汗ばむ陽射しや緑の稲穂、風呂を沸かす柴のにおい…あの日の体験が、今日のモネの「ジベルニーの積みわら」の観賞につながっているなんて!
前頭葉は単なる知識ではありません。
体験して刻み込まれたもの、私の来し方人生そのものといってもいいと思います。これからも心して、元気な前頭葉であり続けたいと思いました。
そして又思いました。
自然に対した時も、その緻密さや偉大さ、絶妙のバランスに対して、芸術作品を見るときと同じように自然の中に身を置いた人たちの前頭葉は動き始めなくてはいけないのではないでしょうか?
じつは、圧倒的な自然に対峙した時には、「うまくいえないけど」とか「絵にも描けないけど」とか言いながらほとんどの人は感動しているものです。間違いなくその自然からの情報を受け取っている場合には、うまく言葉にできるかどうは別にして、前頭葉は活性化されているものです。
今度のポーラ美術館への小さな旅は、脳活性化には大きな効果を与えてくれました!遊びは大切ですね。
箱根を象徴するヒメシャラをもう一度。
もちろん、絵画にも景色にも感動はしますが、「おいしいもの」にも私は感動できます。
芦ノ湖畔のレストラン「ベーカリーアンドテーブル箱根」でランチ。
テーブルに青空が写っています。
3月上旬の箱根は、富士山も芦ノ湖も清廉な美しさで迫ってきました。