脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能と症状をリンクさせた物差しから認知症をとらえる!具体的に認知症予防を考える。

世界アルツハイマー大会

2017年05月17日 | エイジングライフ研究所から

ベネチアの仮面舞踏会に行ったことはありませんが、それぞれが仮面や衣装でいろいろな姿になって町中を練り歩くと聞いています。
仮面の下はみんな人間ということは、明白な真実とみんなが承知しています。
この下の写真は講演で使います。注目してください。仮面をとったら「アライグマ」ではなく「ネコ」が混じってますよ!

閑話休題
4月末に、京都で国際アルツハイマー大会が開催されたというニュースをききました。ちょっと気が重くなっています。
何度かこのブログでも書きましたが、もちろん認知症にはいくつかの種類があります。
まだ痴呆という言葉だった時代のことです。日本は国際的に見てたった一国、脳血管性痴呆が突出していると言われていました。その頃脳血管性痴呆の占める割合はなんと70パーセントだったのです。
だんだん、その割合が減ってきて、今では30パーセントくらいと言われることが多いでしょう。
エビネ

なぜ日本が突出していたか、お話します。
ボケ症状が出ている人で、脳卒中を起こしたことがある人の場合は疑問もなく「脳血管性痴呆」とカウントしていました。
実はこれは間違いなのです。真の血管性認知症は、脳卒中の後遺症そのものが認知症の症状でなくてはいけません。後遺症そのものが認知症といえる激しい記銘力障害と見当識障害を起こすタイプの脳卒中は非常に稀です。
脳卒中を起こして、起こした方の片側にダメージを受けたとします。それは半身不随のような重いダメージであったとしても、後遺症であって、脳全体の機能低下が条件の認知症の定義から外れます。
ただし、左脳や右脳に、繰り返し卒中を起こせば後遺症が脳全般に及ぶことになって、それは認知症と言わざるを得ませんね。それでも数%どまりでしょう。

血管性認知症といわれるものの大部分は、脳卒中後にその後遺症に負けて「趣味も生きがいも交遊もなく、運動もしない」ナイナイ尽くしの生活を続けるうちに、脳卒中を起こしていない方の脳機能まで機能低下が起きて、その結果脳機能全般の機能低下をきたしてしまったものなのです。これはアルツハイマー型認知症そのものです。
専門医の方が「血管性認知症は、卒中から半年くらいたってから症状が起きてくることが多いのです」といわれていることを聞いたこともあります。
日本は民度が高いというか、文化レベルが高いというか脳卒中の既往を見逃すはずがありません。そのために脳血管性痴呆のの割合が突出してしまったということなのです。
一碧湖の丁子草群性

テレビなどでセンセーショナルに取り上げられる「手術で治る認知症」とは、頭を打った後にじわじわと血液がたまって脳機能が落ちている状態の「慢性硬膜下血腫」と脳の中の脳脊髄液が循環不全をおこし、その脳脊髄液が脳を抑えて機能低下を起こした「正常圧水頭症」です。この二つは確かに劇的に改善します。
ただし、このタイプは脳血管認知症よりもさらに少ないし、何よりあまりにも急(たかだか数ヶ月)に起きてくるという特徴があります。
丁子草

それよりももっと珍しいタイプが、遺伝子異常によるアルツハイマー病。これは遺伝子異常を持って生まれてくるので、若い年齢で発病し進行もとても早く、また治療もありません。1-2パーセントしかないと思われます。
以上はひとくくりにして「認知症」ということにしても、何の問題もありません。
白花タツナミソウ

しかし、「世界アルツハイマー大会」で「認知症」とされている中ではっきりと区別すべきタイプがあります。このタイプは「認知症」ではないからです。記銘力障害があって、とても似ているけれども別物「側頭葉性健忘症」です。
あたかも仮面をとったら「アライグマ」ではなく「ネコ」みたいに!

私が問題にしたい発表者の方々の紹介ページです。生き生きと社会に向けて改善情報を発信し続けてる「認知症」の方々。
http://www.adi2017.org/ja/plenary-speakers/%E5%85%A5%E9%96%80%E8%80%85
2004年の大会で、54歳の認知症者の方が「認知症者本人の思いを語った」ことが、国内だけでなく世界を変えたことになっています。
オーストラリアの政府高官だったクリステーン・ブライデンさんは46歳の時に「認知症」と診断され、その後「私は誰になっていくのーアルツハイマー病者から見た世界」を上梓し、この流れも「認知症者自らの発言」が可能であるという大きな誤解を世界に蔓延させてしまいました。

詳しくは以前ブログに書きました。認知症の人が心情を告白する?-映画「アリスのままで」やテレビ特集番組への疑問
認知症
の介護をした人たちは「考えられない。全然違う」と声を揃えます。
「若年性アルツハイマー病』と診断され、その実「側頭葉性健忘症」の方の講演会に行ったときに会場に流れた「このどこが認知症なの?」という怪訝な雰囲気が忘れられません。「若年性アルツハイマー病?」
キツネノボタン

ぜこんなことが起きるのか、本当に不思議でした。ちょっと考えてみて分かったのは
1.専門家は重度の認知症の方を見ることがほとんど。
そのときに訴えられる症状は、ひどい見当識障害(今何時か、ここはどこか、目の前の人場合によっては本人までも理解できていない)。ご飯を食べてないと訴えたり、物とられ妄想など記銘力障害もひどいものです。もちろん表情もないし(重度の認知症者の家族からは「よく目が死んでる」といわれます)動作も機敏ではありません。
2.認知症の診断基準では記銘力障害は必須症状。
3.眼前の患者さんは、記銘力障害ははっきりある。
例えば、初対面の挨拶を済ませて直後に退室、すぐに戻ってきたらまた初対面の挨拶をする。何度も同じことを確認する。自分の作品を(作ったことを忘れて)絶賛する。本当に理解した反応をするのに、すっかりそのことを忘れてしまう。
記銘力障害はあるのに、表情といい態度といい全く正常。気配りはできるし、恥じらいはあるし、困惑している様子が強く伝わる。動作は機敏、発想は豊か。おしゃれも自らする。生活の中での種々の工夫もみられる。
名前不明。トリトニアだそうです。

専門家はこう考えたのでしょう。
「いつも診ている重度の認知症の人たちとは全く違うけれど、認知症の必須条件である記憶障害ははっきりある。これこそが認知症の初期に違いない。アルツハイマー型認知症(の初期)」
年若い人の場合は「若年性認知症」と診断名が出ます。
繰り返しますが、これは間違いです。
「アルツハイマー型認知症」の初期は、記銘力障害に先だって、意欲がない、テキパキできない、発想が湧かない、言われなくては何もしない、いつもボーとし居眠りをしたりする、などの症状が必ず見られます。
言い換えれば先にあげた「表情といい態度といい全く正常。気配りはできるし、恥じらいはあるし、困惑している様子が強く伝わる。動作は機敏、発想は豊か。おしゃれも自らする。生活の中での種々の工夫もみられる」というようなことは全くできなくなっています。
そのとき、家族は「徘徊や暴力などのレベルの認知症ではないけれど、ボケ始めたのではないか?」とちらっと心配しながら「おじいさんじゃないみたい」「おばあさんはこんな風ではなかった」などと訴えることになります。
姫ウツギ

これは正しく認知症の始まりです。エイジングライフ研究所が言う「小ボケ」。3年たつと「中ボケ」になり、6年たつころに「大ボケ」つまり世の中で言われるような認知症のレベルに到達するのです。
「アルツハイマー型認知症」の初期と「側頭葉性健忘症」を見分ける方法はあります。しかも簡単な方法です。
「脳機能から理解する」特に前頭葉機能から理解することです。
「アルツハイマー型認知症」は初期から、前頭葉機能がうまく働いていません。それに続いて記銘力障害が起きてくるのです。
「側頭葉性健忘症」は前頭葉機能はきちんと働いています。記銘力障害はありますが。
こんなに簡単なことですが…
そして介護の経験がある人には自明のことなのですが…
世界中の誤解をどう解けばいいのでしょうか!


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