脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

小布施町講演会ー若返りは、脳が決め手!(認知症は防げる・治せる)

2017年09月20日 | 認知症予防講演会

小布施町にはもう10年以上も通っています。
今回初めて「演題を変更してもいいですか?」との打診がありました。「若返りは、脳が決め手!」そしていつもの演題「認知症は防げる治せる」を副題にということでしたから「問題はありません」と答えながら、添付されているチラシ原稿に目をやると、おしゃれなレイアウトでしたからまず感心。そして写真を見てびっくり!20年位前の写真が使われていました。
「じゃあ、写真の言い訳をしながらテーマに沿って話すことにしましょう」

30年も前になるのですが、講演を始めたころは、同じ講演にならないように気を配ったものです。順番を変えたり、エピソードを変えたりだけでなく、講演の骨子も変えていました。歌手の大津美子さんは私の友人なのですが、ある時とても素朴に「本当に一番いいものって、いろいろあるものなの?初めてボケのことを聞く人にわかりやすく話すんでしょ?何だか決まってるような気もするけど」と言われました。
文字通り目からうろこ。同じことを話すというのは、そうですね、何だかちょっと恥ずかしいものがあります。だから自分中心に考えて毎回違う講演をしていたような気がしてきました。認知症の90%を占めるアルツハイマー型認知症の予防や改善について話すのですから、流れがあります。
 認知症は一夜にして完成しない。
 脳機能の説明。
 前頭葉にも、他のからだの部分と同じように老化がある。
 何らかのきっかけで生活がナイナイ尽くしになったときに、老化が加速する。
 そして小ボケ・中ボケ・大ボケと進行する。
 認知症三段階の説明。
 改善法。
 認知症予防教室。
 財政的なこと。

今回は全く変えてみました。
「脳機能にも老化がある」ということは、体力、聴視力、骨や筋肉、内臓機能が年齢とともに老化が進むのと、もっとわかりやすくいえば、見た目が年齢に沿って変化するのと同様というところから話すことにしました。小布施は何十回も講演に行っていて、お顔なじみの方々も多いし、なんだかふるさとのような気持ちもあってこんなスライドを作ってみました。

「20年も前の写真を使って詐欺っぽくてごめんなさい」と言ったら、会場からは笑いがこぼれました。
いまテレビで結構有名な連続ドラマ「やすらぎの郷」。芸能界で生活してきた人たちだけの老人ホームでのお話。出演者が実物の俳優とオーバーラップする興味も計算ずくでしょうし、舞台が近所の川奈ホテルというおまけまでついていますから、私も時々見るのです。先日は川奈ホテルに行ってみたら大きなポスターがありました。それも使用。
いくら若く見えるにしても、相変わらず美人であっても、取った歳は取った歳。老化曲線は免れません。(左半分は各写真に対応した年齢)

舞台の一つ、川奈ホテル。

たとえ美男美女で一世を風靡した俳優であっても、例外はありません。俳優ですから、若々しくあるための工夫や節制はもちろんしているでしょうが、若い時よりも齢をとって見えることは否定できないでしょう。
このように「見た目」が齢とともに老化を加えていくように、体力、骨塩量、筋肉量、視力聴力、内臓機能、免疫力などなど、私たちの体に例外はなく老化の一途をたどります。それは脳力であっても、です。

ここで大切なことを確認しておきましょう。
測れるものが加齢とともに低下していくという事実は、人としての価値がさがっていくことを意味しているのではありません!若い時と比べてしわが増え、しみが増え「見た目」が歳とったとしても、私が生きた歳月は私を育ててくれました。かけがえのない体験を重ねることができました…

実は脳が若々しい人は見た目も若いのです。私がお会いして、脳機能検査までしたかくしゃく超百歳の方々です。


実は、もう25年以上も前の話ですが、きんさんぎんさんのデビューの1年前。超百歳老人の調査をしました。

東京・神奈川・静岡・愛知の超百歳老人819人を対象にした調査でした。ちなみにこの1991年、超百歳老人は全国では3,625人。つい先日発表された2017年は67,824人でしたね。これだけの高齢社会なのですから、かくしゃくと生き抜いて来られた方たちの生き方を学ぶ意味は大いにあるでしょう。
かくしゃくというのは脳が同年齢の人たちに比べて若いレベルを保っているということです。そのとき年齢よりもはるかに若く見えます。

かくしゃく百歳調査の結論をお話ししました。
アンケートからお元気な方を選び、71人に家庭訪問しました。脳機能検査まで行い、本当にかくしゃくとしている方たちの生活を伺ったところ、
「生きがいがある。趣味や楽しみごとがある。人づきあいが好き。運動の習慣がある」ということが分かったのです。予想はしていましたが、あまりにも予想通りだったことにちょっと唖然としてしまいました。
アルツハイマー型認知症になる条件、「生きがいなく、趣味なく、交遊もなく、運動もしない。いわゆるナイナイ尽くしの生活」の対極です。

この両方のグラフから、脳の老化曲線をコントロールする正答がはっきりします。
老化を早めるには脳全体を使わなければよい。老化にあらがうためには脳をよく使う生活を心がける必要がある。
「体の健康を守るように、脳の健康も守ってください。三頭建ての馬車を動かし続けるのですよ」
「ただ、長生きをすることが目標でしょうか?自分らしく脳を元気に保って生きていきましょう」といつもの、これは私の心からのエールです。
ここで会場にマイクを向けて「脳を使うってどういうことでしょうか」と尋ねてみました。
初めて参加された方は「難しいことを考える」との回答で、これは確かに左脳と前頭葉の連係プレイです。
もう一人の男性は「銭勘定」。これは左脳中心ですが、あとで「受け狙いだったでしょ?」とコメントしたら破顔一笑されていました。「こういう対応ができるということは前頭葉がイキイキと関与した証拠です」という解説にも笑いながら肯いていらっしゃいました。
ちょうど目の前に昨日の林・中扇教室の皆さんが。
ここからの回答は「自分らしくプライドを持って生きる」まさに前頭葉。
「みんなと集っておしゃべりをする」「楽しいことをする」「歌を歌う」さすが!右脳が意識されています。
「運動する」の回答もあったと思います。こういう時にも、長く認知症予防活動を続けてきた成果が垣間見えると思うのです。認知症を脳機能から理解することが自然にできているのですから、素晴らしいことですね。

脳の健康は自分で守ることが原則ですが、集団の中でしか発揮できない脳の機能もあります。地域全体で脳の健康について考える場こそ、脳のリフレッシュ教室。正常な人たちが正常なままにいるための教室なのです。(小ボケレベルまで参加可能)

一番大切なことは自主活動が必要条件というところかもしれません。高齢者人口が多いこと、世話をするスタッフが足りないこと以前に「脳は使ってナンボ」ですから。死ぬときまで、脳の健康に気を配る必要があるのです。だからみんなで。

小布施町にはこのような数値で表されるデータもあります。皆さんにもお見せしました。

前日お会いした市村町長さんと、このようなデータに対して、この10年余の認知症予防活動の成果だともっと自信を持ってもいいのではないかとお話しました。
(今日の画像は、全部小布施町で使ったパワーポイントからの転載です)
最後に、最初に始まった山王島地区の当時の会長さんI井S松さんご夫妻のツーショット。講演会の出口でパチリ。80代半ばにはおなりだと思いますので、確かに白髪は増えられました。でも、この表情を見てください。脳はお元気ですよ。いつものように「See you again」と握手をしてお別れしました。どうぞお元気で!


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