脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

認知症高齢者が140キロで高速道路逆走はムリー「やすらぎの郷」8/21~22放映

2017年08月22日 | 正常から認知症への移り変わり

「やすらぎの郷」というテレビドラマをご存知ですか?
私の家から車で10分ちょっとのところにある川奈ホテルが舞台になっていると聞いたので、それを知った時から見ています。
マスコミ関係で仕事をした人たちの、老人ホーム。そこでおきる様々な事件をドラマ化しているのですが、演ずる俳優さんたちがその役柄とオーバーラップするおもしろさもあります。

舞台が老人ホームなので、認知症がらみの問題提起や解説が時々なされます。「ちょっと違うけど…」と思うこともありますが、昨日今日の放映に関してはちょっと訂正しておきましょう。
そうそう、今日の午後川奈ホテルにお茶をしに行きましたのでその写真も。玄関の車寄せ

運転免許証の高齢者講習会のシーンから始まります。
講習会会場で、聞こえているのかいないのか大きな声で聞き返す岡林谷江さんという女優さん。「歳をとったら耳が遠くなるから」と思うでしょうが、聴力の問題だけならば講習会会場で傍若無人に聞き返したりしません。つまり認知症がらみという複線でしょう。
案の定、実技講習では赤信号無視も起こし、免許更新ならずという展開です。
『免許証が更新できなくてよかった。あれじゃあ運転は無理だね」というセリフもありました。この女優さんは認知症という設定なのです。認知症ならば、前頭葉機能はフルには機能できていません。
パーラー

帰りのバスへ移動するシーンは、この状態の脳機能からみるとちょっと無理があります。
免許更新ができないことを怒りながら歩いているのですが、あまりにも態度、動作がキビキビしすぎ。言葉の応酬も打てば響くようでキレッキレすぎ。認知症になると小ボケ段階でも、動作がモタモタしてきます。言葉の応酬はもちろんできますが、反応がもたついたり、すこし的外れだったりすることはよくあることです。
ロビー

そしていよいよ高速道路の逆走事件が勃発します。
多分90歳くらいかという設定のこの女優さんが、ハマーに乗って140キロで逆走。パトカーの制止も聞かず、スピンターンという高度な運転技術を駆使してしばらく逃走という設定でした。人にも車にもかすり傷ひとつつけず!
いまこのドラマで設定されている脳機能から言って、これはありえません。
高速道路の逆走事件はそのほとんどが、認知症がらみでしょう。このブログでも何回か認知症になった人たちの運転についてお話してきました。
認知症高齢者による事故防止の鍵は前頭葉検査

ロビーとパーラーの間のお花

上のブログでも触れていますが、小ボケになった方の運転する車に乗った家族の訴えで一番多いのは「スピードが遅すぎてこわいんです」なのです。
前頭葉機能は年齢とともに老化をしていきますが、小ボケというのは正常な老化を超えてしまっている状態です。脳の司令塔でもある前頭葉の働きは、多岐にわたります。その中でも重要な注意集中力と分配力は、小ボケになると早い段階から十分には機能できなくなります。
一方で、まさにこの能力を使って車の運転はするものです。
自分の運転だけにしか注意力が向いませんし、テキパキさも落ちていますから、その結果は周りの車のスピードとは無関係にマイペースでゆっくり運転し、同乗している人が「スピードが遅すぎてこわいんです」と思うという訳です。
パーラーの飾り棚(館内にはロートアイアンの飾りがたくさんあります)

この女優さんの設定を、「カーマニアで、若いころから外車だけを乗り続け、取り巻きにはカーレーサーがいつもおり、そしてプライド高い人」としてあります。この生き方を決めるのが、前頭葉なのです。
そんな人だから(そんな前頭葉の持ち主だから)、高速道路を逆走するときに140キロ、見事なバックスピンをこなすレベルの運転技術、という流れなのでしょう。
ところが、講習会場で、認知症ということをアピールしたように、この女優さんの現在の前頭葉機能は万全ではありません。その前頭葉機能で運転をしたらこのような顛末はあり得ないのです。
運動野に麻痺を引き起こすような損傷があれば、今までのように普通には動けないのと同じです。

付録
最後のところで「認知症と、高齢者に頻発する普通の物忘れ」の差についての会話がありました。「記憶の箱があって、容量があるので齢をとって足りなくなると、神さまがいらない記憶から消え去らせてくれる、これが(高齢者に普通に起きる)物忘れ。記憶の箱が腐って崩れるのが認知症」といっていました。
これは「物忘れはボケの始まり」というのと同じように間違い。
だいたい、昔のことはよく覚えていて、最近のことが覚えられない。でしょ?その差は、簡単に区別できます。
前頭葉が、正常に機能していれば単なる齢のせいなのです!

物忘れと前頭葉の話
んなのもありました。途中でgooブログに変わったのでレイアウトが変ですが、カテゴリーの「前頭葉の働き」を開くといっぱいあります。認知症のことを考えるときの鍵は前頭葉機能ですよ。こういうエピソードも記憶力の問題ではなく前頭葉機能の問題なのです。
一人で笑うのも
大失敗の巻き

 


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