脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

「体の健康」と「脳の健康」

2024年02月14日 | エイジングライフ研究所から
の最後の段落は、認知症だけが予防的福祉の対象になり得ると主張しました。2022年度の介護費用トータル11兆2千億円と認知症を関係付け過ぎと思われた方がいるかもしれません。

認知症が介護が必要となった原因では認知症が一番多いことは多いのですが、それでも20%弱ではないかという声がきこえてきそうです。
今日は少し違う視点からお話をしてみようと思います。
私たちの主張は、一言で言えば認知症は脳の使い方が悪いために起きる生活習慣病であるということです。脳をイキイキと使わない、特に状況を判断し自分の行動を決める前頭葉の出番がない生活こそ認知症を生み出すものだと思います。いわゆるナイナイ尽くしの生活、生きがいも趣味も交遊もなく、運動もしないで家に閉じこもっているような生活こそ、認知症にとっての元凶です。
明日の小布施に備えて長野前泊。善光寺。
アルツハイマー型認知症の方々から直近の生活歴を伺って行くと、ナイナイ尽くしになるきっかけをどの方も持っています。
前頭葉機能だけが老化を加速している人たち(小ボケ)はきっかけを自覚し、説明することが可能です。ほとんどの場合、それは3年以内に起きています。(小ボケの期間はだいたい3年間)
前頭葉に加え、脳の後半領域のいわゆる普通の認知検査が低下してくると、本人には生活が困難になっているという気持ちがないし、もちろん自分の生活がどの時点でナイナイ尽くしになったのか説明はできません。家族に生活上の変化が起きたきっかけを聞くと、4〜5年前の「あのできごと」に気づくことになるのです。
仁王門

阿形金剛力士像(高村光雲・米原雲海作)

吽形金剛力士像(同上)

たくさんの方のお話を聞かせていただきました。
大きく分けてみると、それまで生きがいだった仕事がなくなる。病気や怪我。親しい人との死別や生別。心配事トラブルなどの勃発。老老介護などの楽しみのない単調な暮らしなど。
きっかけは、起こったそのことや状況が当人にとってはとても大きなショックだということを理解しなくてはいけません。
確かに同じ状況が起きても、それに負けずにまた新しく前を向ける人もいるのです。
でも目の前にいる脳を老化させてしまった人は、そのできごとがその人の生きる意欲を削いでしまうのです。心が折れたという表現が適切な気がします。何もしたくないという場合もあるでしょうし、何に対しても心が動かないというほうが適切な場合もあるでしょう。
山門







上にあげた「65歳以上の要介護者の介護が必要となった主な原因」のグラフに戻ってみましょう。
脳卒中、心臓発作、関節疾患、骨折などなど。このようなことが起きてしまったとき…
将来に目を向けてリハビリをがんばったり、日常生活の注意点を理解して前向きに生活を組み立てることができる人は次第に認知症になっていく恐れはありません。
がんばろうと思える人は大丈夫!
六地蔵

でも、そういう方ばかりではないことには、すぐ気づいてくださいますよね?
高齢期になって病気や怪我などが起きるとそれをきっかけとして脳が正常老化にとどまらず加速していく、つまり認知症になっていく人たちがあまりにも多くいます。そしてそれは「病気(や怪我)になったのだし、高齢だから無理はさせられない…」と妙に認めてしまう風潮を、私は憂えます。
その病気や怪我に対する働きかけだけでなく、認知症予防の働きかけも必要なのです。
まず病気や怪我というとんでもない災難に会いました。これは避けられなかったわけですが、その後の生活ぶりによっては、本人が望んでもいないし、周りの介護を担当する方々にとっても大変な認知症という状況を生んでしまうということに気が付いてほしいのです。これは避けることができる災難です。
介護が必要な状態の時、脳機能が正常であれば介護者が如何に楽に介護ができるか…介護者の心身にも経済的な面でも、介護される側の脳機能が正常であるかどうかは大きな差を生みます。介護していらっしゃる方々からの声にも耳を傾けてみてください。
「体の健康」に対する教育や指導、最近は疑問も投げかけられていますが検診などが徹底されて、世界に冠たる長寿国になった日本。
次のステップとして「脳の健康」への興味や関心を引き出す必要があります。
皆が本当に望んでいるのは「体の健康」だけではありません。そこには「脳の健康」が必須…
「脳の健康」に関する健康教育。認知症を防ぎうる脳の使い方をみなさんに知ってほしいものです。
年齢に関わらず、どのような状況下にあっても、前を向いて、楽しい生きていることの意味と喜びを、今見つけられなくとも見つけていい、今見つけられなくても見つけるべきだという励ましが必要です。
なぜならそれこそが「脳の健康」を生み、認知症予防につながることだから。自分のためだけでなく、家族のため、国のためになることだからです。






コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。