5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

サバ戦争が始まるのか?

2011-01-20 23:50:28 |  経済・政治・国際
空弁で一躍有名になった鯖街道若狭の「焼きサバ寿司」は、駅弁として名古屋駅などでもよく見かける。「秋サバは嫁に食わすな」というくらいだから、旬は秋なのだろうが、「寒サバ」という云い方もあるから今の時期にも美味い鯖が食べられるのだろう。もっとも弁当に使われるものは、ノルウエーあたりからの輸入ものでないとコスト割れだろうから、もはや鯖の旬などあってなしということかもしれない。

そんな輸入もののサバ漁を巡って北大西洋では喧嘩が起きそうだというニュースが、BBCモバイルで読める。「英国北東部、オークニー諸島・シェトランド諸島」欄というのだから、さしずめ全国紙の「北海道版」といったところだろうか。

14日付けで「EU、アイスランドに対するサバ漁禁止の警告」というリードである。

アイスランドの漁船が運んでくる北大西洋のサバの陸揚げを、漁獲割合(クオータ)についての合意ができるまで中止しようとEUが動いているというのだ。EUの相手は、大西洋上の島国、アイスランド。2008年の金融危機で経済危機状態にあり、去年は氷河火山の噴火が世界の空の旅をマヒさせるなど、このところ世界的な話題を提供し続ける国である。

どうやら、このシーズンはアイスランド近海がサバの豊漁期に当たっているようで、2010年には130000トンだったアイスランドのサバ漁獲クオータを、2011年には146818トンに増やすと、先月一方的に宣言したことが、スコットランドの漁業関係者の怒りを買っているという図式らしい。「さばを読むな」というわけだ。

「漁業のサスティナビリティを保障するためには、サバ資源の総合的な管理が必要で、アイスランドもEU側も、関係者のそれぞれが、この問題に対する共同責任がある」というのが、アイスランド政府側の言い分。

一方、EU側は「歴史的に云っても、サバ漁はEUとノルウエーが管理してきたもの、アイスランド側の漁業量は2008年以降に急速上昇。アイスランド政府は、2009年には上限を決めはしたものの、高すぎる設定である。」と言う。

会議は開いても、こうした意見の違いから双方の溝は埋まらず、問題解決の先が読めないというのだ。

メルカトル地図だと離れている英国・スコットランドとアイスランドが、地球儀で見ると極めて近く、アイスランド領のヴェストマン諸島と、スコットランド地方のシェトランド諸島とはお隣同士というのが良くわかる。アイスランドはサバ漁場は排他的経済水域の内側だと云い、EUやスコットランド側は、回遊魚なのだから、相互に決めた適切なクオータを守って漁をすべきだと主張するのだろう。サバはスコットランド漁船が追いかけるもっとも貴重な魚資源。アイスランドの勝手は許さんというのだ。

アイスランド自体が、ノルウェー、スコットランド、アイルランドの移住民が祖先なのだから、このサバ論争もケルトやヴァイキングの子孫のやりとりなわけだが、こと「金」が絡めばハナシは別ということなのだろう。

WIKIで読むと、アイスランドと英国は、1958年から76年にかけて、タラ戦争と呼ばれる漁業専管水域における漁業権を争った前歴があるようだ。20年近くの紛糾の結局、タラ戦争に負けた英国としては、サバ戦争には負けられないというところだろう。

こうした北大西洋上の漁業紛争を見ていると、尖閣、竹島、国後・択捉など、日本近海で起こりつつある領土問題が思われる。排他的経済水域を楯にクオータを決めたいアイスランドと日本とはいかにも似ていそうではないか。一方で、歴史的な既得権や多数を恃むEUの姿勢は、中国やロシアのプレッシャーとそっくりだ。

アイスランドのタラの漁業権を守った200海里だが、サバの漁業権はどうやって確保するつもりなのだろうか。小国アイスランド政府のバーゲニングパワーは、日本政府にとっても大いに参考になりそうだ。

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