四谷三丁目すし処のがみ・毎日のおしながき

冬から春が旬である貝がそろそろ終盤、初鰹・鰈・鱸・鯵など夏の魚が出てきました。

第401回にちよう☆ひるのがみ(お子さんデー)

2024-04-14 18:17:57 | 4/1~4/30


野上啓三インスタグラムsushi43nogami2←こちらに変更しました。
すべての魚・貝、天然ものです。
◇営業時間について◇火曜~土曜17:30~21:55※ラストオーダー(酒類・酒類以外全て)21:25まで
日曜お子さんデーは11:30~17:30です。※日曜はお子様の日です
店には月曜(+第一日曜日)以外10:30~営業終了+aおりますのでお気軽にご連絡ください!03-3356-0170
※レストラン予約代行サービス『オートリザーブ』でのご予約は日付・時間帯にかかわらず受け付けておりません。
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おかみノート
主人の実家はお寿司屋さん。私はなんにも知らないドシロウト。
今まで見たり聞いたり体験した 寿司屋のいろんなことを書いておきたいと思います。

『 真っ白 』
店を始める前は相当な“アタマでっかち”になっていたと思う。
私もどこかの飲食店で経験を積んでからじゃないと店に参加してはいけないのではないかと考えていた。
「ね、お願い。できれば半年待って。ムリなら三ヶ月。寿司店か和食の店でお給仕の仕事してから店に出たいから」
店の物件が決まりかけた時、主人に懇願した。
「だいじょうぶだって。ホテルの仲居さんにうちのカミサンがどこかで勉強してからじゃないとダメじゃないかって悩んでるんですけどって訊いてみたけど、“下手にどこかの店のクセがつくより、気持ちがちゃんとしてれば、技術は後からついてくるから心配ないわよ”って言ってたんだから」
それでもぐずぐず決めかねていると
「あのね、何ヶ月かやったからって同じだよ。多少慣れたかなっていうくらいだよ。準備準備・・って準備ばっかりしてたら年を取っちゃうよ。たとえばね、八十歳、九十歳くらいになって資金が貯まったし店をやるノウハウも取得できた、さぁやりましょうったってその時は体力が無いよ多分。どのくらい修行したら店を出していいですよ、なんていう決まりはないんだよ。何もかも完璧にしてからスタートなんかできないし、そりゃ、始めてからもいろんなことがあると思うよ。でもそんなのしょうがないじゃん。やるしかないの」
そう言われ、そうかなとも思い、同時に店の賃貸契約がどんどん進みお客様をお迎えすることになった。

開店初日。
緊張もあって、どの方が生ビールを頼まれたのかがわからない。
「・・ビ、ビールのおきゃくさまぁ・・」
満席の中、小さい声なので誰にも聞こえない。
泡はどんどん減っていく。
見かねたカウンターの女性のお客様が満席の店内に向かって
「生ビールどなたですかー?はーい、そちらですねー」
と救いの手を差し伸べてくれた。
運んでからお礼を言うと
「わからない時は大きな声で “生ビールのお客様はどちらですかぁー?”って言っちゃっていいんじゃない?のんちゃんも手が放せない状況だし。アッケラカーンと言っちゃえばいいのよ。さ、ほら、がんばって!」
その後も焼酎の水割りを作ったりお茶を入れたり、お会計をしたり食器を洗ったり、前日の予行練習が功を奏してかどうにか乗り切ることができた。
閉店間際、最後のお客様から「お椀四つね」とオーダーが入った。
しばらくすると「あがったよ―!」と言われたのでカウンター越しにお盆を差し出し、お味噌汁を四つ主人にのせてもらい小上がりのテーブルにひとつずつ置いていった。
すると
「ゆびッ、ゆび――ッ!」」
と、突然怒鳴るように言われた。
言われて自分の手を見ると、中指と親指でお椀を持ち人差し指がピーンと立っていた。
「お椀を片手で持つのもそうだけど、人差し指を立てたまま持っちゃダメでしょうが――!常識でしょ?そんなこともわかんないの?こう、両手で持って、静かに置くッ。こういうのはクセになっちゃうから最初が肝心なんだ。覚えといたほうがいいよ!」
その人はOLの時よく通っていた飲食店の方で、ホールの責任者という仕事柄気になって注意してくれたのだろう。一緒に来た店長は黙ったまま少しニコニコして、その人に
「まぁ、まぁ」 
と言っていた。
「はぇっ、すいません・・あ、ありがとうございます」
“はいっ” ではなく “はぇっ” となってしまったのは動揺していたからだ。
まさか人前でそんな勢いで叱られるとは思っていなかった。いや、もちろんありがたかった。
陰でコソコソ「間違ってるのにねー」とか言われるほうがよっぽどイヤだ。
でもやっぱり恥ずかしかった。
笑顔でお客様を見送ったあと、暖簾を入れながら少し泣いた。
「そんなことでいちいち落ち込んでたらキリがねぇぞ」
祐兄ちゃんに言われた。
そうだ。
私は素人のまま飲食の世界に足を踏み入れたのだ。
これから間違ったことをしでかす可能性がゴマンとある。こんなことで日々落ち込んでいたら本当にキリがない。
社会人として十数年やってきたというプライドが「ゆび――ッ!!」という一言で見事に砕け散った。
真っ白。
そう、すべてリセットして真っ白だ。
かっこつけないでひとつずつ吸収していこう。

『 キッカケ 』
先輩がやっている寿司屋を主人が手伝ったお礼にと夫婦でご招待いただき、いろんな牡蠣を五種類も食べさせてもらい、さてそろそろにぎりにいきましょうかというタイミングだった。
「・・それでなに、奥さんは仕事を辞めて手伝わないの」
「いやー、そういうわけじゃないんですけど、あまりにもリスクがあるっていうか」
「だって野上君、店やりたいって言ってんでしょ」
「うーん、いずれはやりたいんですけど、なかなか踏み切れないっていうか」
「・・・・」
気まずい沈黙が続いた。
「寿司屋を自分で立ち上げたい」という気持ちを主人が強く持ち始めた時、私はまだ何もかも捨ててそこに賭けようという決意が出来ていなかった。
『すしの雑誌』という業界誌をパラパラめくっていた時、開業の苦労話を書いたおかみさんの投書が載っていた。
“開店から三年は主人と私の下着の買い替えだけはしましたがあとは一切何も買わず、ひたすら運転資金に回しました”と書いてあり、かなりひるんだ。
開業資金はあればあるだけいいのかも・・。でもどのくらいあればいいのだろう。漠然とした不安な思いだけが胸いっぱいになっていた。具体的に考えたいのだけれど、どう踏み出していいのかわからない。何かの理由をつけて店の問題はただ、先延ばしにしたかった。
「あのさ」
ご主人が金箸をバチンと置いた。
「・・それじゃあ、あまりにも野上君がかわいそうだろうがッ!!!」
あまりの剣幕に少し呆気に取られた。
「えっ?なんなんだアンタ!?せっかく野上君がやる気になってんだろうが、それを奥さんであるアンタが手伝ってやんなくてどうすんだよッ?」
「・・・・」
「 “いや~、え~、でもぉ、できな~い”とか言ってよ?えっ?ちがうか?そうやってたら一生店なんかできねぇじゃねぇか。いいか?野上君が店を出せなかったらな、アンタが野上君の夢を潰したってことになるんだぞ!!!!」
「・・はい」
「だろ?応援してやらなくてどうするんだよ」
「・・はい、そうですね」
そのあとは普通のやりとりをしたつもりだった。
でも、何を食べて何を飲んだか喋ったか、完全に飛んだ。

JR駅の券売機で切符を買い、振り返りながら私は言った。
「あのさ」
「ん?」
「店、すぐやろう」
「・・・・」
「だってさ」
涙が出てきた。
「あたしがどれだけ店のこと考えてるか知らないのに、なんであんなことまで言われなくちゃなんないわけっ!?」
「・・・・」
「それにさ、初めて会った人に“アンタ” なんて、それに“アンタのせいだぞ”なんて、そこまで言われる筋合いはないッ・・!!!」
斜め前のみどりの窓口を睨みつけていた。
悔し涙が両頬を同じ速度でつたい、顎で一緒になって落ちた。
「・・ぜったいやってやる」
主人は私の分の傘も一緒に持ち、黙っていた。
「あそこまでコケにされて冗談じゃないよ。やってやるよ絶対に何も言えないくらいの店立ち上げてやる。あー、かえってガツンて言われてよかったよ。やろう、家に帰ってすぐ企画書、書こう。すぐ動こうよもう」
なかなか重い腰を上げずなるべくラクをしようという私の背中を押すのにはこのくらいの荒療治でなくてはダメだ。それに、やっぱり主人が一生店を出せずに終わってしまったらそれは私がブレーキをかけたからということになる。危険を冒さずに、やっとけばよかったという気持ちで一生を終えるより、たとえ失敗したとしても
「でも、思いっきり自分がやりたいと思える店をやってみてよかったね」
と後に語り合える関係になりたいと思った。
結果的にあの先輩には感謝している。

 

明日は『負け』『カウントダウン』です
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◎赤貝の仕込み 動画アップしました(5分03秒)
◎シャリ酢あわせ 動画アップしました(1分50秒)
◎かんぴょうを煮る動画アップしました(7分30秒)
◎玉子焼き動画アップしました(6分53秒)
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004[2013年]第8回 にちよう☆ひるのがみ  AM11:30~PM5:30 コハダは佐賀です。お通しは愛知のながらみです。 

20120111nogami_008[2012年]三重 間八’12 4/9→4/19 リニューアル工事でした。

 

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[2011年]

書き忘れました。千葉、銚子の生トリ貝があります。

 

 

 

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[2010年]

カンパチは1.7kg、メジは10kgです。

Photo

 

[2009年]赤イカがまた入りました。001

 

コハダは左の大きい方が船橋、シンコサイズに近い小さめの方は岡山からです。002

 

手前はコハダの白子です。

 

鰹は千葉・御宿からで、近くのせいか鮮度が良過ぎてまだ身が締まっています。まさに堅い魚の状態です。

 

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