575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

チョウのただ乗り   竹中敬一

2016年07月01日 | Weblog
 私は障害のある息子と二人暮らしです。高齢ですが
車を運転して隣町のスーパーへ時々、買い物にでかけます。
ある日のことです。夕食用に野菜などを買っての帰り、
車の運転席から前を見ると、左のバックミラーに一羽の
小さな黄色のチョウが止まっているではありませんか。
エンジンをかけても動こうともしません。車をゆっくり
運転し始めましたが、時々、羽を上下させるものの、
器用にバックミラーにつかまったままです。私の家まで
15分位です。幸い交通量も少なく、私はチョウが
飛び立たないよう注意深くのろのろ運転で車を進めました。
なんとチョウはついに、我が家まで乗ってきて、小さな庭に
舞い降りてくれたのです。チョウのただ乗りです。

 その後、どうやらこのチョウは我が家の庭に一時期、
住み着いてくれたようで、いつも決まって白いガーデン用の
テーブルに止まって羽を休めているのをよく見かけるように
なりました。
 澄み切った秋空のある日、私は庭に出てぼんやり空を
眺めていると、あのチョウがどこからともなく飛んで来ました。
でも、飛んでいる姿がちょっと変です。両方の脚で何かを
ぶら下げているように見えました。どうも同じ種類のチョウで
垂直に羽をたたんだままです。私はとっさに仲間の死骸を
どこかに運んでいるのだと思いました。
 そのチョウの姿を目を追っていくと、一本の木にとまりました。
しばらくすると、どうしたことでしょう。死んでいたと思っていた
チョウが両方の羽を動かし始めたのです。
 空中結合していたのです!
心配していたのに、バカバカしい。
あとで、黄色に黒の斑点のあるこのチョウを調べてみると、
タテハチョウの仲間のようです。

           

先輩の竹中さんが原稿を送って下さいました。
早速、掲載させて頂きました。ありがどうございます。遅足


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