東京新聞より転載
核の怖さ 熱く語る
「桐生の空気は汚染されている」と話す川島さん=桐生市で |
◆「汚染の危険性 認識を」
<桐生>原発事故後の放射能測定続ける川島さん
東京電力福島第一原発事故を受け、桐生市の自動車販売業川島実貴さん(50)は、市内で放射能測定を続けている。二十一日、同市の西公民館であった市民団体「むらさきつゆくさの会」の勉強会で講演した。「小さな子どもたちに、桐生の空気を吸ってほしくない」と訴えた。
「空気中から、天然由来ではない放射性物質も検出された」。川島さんは昨年四~六月、空気中のちりを集める装置を自宅に取り付けた。ちりから、ウランやストロンチウムなどを検出したという。
測定は、事故の半年後に始めた。インターネット上で「関東も危ない」という書き込みを目にし、自分で確かめようと思ったのがきっかけ。市内の小学校や住宅地、公園など六百カ所の空間線量や土壌汚染を調べ、「数値にショックを受けた」。自身のブログで結果を公表している。
川島さんは、行政や学校にも結果を伝えてきたが、対応はなかったという。「空気や食べ物から放射性物質は体に入ってくる。桐生が汚染されていることは間違いなく、一人一人に危険性を認識してほしい」と強調した。
勉強会に参加した桐生市のケアマネジャー梅原京子さん(58)は「何となく不安になるのでなく、事実を再確認できた。自分はどう気を付けていくかを考えたい」と話していた。 (杉原麻央)
「原発や八ッ場ダムも新たな視点でとらえるべきだ」と話すビナードさん=前橋市で |
◆難題に「新たな視点で」
<前橋>八ッ場も引き合いに 詩人ビナードさん
「新しい背広、新しいレンズを見つけ、新たな感覚を見いださないといけない」。詩人アーサー・ビナードさんの講演会が二十一日、前橋市の群馬会館で開かれた。ビナードさんは第二次大戦での広島、長崎への原爆投下や、八ッ場(やんば)ダム(長野原町)建設と原発問題を引き合いに、新たな視点で取り組む必要性を説いた。
演題は「だます人と、だまされる人と、どっちが悪い」。米国で生まれ育ったビナードさんは子どものころ、「原爆投下は戦争を終わらせるため必要で正しかった」と習った。しかし大学卒業後、来日して広島の被爆者と出会い、原爆投下を「ピカドン」と表していることを知り、見方が変わったという。
「『原爆』や『核兵器』は爆弾を落とし、キノコ雲を遠くから悠長に眺め、それを肯定する側の言葉。爆弾を落とされた広島の人たちの『ピカドン』という言葉を使うと、立ち位置が変わる」
また、ビナードさんは「ふらんすへ行きたしと思へども ふらんすはあまりに遠し せめては新しき背廣(せびろ)をきて きままなる旅にいでてみん」と、詩人萩原朔太郎が旅で浮き立つ心を詠んだ詩「旅上」を朗読。難題への対応として、違う視点で見ることの大切さを訴えた。
講演会は市民団体「原発とめよう群馬」と「八ッ場あしたの会」が主催し、約百八十人が参加した。 (伊藤弘喜)