東京」新聞より転載
何時、誰もが扶養義務者
「あなたの親族にあたる次の方は生活保護を受給中です。できる範囲内で扶養援助してください」
医療法人事務職、城世津子さん(55)のもとに今春、大阪市住之江区から、こんな文書が送られてきた。
「親族にあたる次の方」というのは、三十五年前、母親と離婚した城さんの父親だった。
父親はギャンブル漬けで借金を重ねた上、家族に暴力をふるった。十九歳のとき城さんは父親に殴られ、前歯を折る大けがをした。三十年以上音信不通で、親戚から死亡したと聞かされていた。
文書は城さんの二人の妹のほか、大学生のめい、結婚したばかりのおいの新居にまで届いていた。
住之江区は戸籍などから親族の住所を調べ上げ、互いに存在を知らない孫にまで、機械的に文書を送り付けていた。「思い出したくもない過去を突きつけられた。怒りとともに恐ろしさを感じる」と城さんは言う。
厚生労働省の指針では、二十年以上音信不通など、受給者との関係を断った親族への扶養の照会は不適切と定めている。
七月に改正生活保護法が施行され、扶養義務者への圧力が強化された。城さんのようなケースが増えるかもしれない。何時、誰もが当事者になる可能性がある。 (上坂修子)