中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に英国など欧州勢も参加すると報じられていることから、日米はどうするのかと話題になっている。だが、これに日米が資金を提供することは敵に塩を送ることと同じである。以下、いくつか記事を並べて見ていく。
この記事では、中国経済を近隣諸国と鉄道でつなぎ、さらにはエネルギーパイプラインまで作ると指摘している。
中国とマドリード結ぶシルクロード鉄道
http://jp.wsj.com/articles/SB11785226218567734557404580496981944087838
この記事では、シルクロード鉄道の経路となる中央アジア5カ国には、中国が喉から手が出るほど欲しい石油、天然ガス、レアメタルなどの地下資源が豊富に眠っている、と指摘している。
中国とEUつなぐ、習金平の新シルクロード構想
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20140408/262570/?rt=nocnt
この記事では、現在の重慶とドイツをつなぐ渝新欧鉄道は、ロシア領内を通るため、かつてロシアが欧州向けガスパイプラインを閉じたような地政学的リスクがあると指摘している。
中国の「新シルクロード」に地政学リスクの影
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42007
この記事では、ラオス国境のノンカイからバンコクの南東でタイ湾に面するマプタプット港までをつなぐ路線(734キロ)を中国企業の手で建設することが報じられている。
タイ高速鉄道建設を中国に取られメンツ丸つぶれの日本
http://www.sankei.com/economy/news/150120/ecn1501200015-n1.html
この記事では、計画が頓挫したものの、中国の昆明からインド洋に面するミャンマー西部まで鉄道を引く計画が報じられている。
ミャンマーへの国際鉄道建設が頓挫・・・中国で「日本の陰謀のせい」の見方
http://news.searchina.net/id/1538483
この記事では、中国がパキスタン南西部グワダル港の運営権を取得したこと、天然資源などをパキスタン国内を経由して自国へ陸送する計画があることが報じられている。
パキスタン、道路整備に中国存在感 資金の90%拠出、鉄道も関係強化
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/140715/mcb1407150500016-n1.htm
この記事では、中国が雲南省昆明とミャンマー西部チャオピューを結ぶ全長約770kmの石油パイプラインを稼働させたことが報じられている。これも南シナ海シーレーンヘの依存度を下げる効果をもたらす。
「割に合わない」中国ミャンマー間の石油パイプライン 稼働の裏で(1)
http://www.epochtimes.jp/2017/04/27159.html
以上の記事を俯瞰すると全体像が見えてくる。
1)中国は周辺国を鉄道やパイプラインでつなぎ、経済的に中国覇権の傘下に収めようとしていること
2)鉄道を欧州まで引き、海運への依存度を下げようとしていること
3)インドを挟むように鉄道とパイプラインをインド洋までつなげる計画があること
4)シルクロード鉄道の経路となる中央アジア5カ国から、石油、天然ガス、レアメタルなどの地下資源を陸路で入手しようとしていること
など。つまり、深読みすると南シナ海で紛争を起こし、シーレーンを封鎖しても中国自身は困らない体制を作り上げようとしているとも読める。
こういう深遠なる野望を着々と進める中国の政治力と構想力は評価するが、対する日本はこの計画が進めば窒息死させられかねない。AIIBはこの計画への投資資金を集めるためのものと推測する。これに日米が資金を投じることは、まさに「敵に塩を送る」結果になると危惧する所以である。
さらに言えば、近年の中国は過大なインフラ建設投資で経済成長を続けてきたが、とうとう資金難から低迷し、経済のハードランディングも危惧されている。この経済成長をさらに持続するために、欧米日からも資金を集めようという魂胆も伺える。AIIBへの出資は中共政府の延命に手を貸すだけの愚策だ。