この記事は、『米朝合意による北朝鮮の陣営組み替え』からの続きです。
上記の記事では、米朝首脳会談による米朝合意は《北朝鮮の準西側化》ではないかと書いたが、この記事では《周辺大国による朝鮮半島不可侵条約の可能性》と少し路線を修正する。
というのも、米朝首脳会談後のポンペオ国務長官の言動を追っていったら、そのような構想が見えてきたからである。以下、それに関する自分のツイートを紹介。
やっと私と同じところに目を付けた識者が現れた。遅いよ。w (次のツイートに続く)【正論】玉虫色の米朝合意をどう読むか モラロジ-研究所教授、麗澤大学客員教授・西岡力https://t.co/lZHgJqRNGW
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) 2018年6月14日
ここ。w《そのような目で共同声明を見直すと「金委員長は朝鮮半島の完全な非核化への揺るぎない、固い決意を再確認した」という先に引用した部分のすぐ前に「トランプ大統領は北朝鮮に安全の保証を約束し」と書かれていることに大きな意味があることが分かった。》
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) 2018年6月14日
みんなどういうわけか、その下の箇条書き4項目に注目してあーだこーだ言ってるが、最重要なのはここ。「朝鮮半島の非核化」と引き換えに米国から提供するのは「安全保障を提供することを約束」。"President Trump committed to provide security guarantees to the DPRK," pic.twitter.com/SX6aB9m9Im
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) 2018年6月14日
この辺の言い回しを見ても朝鮮半島には国家はDPRK(北朝鮮)しか存在してないみたい。w "Convinced that the establishment of new US-DPRK relations will contribute to the peace and prosperity of the Korean peninsula and of the world, "
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) 2018年6月14日
このサイトによれば、security guarantees とは外敵から守る力の提供と説明される。《... security guarantees as "an implicit or explicit promise given by an outside power to protect adversaries during the treaty implementation period》Security Guaranteeshttps://t.co/A81vQs92jR
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) 2018年6月16日
それは米国がこれまで提供してきたものとは異なるユニークなものだと。《Pompeo said these guarantees would be “different and unique” from what the US has been willing to provide before.》Pompeo says North Korea will get ‘unique’ security guaranteeshttps://t.co/2oGxlxfjTS
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) 2018年6月16日
ポンペオ氏は早速中国に飛んでこんな話をしてる。《He also said China and the U.S. agreed that denuclearization should take place “in a timely fashion” and that security guarantees for North Korea should be provided “at times that are appropriate.”》https://t.co/ZJPNmW80EC
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) 2018年6月16日
さっきの引用箇所の機械翻訳。《また、中国と米国は、「時宜にかなった方法で」非核化が行われるべきであり、北朝鮮に対する安全保障は「適切な時期に」提供されるべきだ、と述べた。》で、記事中の次の文章で、王毅外相も大筋合意のような文面になってる。
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) 2018年6月16日
ということは、、、これは日米同盟だとか米韓同盟のような2国間の話ではなく、北朝鮮あるいは朝鮮半島の周辺大国と相互に朝鮮半島への武力行使をしないことを約束する多国間条約みたいのを狙ってるのではないのか?それと引き換えに、北朝鮮あるいは朝鮮半島は武装解除(核廃絶+α)しろと。
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) 2018年6月16日
これは意図としては非常に理解できる。つまり、「あいつらに武器もたせてるとロクなことにならないから、周辺大国の条約で朝鮮半島を相互不可侵地域にしてあいつらから武器を取り上げよう」ということだ。そんな感じがする。
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) 2018年6月16日
プーチンにはポンペオ氏ではなくトランプ大統領が直談判しに行くのか。(…と、勝手に解釈)米ロ首脳会談、今夏の開催を排除せず=ロシア大統領報道官https://t.co/orf6H3GK1F
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) 2018年6月16日
世間の識者がCVID(完全かつ検証可能で不可逆的な方式の非核化)の文言がないからどうたらこうたらとケチつけてる裏で、トランプ政権は歴史上かつてなかったような壮大な奇策を考えてるようだぞ。この構想なら、関係各国が「朝鮮半島の非核化」と表現してることの意味もわかる。韓国も対象のうちだ。
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) 2018年6月16日
ポンペオ氏が中国側に持ちかけたであろう「北朝鮮に対する多国間の不可侵条約」のようなものに中国が既に同意してるかのような記述がこの記事に載ってる。米朝会談でほくそ笑む中国、狙うは非核化の主導権https://t.co/LT81dUl8yD
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) 2018年6月18日
中国としては、北朝鮮まで米国の軍事的庇護国になっては困ると。《中国は平和協定に関与することで、核兵器を断念する代わりに、米国が北朝鮮に与える体制保証に説得力を持たせることを狙っているもようだ。…保証を確実にすることで、中国は「核の傘」を北朝鮮にも広げることを排除しているという》
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) 2018年6月18日
そうすると、現状ではやはりこのツイートの話の路線に見える。つまり、周辺大国間(米中露)で朝鮮半島地域への軍事的不介入・不関与条約などを締結し、みんなで手を引く。それと引き換えに北に核廃絶させる。その後の南北朝鮮の争いは黙殺。おそらく韓国消滅。https://t.co/byQjZHQoDM
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) 2018年6月18日
これは、朝鮮王朝末期の閔妃などが引き起こした迷走により周辺大国(日本、清、露)が互いに戦争する羽目になった教訓から学んだ戦略にも見える。つまり、あいつらに関わってもロクなことにならないからお互いに手を引こうぜ、と。そうであれば、日本もその“条約”に参加した方がいいだろうね。
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) 2018年6月18日
それで、さっき気づいたのだが北野幸伯さんが既にメルマガの中で似たような読みをしてる。「▼ビックディールの中身は?」の章。「あくまで想像です」と書いてるが、その後の報道を見るとその路線にあるように見える。ロシア政治経済ジャーナル [まぐまぐ!]https://t.co/eRAYFEelsP
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) 2018年6月18日
《その一挙手一投足を見ていて、私は一つの仮説を立てた。それは、トランプ大統領が今回、米朝首脳会談を行い、米朝関係を改善させた裏の目的は、北朝鮮を中国から引き剥がすことにあったのではないかというものだ》米朝会談のウラで実は激化していた「米中決戦」今後の展望https://t.co/HnN1qdXSEt
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) 2018年6月19日
《私は4月に訪中した際、さまざまな人に「米中貿易戦争」について聞いたが、中国側の受けとめ方は、まとめると以下の3点だった。①今回の貿易戦争は、単に貿易赤字の問題ではなく、次世代のハイテク産業の覇権を、アメリカと中国のどちらが握るかという「ハイテク戦争」である。》
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) 2018年6月19日
同じところに目をつける識者が増えて来た。いまの北朝鮮の巡る動向は米中対立先鋭化の流れから読まないと見えてこない。戦略は上位階層から読めってやつだ。
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) 2018年6月19日
その通り。どうせ読むならここを見抜いてる識者の記事を読むべし。《トランプにとっての最大の敵は習近平であり、それは金正恩にとっても同じなのであることを見逃してはならない。》トランプの米朝蜜月戦略は対中牽制――金正恩は最強のカード|ニューズウィーク日本版https://t.co/PNIaymwz27
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) 2018年6月19日
今後の読みは異なるが、署名文書の着眼点は同じ。《以上の米朝共同声明と米朝会談での合意内容は、「北朝鮮の非核化」と「米国による安全の保証」を大枠で相互に確認したものである。》米朝交渉の舞台裏-非対称な非核化と安全の保証の取引-https://t.co/leC9uAjWaO
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) 2018年6月21日
元陸自西部方面総監も気づいたと。《金正恩は戦わずして負けを認めたのだろう。(中略)それぞれアプローチと観点は違うかもしれないが、この見方であれば合点がいく。平たく言えば、「米朝は握った」のである。》早くも中国征伐へ舵を切った米国https://t.co/vf3aH5EsqK
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) 2018年6月26日
私が指摘してたのはこれ。次のステップは米露首脳会談の行方だと思う。《鈴置:米国はシナリオⅢを北朝鮮に提示しているのではないかと思われます。》米中貿易戦争のゴングに乗じた北朝鮮の「強気」 北朝鮮は誰の核の傘に入るのかhttps://t.co/N1Zyu7gBvT pic.twitter.com/9GDA2cmAvi
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) 2018年7月12日
それで、この路線で進むとすれば、朝鮮半島の周辺大国(米中露日)が朝鮮半島に対する軍事的不介入条約を結ぶことになる。もちろん米韓同盟も消滅する。この場合、南北朝鮮の諍いは内戦として不介入になるから、韓国は滅ぼされるのかもしれないし、周辺国はそんなの知ったこっちゃないという未来展望。
— ZF ⚡ (@ZF_phantom) 2018年7月12日
なお、次のような報道を受けて、世間一般および安全保障方面の識者らが「北朝鮮が約束を守らないことはわかっていた」と書いているが、米朝首脳会談で合意した「安全保障の提供」を北朝鮮側はまだ手にしてないのだから、北朝鮮側からこのような反発が出るのも当然と言える。
【激動・朝鮮半島】「信頼醸成は困難」北外相、米国を批判 ASEAN関連閣僚会議 - 産経ニュース
http://www.sankei.com/world/news/180804/wor1808040056-n1.html
その「安全保障の提供」の実体が、この記事で示した《周辺大国による朝鮮半島不可侵条約》だとすれば、それは米国がまだ関係各国と水面下で調整中であって、米朝首脳会談での合意に基づく取引の品物を用意できていない段階だと言える。それが多国間条約であるからには、トランプ大統領の一存では決まらないので、このモヤモヤした状態は今後もしばらく続くと思われる。
(参考)
2018年6月シンガポールでの米朝署名文書の全文:
Trump and Kim's joint statement(英文)
https://reut.rs/2l1Q5e6
情報BOX:米朝首脳会談、共同声明の全文(日本語訳)
https://jp.reuters.com/article/us-nk-summit-joint-statement-idJPKBN1J80RF
(追記)2019.07.01
次の記事に登場する『地域の恒久的な安定を実現するための遠大な計画』とは、この記事で指摘している《周辺大国による朝鮮半島不可侵条約》のことではないのか。米中貿易戦争で中国側も困りきっていたところにG20直前に習近平が訪朝し、朝鮮半島不可侵条約を進める方向で中朝合意し、それを手土産にG20での米中首脳会談への手土産としたと考えるとつじつまが合う。事実、G20の米中首脳会談でトランプ大統領は米中貿易戦争を緩和した。
異例づくしの習近平主席の国賓訪朝 G20直前に「密約」か 2019.6.30
https://special.sankei.com/a/international/article/20190630/0001.html
習氏は訪朝前日の6月19日付で、朝鮮労働党機関紙「労働新聞」1面に寄稿文を寄せた。労働新聞に中国の国家元首が寄稿するのは史上初のこと。このなかで習氏は「対話を通じて北朝鮮側の合理的な関心事を解決することを支持する」とし、さらに「中国は朝鮮の同志と努力し、地域の恒久的な安定を実現するための遠大な計画をともに作成する用意がある」と表明した。専門家は「遠大な計画とは何を意味するのか」と注目している。
米中、通商協議再開へ 合意の期限示さず対立点残る 2019年6月29日
https://reut.rs/2xlRySU
トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は29日の会談で、5月以降停止していた通商協議を再開することで合意した。トランプ氏は第4弾の対中追加関税の発動を棚上げし、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)に対する禁輸措置を緩和する方針を表明。
以上。