米政府の強い働きかけで、日韓両政府が慰安婦問題の解決に合意した。その直後、北朝鮮は水爆と称する地下核実験を強行した。この2事件の報道を追っていくと、朝鮮半島全体がいまだに動乱あるいは戦乱の危険性が極めて高い地域であることが見えてくる。
朴槿恵は「統一はテパク(大当たり)」などと吹聴して半島統一を煽っていた時期がある。その後、北京での軍事パレードに参加して西側諸国を驚かせたりもした。朴槿恵の異様な傾中姿勢は繰り返し報じられているが、傾中の先には中国頼みの半島統一を見据えていたと思われる。
その統一がどのように可能であるかが、北朝鮮の核実験の報道で見えてきた。すなわち、中国は食料と石油の供給を止めれば、いつでも瞬時に北朝鮮を崩壊させることは可能である。だが問題は、北の崩壊後に西側諸国としての韓国が統一し、在韓米軍が中朝国境まで来ることは絶対拒否なのである。
北朝鮮核実験と中国のジレンマ──中国は事前に予感していた
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/01/post-4345.php
西側と国境を接することを絶対拒否する姿勢はロシアも同じ。例のウクライナ問題も、政変後のウクライナがNATOに加盟する動きを見せたために、これに拒否反応を示した露プーチン政権が起こした事案である。つまり、朝鮮半島が西側陣営として統一されることはロシアの拒否反応も生じさせる。
この力学がわかっていれば、朴槿恵が半島統一を優先目標とするなら奇策がある。それは韓国を丸ごと中国陣営に鞍替えさせて、かつての中国-北朝鮮の盟友関係の位置に韓国を置き換えることである。すると、中国は遠慮なく生意気な金正恩政権を崩壊させることができる。ロシアも異存なしであろう。
もちろん、金正恩もそんなことは見抜いているはず。だからこそ、ますます核開発に邁進し、口先では米政府を脅して存在感を発揮しつつ、暗に中国政府をも核で威圧しようとしている。朴槿恵の傾中が進むほど、金正恩はロシアを頼りつつ、米政府に生存を認めてもらう方向にしか生き残る道がない。
朴槿恵が中国陣営に鞍替えするというのは、在韓米軍を追い出し、人民解放軍に駐屯してもらうことで完成する。金正恩の命運が尽きるのはその瞬間である。おそらく、その瞬間が来れば金正恩は死なば諸共の覚悟で北京に核攻撃をするだろう。それを予期してる中国も北朝鮮に先制攻撃を仕掛けるだろう。
朴槿恵の思惑としては、中国に北朝鮮を絞め殺させて統一し、北が持つ核兵器をそっくり手に入れ、日本のみならず米国をも核で威圧できるようになりたいだろう。だが、中国の思惑は「朝鮮半島の非核化」であることを明言している。韓国の核保有すら許さない。ここに中韓の思惑の不一致がある。
米国政府は、全世界に目配りをしているせいか、日本が韓国を見ているほどには韓国とその周辺の事情を精緻に把握していないフシがある。だが、北京の軍事パレードに朴槿恵が参加したあの異様な光景を見て、さすがにいろいろ悟ったのだろう。それが、今回の日韓慰安婦合意につながってくる。
つまり、米国から見て韓国における権益(米国製兵器が売れるなど)喪失以外にも、軍事対立の最前線が日本海になってしまえば、ミサイル射程の関係から横須賀や横田の米軍基地すら危うくなる。そういった損得勘定を考えた上で、韓国の陣営鞍替えを阻止すべく、慰安婦問題解決が画策されたと考える。