つぶやき、或は三文小説のやうな。

自由律俳句になりそうな、ならなそうな何かを綴ってみる。物置のような実験室。

祈りと叫び

2017-06-21 12:17:31 | 文もどき
今朝、歯を磨きながら不意に気がついた。
堅忍不抜という言葉は、自らも血を流す覚悟があることを前提に成り立っているのだ。
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真っ暗な穴の底で
祈っても叫んでも声は届かない。
そもそもここが底なのか。
上も下もない暗闇の中だとして、
小さな光が希望に見えることはあるのだろうか。
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かならず時は来る。
やまない雨がないように、
明けない夜がないように、
ひとの心に光さすときも。

This is America

2017-06-19 20:40:02 | 文もどき
この小説は、紛れもなくアメリカだ。
アメリカそのものと言っていい。
むかしネヴァダで見かけたハーレーに跨るスターズアンドストライプスと革ジャンのイカした爺様くらいに。どストレートに。
勇敢で怖れを知らず、屈託のない朗らかな、傲慢なまでに善良なアメリカはヴェトナム戦争で挫折を知り、9.11で不寛容を覚え、ハリケーン・カトリーナで喪失を味わった。
メランコリックな青年期を迎えたアメリカを、人類最良の友がゆく。
荒野をゆく聖者のように、奇蹟の体現として。
哀しみと背中合わせの馬鹿騒ぎも、無謀と紙一重の勇猛さも、愁いが連れてくる思慮深さも、底抜けの慈しみも、何もかもが愛おしい。
そして何より、ギヴ、きみだ。
世界は複雑さを増していくようだけれど、せめて心のありようは自分で決めたい。
そう、できるなら、きみのように。

『音もなく少女は』という邦題がとてもよかった。そして、今回もまた。改題することに賛否を問うことはしないし、日本のタイトルはいささか説明すぎると思うこともあるが。
もっとも、『ギヴ・犬とアメリカの物語』でも私は読んだろうと思うのだけれど。

その犬の歩くところ(ボストン・テラン/文春文庫)