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松静自然 -太極拳導引が教えてくれるもの-

松静自然とは落ち着いた精神情緒とリラックスした身体の状態をいい、太極拳導引の基本要求でもあります。これがまた奥深く…

冬季(小寒大寒)の養生 ー心身の傾向を観察してみるー

2008-01-14 | 養生の栞-季節と養生-
せっかくの連休ですが、東京は底冷えがきついです。
15日は小正月(地方によっては女正月とも言うらしいですが)、
田舎ではよく寒餅をついていました。
ちなみに私は青のり入りや黒豆入りの物が好きです。


今回は、この時期のからだはどんな状態にあるのか
そのあたりを観察してみることに。
といっても、中医的視点からみたものになりますので
あまり聞き慣れないことばや
よく耳にはするけど
実はよくわかっていないようなものも
出てくるかもしれません。

しかし中医の基本となる理論(考え方)はシンプルです。
説明にはなっていないかもしれませんが
たとえば宇宙や自然界に起こっている現象は
私達の体の中でも同じようなことが
起こっているものと考えています。
つまり私達の体も
ひとつの宇宙や自然界としてとらえているのです。

古くから人々が長い時間をかけて
自然観察をくり返しながら導き出した法則をもとに
療法や養生法を考案し伝えてきたものですが、
いまも引き続き研究され進化し続けているのです。
大雑把で乱暴な表現ですけれど、
基本的にはそういうことかと思われます。


ここで少しだけ寄り道をしますね。
中医ではよく気血ということばを
見聞きするかと思います。

そこでまず気の概念について説明しますと、
中医では気を人体を構成する物質として
そしてまた運動エネルギーとして捉えています。
つまり「気は物質でありながら運動性がある」と
いうことになります。

そして中医でいうところの血は
気と同様に人体を構成し生命活動を維持する
基本物質ですが
その作用は血脈を通じて全身を栄養し潤すこと
精神活動を支える物質的基礎(=栄養素)となることです。

私達が普通に思い描く血液と似てはいますが
赤血球や白血球、血小板というような
血液成分で区分することもなく
その生成や循環についての考え方にも違いがあります。
ですが我々のような門外漢の雑学的知識レベルであれば
ほとんど大差はないと考えてもいいのではないでしょうか。
(興味のある人は調べてみてください。おもしろいですよ)




  冬季にみられる からだの傾向
前回の『黄帝内経』でも書かれていたように
冬には運動量も減り外気が冷え込むこともあって
体温も低下しやすい、つまりは冷えやすくなっているとは
容易に想像がつくかと思います。

冷えやすいというのは、
全身を流れている血液の量が少ない
流れ方が緩慢であるといった現象が起きていて
筋肉や皮膚などに伝わるはずの体内温度が
なかなか伝わりにくくなっていると考えられます。

また、外気の冷たさにさらされている
皮膚や筋肉が冷えて縮こまることで
血管が圧迫されてしまい
血液量は十分でも体のあちこちで
血流がうまく流れずに渋滞状態を起こし
指先や足先など毛細血管のような末端部や
コリのある部位などの血行不良が
原因となっていることも考えられます。

したがって血の巡りが好くない状況というのは
必然的に気の巡りも好くないと考えられます。
ということは全身に影響が出てきます。


冬場にみられる傾向としては
運動不足によって十分な生理活動が行われなくなり
不眠や食欲不振、便秘、肌荒れなどといった
気になることが出てくることが少なくありません。

たとえば体を冷やしてしまったりすると
透明な尿がひっきりなしに排出されたりします。
これは腎や膀胱に負担がかかっていることを意味します。
腎や膀胱はもともと冬場に活発に働く臓腑ではあるのですが
それにも限度があります。
それを越えれば働きも鈍り消耗し
腎に貯えられている気まで尿と一緒に体外に出てしまい
物質的に気が不足する事態になる可能性もでてきます。

腎が消耗してくると消化器系を司る脾にも影響が出てきます。
食が細ると気を飲食から摂り入れて補充することが
うまくできなくなります。
また腎は肺とも関連しているので
腎が弱ると肺にも影響が出てきます。
呼吸が浅くなったりして
清気を取り入れることがしにくくなってしまいます。

腎や膀胱は水との相性がいいので
体内の水分調整も行っていますから
このコントロールがきかなくなってくると
口内や唇が乾いたりするのに
胃袋は水分でチャポチャポしてる感じがしたり
浮腫が生じたりすることも出てきます。

腎は歯や骨、毛髪、耳などとも関連があり
いわゆる老化といわれるものは
腎の衰弱とともに現れるとも言えそうです。

こうしてみてくると
冬季にはいのちの原点に戻るような
イメージがあるみたいですね。
この時期は粛々といのちを慈しむ
日頃目の届かない地中の根にも手をかけて育むような
まさに陰気を帯びた季節のようです。

おそらく冬には冬の過ごし方がある
ということなのでしょうね。