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兵士に聞け

2009-11-22 15:45:57 | 自己啓発の成功本
「自衛官の日々の生活と価値観を伝える、渾身のルポルタージュ」
著者/杉山 隆男 出版社/小学館 830円

◆目次
第一部 鏡の軍隊
   日陰者
   パラドックス
   もう一つの自画像 

第二部 さもなくば名誉を
   「非常呼集!」
   戦争ごっこ
   大卒自衛官
   勲章
   
第三部 護衛艦「はたかぜ」
   遺産相続人
   厚化粧
   直訴
   紙のキャリア
   鉄の柩の住人たち
   ミイラとり

第四部 防人の島
   マグニチュード7.8
   救出
   自衛隊法八十三条
   不人気
   問題児
   旅の者

第五部 帰還
   志願兵
   装填
   遺書
   トリック
   いちばん長い四日間
   後遺症
   残された者たち


この『兵士に聞け』に出会った時のことは、まるで昨日のことのように覚えています。

社会人5年目の冬、たまたま仕事の帰りに入った定食屋のカウンターの下に置かれていた週刊現代を手に取った時でした。

生々しいリアルな写真。自衛官の息遣いが感じられるような文体。

当時、企業の採用手法の一手法としてルポルタージュが注目されていたこともあって、その構成、文体、写真に食い入るように読み込んだ覚えがあります。

印象的な部分を、一部御紹介します。


「私たち自衛隊の金庫の中には、そうした本になることなく終わった原稿が積み上げられていくわけです。それらは誰の目にもふれることはない。でも私たちは自ら納得できる仕事ができたのなら、別に形にならなくてもそのことだけで満足するんです。いや正確に言えば満足しなくてはならない。

そりゃ戦場で自分たちの実力のほどを示したいという思いも若い時分はありましたよ。でも私たちの仕事は、本にならない原稿を書くこと、つまり出番はきっとないだろうけど、いざという有事に備えて準備を完璧にすることです。そのために日夜訓練に励むわけです。しかしそれは人知れずに行われている。だからその成果については誰も評価してくれない。知らないことを評価してくれという方が無理ですからね」


「でもね、私たちにとっての評価というのはあまり問題ではないのです。私たちの仕事は日の目を見ない原稿を書き続けることですから、最初から評価や裁判をあてにしていないのです。ただ、時分はやるべき最善のことをやったんだという充実感が支えになるわけです。

第一この仕事に終わりはありません。先輩を越えることが私たちに与えられた使命ですからね。射撃の命中精度を上げるとか、隠れた敵に対する探知能力を向上させるとか。むろん民間と違ってそれをやったからと言って別に給料が上がるわけじゃない。あくまで万一の備えですから何かを生み出すということもない。

しかし技術を磨きつづけ、それを何代にもわたり持続してゆくことが自衛隊の目に見えない財産になるわけです」


「日の目を見ない原稿を書きつづける」自衛官にとって、災害派遣や救助活動は、自分たちの仕事が「公益」につながっていると実感できる、唯一のステージなのかもしれない。140人の歩兵を率いるあの中隊長は、山で行方不明になったハイカーを捜索しに出動するとき、隊員たちの表情が訓練とは一変すると言う。
「部隊が燃えるんです」


「おまえがやるまで、全員メシを食わせない!」
それは言わば最後通牒にようなものだった。このままでは確実に彼は部隊に帰される。ケガや病気といったやむをえぬ理由からではなく、不適格という不名誉な烙印を捺されて…。彼を遠巻きにしていた仲間たちがたまりかねたように「頑張れ!」「男じゃないか」と叫び始めた。隊員の名前を連呼する者もいる。立ち止まってからすでに20分が経過しようとしていた。

彼は走りだした。だが障害走の訓練は何とかやり終えてもその隊員は立ち直れずにいた。隊舎に戻ったあとで彼は、同期の仲間たちに帰れるものならこのまま帰りたいと思いつめた表情で打ち明けている。ほうっておけば荷物をまとめかねない気配の彼のことを仲間たちは懸命に説得した。

そうした同期の励ましの中でも、ロープ・ダウンした彼に、体勢を立て直してもう一度リングの中央に出て行こうという気を起こさせたのは、バディとしてその隊員とつねに行動をともにしている相棒のひと言だった。

レンジャー訓練の期間中、12人の隊員たちは二人一組のバディをつくってトイレに行くとき以外ほとんど一緒の行動をとる。食事も入浴も外出もバディの相方と一緒だし、バディが装備の装着に手間取っているときはすかさず相方が手を貸す。互いの体をロープで縛りつけバディを背負って絶壁を降りていく訓練もある。文字通り命を預けあう仲となるのだ。


将校を対象にした幹部レンジャー教育が、リーダーシップの養成に主眼が置かれているのに対して、曹士レンジャーは最後の一兵になっても戦えるように体力と精神力をぎりぎりまで鍛え上げることが目的なため、訓練は自然とスパルタ式の色合いが濃い内容となっている。

たとえば何日もの間、食事もほとんどとらず一睡もせずに山中を歩きまわるような訓練のさい、幹部レンジャーではうたた寝をしている隊員がいても教官が張り手を食らわせることは決してない。その代わり、あとで「おまえはそれでも将校か。部隊に帰ったときにそんなことで部下を引っ張っていけると思っているのか」と同期の仲間たちが見ている前で叱り飛ばし、本人の自覚を促すのである。

これに対して曹士レンジャーではうつらうつらしている隊員がいたら、たちまち教官の鉄拳が振り下ろされる。服装に埃や糸屑がついていると言っては叩かれ、シーツの畳み方が悪いといっては叩かれる。ただ叩かれながら、それでも命令には「レンジャー」と答え、ひたすら耐えることを要求される。しかし訓練が理不尽なほど厳しかった分、ダイヤとオリーブの冠をあしらったレンジャーバッジを胸元につけてもらったときの感激はひとしおなのだろう。杉本二曹も含めて曹士レンジャー訓練をクリアした隊員に会って話を聞くと、誰もがそのときこみあげてきた思いを何年たってもはっきり覚えていると言う。


おそらく軍隊という組織は、どこの国でも一番規律と訓練の厳しい集団です。

自国の国防の最前線で体を張って生きる隊員の気持ちにここまで踏み込んだ本は、これが最初だと思います。


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