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インテリジェンス 武器なき戦争

2010-01-12 09:58:09 | 自己啓発の成功本
「元外務省情報分析官と元NHKワシントン特派員のインテリジェンス討論本」
筆者/手嶋龍一 佐藤優 出版社/幻冬舎 777円

◆目次
序章 インテリジェンス・オフィサーの誕生
 インテリジェンスは獣道にあり
 情報のプロは「知っていた」とは言わない
 なぜ「外務省のラスプーチン」と言われたか
 インテリジェンスというゲームの基本ルール
 「嘘のような本当」と「本当のような嘘」
 インテリジェンスの共通文化
 十重、二十重、R・ゾルゲの素顔
 死刑と引き換えに愛する女たちを救ったゾルゲ
 インテリジェンス・オフィサーの資質が国の存亡を左右する

第1章 インテリジェンス大国の条件
 イスラエルにおける佐藤ラスプーチン
 外務省の禁じ手リーク発端となった「国策捜査」
 大規模テロを封じた英情報機関
 インテリジェンス機関とメディアの秘められた関係
 功名が辻に姿見せないスパイたち
 そぅと仕掛けられた「撒き餌」
 イラク情報で誤った軍事大国アメリカ
 大量破壊兵器あり―幻の情報キャッチボール
 サダムとビンラディン、その悪魔的関係
 イスラエルとドイツに急接近するロシア
 「二つのイスラエル」を使い分けるユダヤ人
 ネオコン思想上の師、S・ジャクソン上院議員
 プーチン大統領のインテリジェンス能力

第2章 ニッポン・インテリジェンス その三大事件
 TOKYOは魅惑のインテリジェンス都市
 七通のモスクワ発緊急電
 仕組まれたゴルビー訪日延期
 愛人は引き継ぐべからず、情報源は引き継ぐべし
 スパイたちへの「贈り物」
 運命を変えたテヘラン発極秘情報
 グレート・ゲームの日々
 東京が機密情報センターと化した9月11日
 大韓航空機襲撃事件をめぐる「後藤田神話」
 情報の手札をさらした日本、瞬時に対抗策を打ったソ連
 自国民への「謀略」-そのタブー
 カウンター・インテリジェンスとポジティブ・インテリジェンス
 日本のカウンター・インテリジェンス能力は世界最高レベルにある

第3章 日本は外交大国たりえるか
 チェチェン紛争―ラスプーチン事件の発端
 すたれゆく「官僚道」
 竹島をめぐる凛とした交渉
 「平壌宣言」の落とし穴
 すべてに優先されるべき拉致問題 
 ミサイル発射「Xデー」に関する小賢しい対メディア工作
 水面下で連動する中東と北朝鮮情勢
 「推定無罪」がインテリジェンスの世界の原則
 腰砕け日本の対中外交に必要なのは「薄っぺらい論理」
 靖国参拝の政治家
 記録を抹殺した官僚のモラル
 自衛隊のイラク派遣は正しかったか
 「二つの椅子」に同時に座ることはできない

第4章 ニッポン・インテリジェンス大国への道
 情報評価スタッフ―情報機関の要
 イスラエルで生まれた「悪魔の弁護人」
 インテリジェンスの武器で臨んだ台湾海峡危機
 インテリジェンスを阻害する「省益」の壁
 インテリジェンス機関の創設より人材育成を
 インテリジェンスの底力
 官僚の作文に踊る政治家
 インテリジェンス・オフィサー養成スクールは大学で
 対米依存を離脱せよ
 インテリジェンス・オフィサーの嫉妬と自尊心
 偽装の職業を二つ持つ
 生きていた小野寺信武官のDNA
 ヒューマン・ドキュメントではない「命のピザ」の物語
 日本には高い潜在的インテリジェンス能力がある


日本および世界のインテリジェンスの事情を極めて客観的に教えてくれるのが、この『インテリジェンス 武器なき戦争』です。

“武器なき戦争”というネーミングも上手いですね。

日本ではスパイは江戸時代のお庭番のイメージが強く、どうも“影の存在”や“卑怯者”といったニュアンスから離れられませんが、欧米ではエリートの職業として確立し尊敬されています。

そこには、人並みはずれた知力と精神力、体力が求められることへの尊敬の念があるのでしょう。

本書は、そういったインテリジェンスの世界に日本で一番詳しい佐藤氏と手嶋氏が対談形式で様々なテーマで語ってくれています。

興味深かった箇所を、以下御紹介します。


◆情報のプロは「知っていた」とは言わない

手嶋/その違いは重要です。インテリジェンスをめぐる基本なのです。精査し、裏を取り、周到な分析を加えた情報。それが、インテリジェンスです。ちょっと聞きかじっただけの情報は、インテリジェンスには昇華されていない。(※中略)上っ面の事実を知っているだけでは、単なるインフォメーションにすぎない。そんなものはインパクトを少しも持たない。情報としての生命力は宿っていないのです。


◆なぜ外務省のラスプーチンと呼ばれたか

手嶋/ロシアからエリツィン大統領がまもなくチェルノムイルジン首相を更迭する、という機密情報が西側世界に染み出してきた。1998年のことでした。その時点で、この情報を握っていたのは、当の大統領自身を含めて3、4人と言われます。日本政府は、その極秘情報をイスラエル経由で入手しました。アメリカもイギリスも、並み居る情報大国はまったく知らなかった。西側主要国の情報関係者が受けた衝撃は大きかった。僕はワシントンでそのインパクトがいかに凄まじかったかを目の当たりにしています。こうしたインテリジェンスをくわえてくることができるのはあのラスプーチンをおいてほかにないと見立てたのです。


◆大規模テロを封じた英情報機関

手嶋/イギリスの場合、外務省の中に、SISという対外情報専門のインテリジェンス機関を組み込む形になっています。それを外交一般に関する情報と競合させているわけです。(※中略)そんなイギリス情報機関が久々に底力を見せたのが、2006年8月10日の出来事でした。旅客機テロ計画の容疑者を一斉検挙してみせた。(※中略)

佐藤/見事に敵討ちを果たしたな、というのが第一印象でした。ロンドンで地下鉄などを狙った爆弾テロが起きて、50名以上の死者が出たのは、およそ1年前の7月7日のことです。この「敗北」を、彼らは決して無駄にしなかった。(※中略)
 
あのとき、クラーク内相が自分たちのカウンター・インテリジェンス体制に問題があったことを素直に認め、国民に謝罪したのです。これを聞いた各国のメディアは、「英国情報機関の限界が露呈した」といったニュアンスの報道を行ったのですが、私の感想はまったく逆。「これは本気だな」と直感しました。

というのも、ジョージ・オーウェルの『イギリス人』というエッセイ集に、こんなエピソードがあるんです。第二次世界大戦中、空爆にさらされたロンドン市民が地下鉄の駅に逃げ込んだ。しかし、そこはもちろん防空壕ではありません。そこでどうしたかというと、みんな最短区間の切符を買って、整然とホームに下りていく。緊急時にもかかわらず、誰ひとり秩序を乱さないし、動じない。しかし胸の奥では、「よくもやったな」「覚えていろよ」という、ドイツ軍に対するたぎるような思いを燃やしていたのだ―というお話です。これを「ジョンブル魂」というのかも知れません。私は、冷静に反省の弁を述べる政府高官の姿から、そんな凄みのある決意を読み取ったんです。(※中略)


◆功名が辻に姿見せないスパイたち

手嶋/俗称では「MI6」として知られている対外情報機関SISやカウンター・インテリジェンス組織MI5の名前は、ほとんど出てこない。彼らは功績を警察に譲って、じっと我慢しているんです。(※中略)

佐藤/ただし、SISが表に出てこないのは、モラルが高いだけではありません。もともと彼らは、世間的な評価や出世にはあまり興味がないんです。一番の関心は、SISの長官、首相、さらには女王陛下といったキーパーソンに認知されることなんです。こういうキーパーソンはSISのインテリジェンス専門家を大切にします。


◆そっと仕掛けられた「撒き餌」

佐藤/もう一つ重要なのは、人脈づくりです。英語科もあって、中東やアフリカから将校などを受け入れていたのですが、どうみてもまともに勉強している雰囲気ではない。事実、オマーンの将校は「イギリスは僕らに本気で英語を覚えさせようとしているわけではない。楽しいイギリス生活を送らせれば、それでいいんだよ」と言っていました。つまい、英国に好印象を持って本国に帰ってもらい、いざというときには、そこで築いた人脈をフル稼働させるということです。ちなみにリビアの実質的な元首を務めるムアンマル・カダフィ大佐も、ここの卒業生です。私はカダフィ大佐と同窓なんです。

手嶋/9・11テロ以降、対中東政策にほぼ見るべきものがないブッシュ政権にとって、リビアに方向転換させて、がっちりと取り込んだことは唯一の光明です。しかし、カダフィを「寝返らせた」のは実は米国ではなく、英国のインテリジェンスが構築した人脈だった。これは、その筋の人々のあいだでは常識になっています。


興味深い話は、まだまだ一杯出てきます。

日本と同じ島国であるイギリスや小国でありながら優れたインテリジェンス機能を持っているイスラエル等、学ぶべきポイントが明確に指摘されている良書だと思います。


インテリジェンス 武器なき戦争 (幻冬舎新書)
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