『OUT』

2008-07-23 12:42:59 | 文学




『OUT』 桐野 夏生  
第51回日本推理作家協会賞受賞


桐野夏生は先日『東京島』を上梓し、
これを図書館にリクエストしたところ30数名待ちで、
繋ぎに何か読んでみようと『OUT』を手に取った。


本作は推理作家賞を獲っているが、私はこの本を推理小説だとは思わなかった。

『OUT』に犯人探しや動機を探るような部分はなく、
香取雅子という夫と家庭内離別状態にあり、反抗期にある長男を持った
どこにでも居る一見普通の42歳の主婦が、ある事件に自ら巻き込まれて行く過程において、
それまで露呈しなかった、雅子の極めて男っぽく清々しい
高純度のウォッカのような侠気と、
豪ほどの甘さも湿気も含まない、まったくの言い訳のない
カラカラに乾いた竹を断ち割ったような潔さを描いた
超一級のハードボイルドであると思った。

桐野がペンを滴らせて描き出す人物像は
それぞれの家庭、人種、生い立ち、職業も絡め、皆生き生きと個性的で魅力的だ。


彼女の作品は『柔らかい頬』を読んだきりだが、
近頃のフェミニズム志向や生ぬるい平和主義女性作家に見られるような
うわべの正義や善をしたり顔で説教がましく述べないところも桐野の作品の魅力であり、
それらのジメジメした嘘くさい、蒸れた靴の中のストッキングのような女性作家たちが
束になっても敵わない決然としたニコリともしない、ザリガニの中のサソリのような存在感は、
圧倒的であり、強烈だ。




★★★★★



東京郊外の弁当工場を舞台に、深夜パートの主婦たちの現状からの脱出をテーマにしている。
香取雅子42歳はリストラ亭主と家庭内離散、吾妻ヨシエ51歳は痴呆症の義母介護、
城之内邦子40歳はカード破産、山本弥生30歳はギャンブル狂亭主から受ける暴力と、
それぞれ4人は悩みを抱えていた。
そんな中、弥生が夫を殺したのを期に、4人が複雑に絡み合っていく。






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2 コメント

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Unknown (村石太)
2009-09-04 13:11:55
恐ろしい 小説だなぁ 新宿2へ行く?
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今は (P@RAGAZZO)
2009-09-04 14:03:04
村石太さん、こんにちは。

いやぁ、怖かったですね。

2丁目?

今は行きません。(笑い)
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