『犬身』

2008-02-11 16:11:43 | 文学




『犬身』松浦理英子 2008年読売文学賞受賞作



この作品は表記しているように今年の読売文学賞をとっており、
各所での書評を見てもすこぶる評判が良い。

ところが私にはまったくこれの良さが解からなかった。

物語は、ひとりの犬好きの女性がある事をきっかけに犬に変身し、憧れの女性の飼い犬となり、
飼い主の女性の家族関係のゴタゴタを犬の目で観察し、そこに絡んでいく。

本書は500ページにわたるもので読むのがつらく、ずいぶん斜め読みになってしまった。



まず私には、人間が犬になるとか透明人間になるなど非科学的な事が、小説であっても嚥下できず、
それは例えば大好きな司馬遼太郎の作品であっても、
忍者が出てきて水の上を走ったり煙と共に消えたりすると『嘘つくな!』と思ってしまうし、
小説だからといって、合理的でないことを前提というのはどうしても我慢が出来ない。



小学校高学年か中学の時、学校の放送でカフカの『変身』を朗読していた。

『変身』は名作であると聞いていたし、シュールだとか人間の本質の表出だとかいう解説もあるが、
『なんだこれ?、、ありえないだろ』というのが私の正直な感想で、
どうしてこんな作品、人が虫になる、が名作であるのかさっぱり解からなかった。

私の価値観は月日を重ねても変わらず、
久しぶりに読んだ変身物で改めてその馬鹿馬鹿しさを実感した。


もちろんこれは裏返せば私の文学観の限界でもあり、
『現実的でありたい』と思う私の呼吸法の背骨であるともいえる。



★☆☆☆☆






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