goo blog サービス終了のお知らせ 

陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

「The Final Feast」 Act. 5

2025-03-06 | 感想・二次創作──魔法少女リリカルなのは

マリーが眼鏡を白く光らせながら、恨みがましくぶつくさこぼしていた。
傍からみていると、かなり恐いオーラが湯だつように発せられている。使いすぎて高温になった電気機器のように、こういう沸騰状態の彼女にはうっかり近づくべからず。
やがて、彼女は眼鏡の縁をもちあげて、にたりと唇の端を吊りあげた。

「私の発明した特製『空から写ルンです』が不調だっただなんて、許せない、ありえない、信じられない。よって、代案を提案します。パーティーをもう一回開いてもらいます!」
「そんなことできるわけないだろ。はやてさん達がどう言うか」

生真面目なグリフィスが慌てて、つっこみ。シャーリーも頬に手をあてては、そうねぇと頷く。
機動六課所属時に、部隊長補佐として八神はやてのサポートをしたグリフィスは、はやてに対しては好意的だ。八神家の勘気をこうむるような事態は招きたくはない。
しかし、そこは次元嵐がうずまく海をも乗り切った剛腕の舵取り手ルキノ。これは妙案、乗った、乗った!とばかりに、目を輝かせて手をぱちりと合わせた。グリフィスとシャーリーの二人の間に割って入って、二人の手をとって掲げる。

「あ、いーこと思いついちゃった。一週間後ぐらいに、ちゃちゃっとロウラン家の結婚式を挙げましょう。そしたら、マリーさん愛機と、あたしたちカメラマン隊の名誉挽回のチャンス到来っ! 一石二鳥ってこのことよね~」
「おいおい。自分の失敗を棚に上げて、僕らをダシにつかうのか」

ルキノに挙げられた手を邪険そうに振り払い、冗談じゃないぞとばかりに首を震わすグリフィス。インテリ眼鏡がずれそうになっていて、まぬけな顔にみえてしまう。

「それ、ちょっといいかも。ジューンブライドなんだし、今月はいいよね。三〇日の日曜はどお? この日は大安吉日でお日柄もいいよね。しかも一粒万倍日。お給料日が二十五日だから、お祝い金も集まりやすいよ。場所の予約は任せといて! いまなら、あたしの運転したヘリで新郎新婦が空中ダイビングでの入場演出つきだよ」
「そんな命知らずなことできるかぁあああ! 僕とシャーリーは魔導師じゃないんだから!」
「なるほど名案。あと十日もあれば、試作段階の『空から写ルンです・フォートレスモード』が完成できる」

アルトがかってにはしゃいでトントン拍子に日取りまで決め、マリーときたら試作機の見せ場に胸を弾ませている。グリフィスは無理無理絶対無理とだめ出しをくらわせていたが。隣のシャーリーは、ほうぅ、と夢見る乙女のような密やかで甘い息をつく。

「でも、そういうの。女の子はいちどは憧れるのよね~」
「え?」
「グリフィスくんにお姫さま抱っこされて、空から颯爽と登場。いいわねぇ~、痺れるぅ、憧れるぅ~」
「シャーリー、君、まさか…本気で?」

もし、もし。シャーリーさん、こっち見えてます?とばかりに、ぽうと妄想の世界に耽った恋人の前で、手をなんべんも行き来させた。シャーリーは、乙女ちっくに腕を組んできた。

「だって、グリフィスくん、言ってくれたじゃない。シャーリー、君のためなら何でもしてあげるって」
「それは言ったよ。ただ、それは言葉の綾というもので。できることと、できないことがあるだろ?」
「いい加減、オトコなんだから覚悟決めてほしいのに」

シャーリーの見つめるまなざしは真剣そのもの。じぃと見つめられ、ねだられ、それでも顔を真っ赤にさせたまま約束できないグリフィス。ふんぎりのつかない男のみぞおちに、もぉ!とシャーリーはパンチを一発浴びせた。



【目次】魔法少女リリカルなのは二次創作小説「Fの必要」シリーズ




この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「The Final Feast」 Act. 6 | TOP | 「The Final Feast」 Act. 4 »
最新の画像もっと見る

Recent Entries | 感想・二次創作──魔法少女リリカルなのは