goo blog サービス終了のお知らせ 

陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

「The Final Feast」 Act. 6

2025-03-06 | 感想・二次創作──魔法少女リリカルなのは

女の力とはいえ急所に当たったようで、グリフィスは青い顔をしながら、膝を折ってうずくまりかけた。

「最近さ、シャーリーさんて凶暴になったよね」
「うん、ちょっとエイミィさんに似てきてるのかな」

アルトとルキノがひそひそ話。
喧嘩の種を蒔いたのは、そもそもこのふたりからなのに、とグリフィスは腹を抱えながら、上目遣いに恨めしげなまなざしを送りつけたのだった。

「でも、浮遊魔法って先天資質がないと、いくら訓練してもだめだもんねぇ。なのはさんに徹夜覚悟の短期合宿で鍛えてもらっても無理だろうし」
「て、ゆうか。なのはさんの地獄教練に耐えられる前に、ふつうに死ぬでしょ。軟弱なグリフィスくんだったら」
「じゃあ、これはどお。スバルのウィングロードに乗せた花飾りつきのトロッコ列車に乗って、新郎新婦が晴れやかにご登場」
「キャロの飛竜フリードから綱を下ろして、仲良くブランコに乗った新郎新婦入場、でもいいんじゃない?」
「アルフとザフィーラを先頭に総勢十匹の犬ぞりで、雪山の岸壁を愛の滑降なんてのは? 寒さと飢えで震えそうになってる花嫁を温めようと、花婿が肩を抱き寄せるの。ロマンスでしょ~」
「それなら、これはどうだ。聖王教会管理区域の湖の底で、水中ダイビング結婚式。神父さん役は、やっぱ素潜り得意なセインかな」

でるわ、でるわ。悪だくみコンビ、ルキノとアルトのプランB、プランC…えとせとら。そこにさらにもうひとつ、三人寄ればなんとやらで悪知恵を授けたのが、マリーだった。

「なのはさんのフライヤーフィンを研究して造られた、人口飛翔装置『飛べルンです』くんがただいま鋭意開発中なんです。空が舞台ならちょうどいい。それの実験も兼ねて、お二方に飛んでもらいましょう」
「あ、それいいかも。牽引役がいると、そっちに気をとられちゃうもんね」

三人が示しあわせて、がっつり三竦みの握手を交わしあった。グリフィスは情けないやら、悲しいやら。

「かってに決めないでくれよ。僕の気も知らないで」
「なに言ってんの。第二の人生の盛大なセレモニーの仕様を語り明かすのは、女の子のロマンなのよ。結婚式でつまづいた夫婦の七割は三年以内に離婚するっていう統計もあるんだから。きっちり式は挙げとかないと」
「グリフィスくん、私とまだ…するのが嫌なの?」
「違う、そんなことない!そうじゃなくて」
「「「そうじゃなくて? なぁーに?」」」

答えを欲しがる大合唱がやじ馬三人娘から向けられる。やけくそ顔のグリフィスは痛くなったこめかみを、指先でおさえていた。言うまいか、言うべきか。口元がなにかをつぶやいている。やがて、腹を据えたとばかりにシャーリーの正面に向き直った。グリフィスの目にはつよい覚悟の光りがあった。

「シャーリー、あのさ、よく聞いてくれ。恥ずかしいけど、君に隠してたことがあるんだ」
「隠していたことって…」
「まさか、すでに好きな人がいるとか」
「隠し子がいたりするとか?」
「そこの外野ァ、横から口出しするなぁああああ!」

ぐあ、と白目を剥いて威嚇するグリフィスに、アルトとルキノがそそくさと、お叱りの飛ばない遠さまで爆速で身を引いた。サッカーのボードゲームのような身のこなしで。

グリフィスはそこで、ひとつ咳払い。
シャーリーの両手をとって、かたくかたく握りしめた。熱いまなざしを、ただひたすら恋しい人だけに送る男の姿だった。

「君のことを愛してるあまり…その、ずっと言えなかったんだ。君を驚かせちゃいけないと思ってね。僕は待ってたんだ。でも、そろそろ打ち明けてもいい頃だね。だって、君と僕は小さな頃からの長い付き合いなんだから。おちついて、よく聞いて欲しい」

やだ。どうしよう。心臓のどきどきが鎮まらない。
シャーリーは溢れる期待をこめて、恋人を見上げながら言葉を待った。



【目次】魔法少女リリカルなのは二次創作小説「Fの必要」シリーズ




この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「The Final Feast」 Act. 7 | TOP | 「The Final Feast」 Act. 5 »
最新の画像もっと見る

Recent Entries | 感想・二次創作──魔法少女リリカルなのは