陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

漫画『魔法少女リリカルなのはViVid』第19巻・第20巻

2024-01-03 | 感想・二次創作──魔法少女リリカルなのは

魔法少女リリカルなのはシリーズの第四期として、2009年にダブル漫画連載されたのが次世代を主人公にした「魔法少女リリカルなのはViVid」および「魔法戦記リリカルなのはForce」。少年主人公の後者は連載が無期停止になってしまいましたが。前者のほうは好評をえて、8年6か月もの長期連載を果たします。最終巻が出てたのは2017年の年末。

高町なのはの養女ヴィヴィオを主人公に迎えた新シリーズ。
当時連載されていたKADOKAWA社のコンプエース誌が毎月楽しみでとうしょはしっかりレビューしていた覚えがあります。…けれども、新キャラが続々増えてきたり、ヴィヴィオとアインハルトの因縁がなかなか明かされなかったり、スポーツバトル漫画ぽくなって物足りなさを感じ、10巻ぐらいまでで購入をとめたものです。今回は、第19巻・第20巻だけ手元に保管していましたので、そのレビューを残しておくことに。書いたのは2023年ですが、20周年記念の2024年に発表予定の投稿にしています、あしからず。


魔導格闘技ストライクアーツの公式試合出場を機に、多くの仲間たちに囲まれて、選手としても成長した高町ヴィヴィオ。ついに養母の高町なのはとの試合が組まれます。この親子バトルって、たぶん、いつか実現するんじゃないかって思った方多かったのでは。だって、なのはといえば、闘って和解のアニメなんですもの。魔法少女に少年バトル漫画の情熱を持ち込んだのがこちら。

第19巻はヴィヴィオが休憩タイム中に、なのはとフェイトとのエキビジョンマッチといったところ。
時間制限ありなので引き分け。飽き足りない戦闘の鬼の教導管は、なんとヴィヴィオの戦友たちを誘って稽古というかしごきというか、とにかく遊んであげています。

そしていよいよ、夢の母子対決がスタート。
ヴィヴィオのコーチであるノーヴェや、聖王教会のメンバー、競技仲間の友人たちなどなどが見守る中で、大人モードに変身したヴィヴィオは近接戦の打ち込みスタイルながら、空戦上手で遠隔砲撃が得意の高町一尉と善戦をくりひろげます。

ぼろぼろになりながらも、会心の一撃がなのはの顔にクリティカルヒット!
――というところで次の最終巻に。

第19巻の見どころは、アニメ第三期StrikerSの終盤聖王のゆりかご戦での記憶を絡ませた、母子の感情の高ぶりがしっかり描かれていたことでしょうか。ここだけは要注目。

続く最終巻では、ついに宿命の母子対決にピリオドが。
親離れをしたがるので必死に反抗しているかのような娘、負けられない母親の意地。勝ったのははたしてどちらなのか。なのは渾身の最大最強の必殺技スターライトブレイカー(常人が浴びたら即死します(爆))が容赦なしにヴィヴィオを直撃。武装を解いたヴィヴィオは倒れ伏していますが、その後、意外な結末に…。この勝敗のつけ方、異論はありそうですが、まあヴィヴィオの通過儀式としてはこんなもんでしょうか。この親子、毎年これから本気で闘っていそうですが、家は壊れないのかな。まあ、仮想空間にしてバトルにするんでしょうね。

いっぽうストライクアーツ公式戦のチャンピオンになったアインハルトには、新たな挑戦者が現れます。
彼女もまたスポーツを通じて、更生し、過去の覇王イングヴァルトの記憶から解放されていく。けっきょく、この「前世の彼」の記憶ってなんだったんでしょうね。もう少し組織的な陰謀とか、深い何かがあるように思ったのですが、途中を読み飛ばしたせいかわからずじまいでした。聖王女オリヴィエと青年王イングヴァルトに因縁がある血統の新キャラも登場したみたいですが、むだにごちゃごちゃキャラが増えて話が横道にそれ過ぎっていった感があります、このシリーズは。

ラストはやはり永遠の好敵手にして盟友ヴィヴィオとアインハルトとの一騎打ちカット。
未来に向かって少女たちが希望に溢れながら前に進んでいくことが示されます。


改めて読みなおしましたが、二巻ふくめて、三十分もかからないうちに読了。
戦術だのどうこうだのの理論的な台詞や解説部分はほんとんど読み飛ばしました。いや、ごめんなさい。細かすぎて理解したくないんだ、うん。連載当初は魅力的な絵柄だと思ったのですが、作画担当の藤真拓哉先生お疲れだったのでしょうか。格闘部分はたしかにしっかりと描かれているのですが、表情がどのコマもほぼ同じ、ワンパターン、繰り返し。コピペしてんのかてぐらいに。真正面顔とか、ウインクばかりしている顔とか。キャラもみんな小学生フェイスでわかりづらいです。なのに、首から下はけっこうむちむちして肉づきよく描いているから、アンバランスでなんだか不気味なんですよね。シティハンターの北条司みたいな、全体的にリアル志向の絵柄だったら合ったのでしょうけれど。藤真先生はほんらいは、そういう画風だったのを、売れ筋のロリ絵にむりやり慣らしたとも聞いた覚えがあります。この人のカラーの一枚絵はすごく好みなんですけどね、イラスト向きなのかも。

原作の都築真紀先生とのコンビで順調にスタートし、とうしょは「Force」とは異なる百合路線で期待も大きかったのですが…ちょっと残念ですね。カワイイ絵が好きな方はいいのですが、私としては顔にもうちょっと艶がほしかったんですね。微妙な感情の綾がほのめかされている表情といった。戦闘もところどころ固かったし。バトルでいえば、学研版の漫画担当のほうが上手かったのでは?

あとがきで、都築×藤真のコンビはコンテ構成に川上修一氏(「魔法少女リリカルなのはINNOCENTS 」作画担当)を迎えて「なのはReflection The Comics」を連載スタートすると告知が。これ、劇場版になったあの作品の漫画版でしたっけ?

このViVidシリーズ、2009年当時はすごく楽しみにしていたんです。
でも、学研版ではなくカドカワのコミカライズになってから、ちょっと同人色というか幼女好きさんたちにおもねってしまったせいで、内容が浅くて間延びしてしまったな、というのが私の印象です。でも、これだけ長く連載が続いたわけですから、人気はかなりあったのでしょうね。アマゾンでも売れ行きがよかったようでしたし。

毒づいて済まないのですが、この最終巻も近所の書店では入手できず。
県中心部の大型書店を回って、しかもあったのが特別価格の肌色率高めのポスター付きのものだけ。一冊が割高のカラー版も同時発売されていたせいか、通常版も全体的にトーンがかっていて、白黒のメリハリがなく、コマ割りもごちゃごちゃして、漫画としては優れたものではなかったと感じます。あくまで、人気アニメの作品ファンにビジネス上手に展開させた派生作品といったところ。

原作者の都築先生はキャラを量産しすぎて旧キャラが不憫な扱いを受けたり、地味になったりする傾向があって、シリーズを重ねるたびに旧作ファンは離れていきやすいのかも。

私自身はアニメの第三期がいちばんお気に入りなのですが、無印版のなのフェイ派におもんばかったのか、のちに、「Force」の作画担当の緋賀ゆかり先生に担当させて、アニメの漫画版リメイクをしています。その「魔法少女リリカルなのはORIGINAL CHRONICLE The1st」も入手済みですので、いずれレビューはまた。それにしても、このシリーズ、いったいどれくらい派生作品あったんでしょうか。ViVidかForceかの二次創作めいた公式のコミック版もあったらしいし。新作が出てくるたびに公式の歴史が書き換えられていくようで、もう、設定のどれが正しいのかわかりません。やはり、主演声優の演技や主題歌の人気にあやかったアニメありきの作品でしたね。

私の中ではいまリリカルなのは熱が冷めてしまっているので、どうしてもダウナーな感想になってしまいファンの方には申し訳ないです。
最近はこのアニメ、いろんな有名作とコラボしたり、ドンキと組んで商品開発したりとビジネス的にはやり手なのですが、やはり、パチンコの機種に採用されたり、ガチャになったりという経緯にはどうしてもなじめなくて。お金を落とすひとがいないとコンテンツ人気が維持できないのはわかるのですけれども、ファンが見たいのはしっかりとキャラが動いていく物語じゃないかと思うんですよね。私自身が老いてしまったせいで、こうした低学年向けに見える内容のものが受け付けなくなったのかもしれません。あと、これが連載されていた当時、私の人生上、あまりいいことがなかったのも災いしたとしか。

いろいろ言いましたが、第四期の主人公としてのヴィヴィオの話という設定はすごく好きでした。
なんだかんだと19巻の母子の交錯は胸に迫るものがありましたし。しかし、世の母親はこういった殴るしつけでなくて、もっとこう、心の交流を心がけたいものですよね。あと、ドラマCDの「StrikerS X」ででてきた古代ベルカ生き残りのイクスヴァリアも出てきましたが活躍が乏しかったような。ドラマCDは番外編でも名作ストーリーが多いので満足なのですがね。

リリカルなのはViVidは、2015年に第三期アニメとは違ったスタッフでアニメ化され、スピンオフ作として2016年にViVid Strikeも放映されましたが、けっきょくどうなったんでしょうね。劇場版の「Reflection」と「 Detonation」は好評だったみたいなのですが、なのは・フェイト・はやてを暗黒キャラにした三人娘があまり好きじゃないので敬遠しています。時間があったら観たいけど。

(2023/06/10)







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