夜の底を光の円盤で切り取りながら、何かが近づいてくる。
それは電車とは違った速力で駆けていた。枕木をゴムの臭いのする二つの車輪が擦るように滑り、けたたましく敷石を撥ね散らかしながら、豪快なエンジン音が響いてくる。
聞き覚えのある唸るような少年の怒号が、車体の騒擾を貫いて二人の耳に届いた。
「姫子、どこにも行くなぁ―――ッ!!」
「大神君!」
姫子の眼差しがヘルメットの少年に奪われる。お邪魔虫の介入に美しい唇を歪める千歌音。
「バイクで線路を疾走するなんて、非常識な!道路交通法違反で免許停止にされるわね」
「公道を馬で突っ走った姫宮だってどうなんだ?お互い様だろ」
「くッ!…減らず口を、この男は…」
「姫子、俺が必ず君を護ってやる!オロチからも、孤独からも。だから、どこにも行くな!俺の傍に安心して……のわぁあああああああアアア――ッ!!!」
突如、反対方向から猛スピードで走ってきた列車に跳ね飛ばされる大神ソウマ。
姫子の告白に気をとられ前方不注意だったらしい。優良ドライバーへの道は遠いです。
急行列車は何事もなかったように通り過ぎた。
「あっ、大神君が…」
「また、静かになったわね…」
大神の行方なぞ、全く頓着しない千歌音である。姫子の手を握り締め、深く縋るような想いをこめて、ゆったりと言葉をつむぐ。
「姫子、どこにも行かないで。姫子がいなくなったら私はとても悲しい…」
「千歌音ちゃん…!」
少し嬉しさの混じった顔の姫子を、千歌音は抱き寄せた。
「それにね、姫子が村から出て行ったらオロチの手による被害が拡大するのよ」
懐から電卓を取り出して、ピピピと数字盤を叩く。示された額は、姫子にとって驚愕の桁数だった。
「村民の生活の損害賠償やら復旧事業やらで姫宮家が抱える出費は大変なのよ?大神君が巨大ロボットの搭乗者って知れ渡ってしまったせいで、なぜかウチが関係者と思われて。だから、大人しく私の傍にいなさい、ね?」
笑顔で同意を求め、言い含めるような強い口調で諭す千歌音に、姫子は黙して応ずるしかなかった。
(千歌音ちゃん、結構現金なんだね…)
なんて口が裂けても言えやしない……――。
【後書きという名の悪あがき】
別にソウマ嫌いじゃないけど、ギャグにしてみたかっただけ。
ほんと、しょーもないオチでごめんなさい…。
それは電車とは違った速力で駆けていた。枕木をゴムの臭いのする二つの車輪が擦るように滑り、けたたましく敷石を撥ね散らかしながら、豪快なエンジン音が響いてくる。
聞き覚えのある唸るような少年の怒号が、車体の騒擾を貫いて二人の耳に届いた。
「姫子、どこにも行くなぁ―――ッ!!」
「大神君!」
姫子の眼差しがヘルメットの少年に奪われる。お邪魔虫の介入に美しい唇を歪める千歌音。
「バイクで線路を疾走するなんて、非常識な!道路交通法違反で免許停止にされるわね」
「公道を馬で突っ走った姫宮だってどうなんだ?お互い様だろ」
「くッ!…減らず口を、この男は…」
「姫子、俺が必ず君を護ってやる!オロチからも、孤独からも。だから、どこにも行くな!俺の傍に安心して……のわぁあああああああアアア――ッ!!!」
突如、反対方向から猛スピードで走ってきた列車に跳ね飛ばされる大神ソウマ。
姫子の告白に気をとられ前方不注意だったらしい。優良ドライバーへの道は遠いです。
急行列車は何事もなかったように通り過ぎた。
「あっ、大神君が…」
「また、静かになったわね…」
大神の行方なぞ、全く頓着しない千歌音である。姫子の手を握り締め、深く縋るような想いをこめて、ゆったりと言葉をつむぐ。
「姫子、どこにも行かないで。姫子がいなくなったら私はとても悲しい…」
「千歌音ちゃん…!」
少し嬉しさの混じった顔の姫子を、千歌音は抱き寄せた。
「それにね、姫子が村から出て行ったらオロチの手による被害が拡大するのよ」
懐から電卓を取り出して、ピピピと数字盤を叩く。示された額は、姫子にとって驚愕の桁数だった。
「村民の生活の損害賠償やら復旧事業やらで姫宮家が抱える出費は大変なのよ?大神君が巨大ロボットの搭乗者って知れ渡ってしまったせいで、なぜかウチが関係者と思われて。だから、大人しく私の傍にいなさい、ね?」
笑顔で同意を求め、言い含めるような強い口調で諭す千歌音に、姫子は黙して応ずるしかなかった。
(千歌音ちゃん、結構現金なんだね…)
なんて口が裂けても言えやしない……――。
【後書きという名の悪あがき】
別にソウマ嫌いじゃないけど、ギャグにしてみたかっただけ。
ほんと、しょーもないオチでごめんなさい…。