陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「セブン・イヤーズ・イン・チベット」

2010-07-17 | 映画──社会派・青春・恋愛
1997年の映画「セブン・イヤーズ・イン・チベット」は、「セブン」「12モンキーズ」に続くブラッド・ピットの超話題作。
学生時代に大学図書館で視聴したことがありますが、なぜか内容を勘違い(同胞の登山家が悪だと思っていた)して覚えこんでいた映画です。

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1939年、オーストリアの登山家ハインリッヒ・ハラーは、身重の妻を残し、ヒマラヤ登頂めざして旅立つ。
しかし、転落事故や雪崩によって踏破への道は断たれる。さらには、第二次世界大戦の勃発によって、ドイツとイギリスの関係が悪化。英国軍の植民地インドで捕らえられ、捕虜収容所送りに。仲間の登山家ペーター・アウフシュタイナーとともにからくも脱走したハインリッヒが辿り着いたのは、禁断の聖地チベットのラサだった。

祖国に残した妻と息子からは絶縁状態のハインリッヒは、若き指導者ダライ・ラマの家庭教師となり、まるで父子のようにこころを通わせていく。だが、1946年、中国共産党の中国人民解放軍がチベットに侵攻し街は戦乱の渦にのみこまれていった…。

ハインリッヒがチベットの仕立て屋の娘に恋するも、ふられてしまうくだり。
可哀想な気もしますが、この主人公、けっこう自己中心的な人として描かれているんですよね。
なんでも一番を目指さないと気が済まない西洋の列強主義と、チベット流の自我を捨てた平和思想との対比。若い娘から、そしてまだ年若いダライ・ラマから語られる不殺の精神。聖地の生活を脅かす中国の軍人のほうがよほど大人げないように思えますね。

チベットでの七年間の滞在を経て、帰国したハインリッヒの成長がラストに窺えます。

監督はジャン=ジャック・アノー。
原作は実在の登山家ハインリッヒ・ハラーの同名著作より。
共演は、「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」のデイヴィッド・シューリス。

近年のチベット動乱を考えるには、いい材料となる映画。
作中ではドイツに属国にされたオーストリア人として描かれているけれど、実際のハインリッヒ・ハラーはナチス親衛隊員で、ドイツによるオーストリア併合も支持していたそうです。
ユダヤ人の血をひく業界人が多いハリウッドなので、ハインリッヒの性格がやや傲慢に描かれていたのはそのせいかもしれませんね。

ダライ・ラマ十四世は現在インドに亡命中。オウム真理教から寄付金を受けたこともあり、チベットの完全な独立ではなく、あくまで中国政府統治下での高度な自治を主張しています。

近年経済成長めざましい中国資本主義の余波が、チベットにまで押し寄せてきたら、無理無欲の宗教なんて無味乾燥になってしまうのではないかしら、と思うのですが。映画など文明の利器に興味津々の、ごくふつうの少年として育っているダライ・ラマを観てますと特に。



(〇九年八月二十六日)

セブン・イヤーズ・イン・チベット(1996) - goo 映画


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