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陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

長編の物語はいっそ最終巻から読んでしまえ

2025-04-26 | 読書論・出版・本と雑誌の感想

本をこよなく愛する読書家の皆さんにはあるまじき、外道な読書方法を伝授してしまう、ふらちな記事です、今回は。

2021年頃にファスト映画なる動画が物議をかもしました。
人気の映画を短縮して編集したりなどして、あらすじを知らせてしまう動画。映画のみならず、ゲームの実況や漫画・アニメ・小説のネタばらしの動画もあるようです。著作権違法ではないか云々が問われましたが。ここではその違法性を問うのはさておき、なぜ、こうしたてっとり早く粗筋を知りたがる傾向があるのでしょうか。

SNSなどを見ますに、●●という作品を履修しなきゃダメ!みたいな言説がはびこっています。
それを観ないとヲタクを名乗れないとか、ナントカ。でも、その話題性にのっかりたいばかりに、多数の作品を享受していたら、とてもではないが時間がかかってしまいます。

私も映画作品を借りてみる前に、アマゾンレビューで感想を追いかけたことはあります。
それは文学でも漫画でも同じです。質のいい、評判のいいものと付き合いたい。お金も時間も限られているのですから、そう思うのは当然でしょう。ハズレを掴みたくないのです。

私も一定の漫画家さんの作品を定期購入してはいますが。
さすがに10巻近くになってくると、新刊が出るたびに買い求めていたわくわく感が薄れてしまい、ついつい買いそびれてしまうことがあります。その作家さんの作風に飽きたというわけではなく、単純に一巻ごとのあいだの数箇月を待ちあぐねるのがしんどいのです。そうなると、いったん中断して完結するまで買い控えてしまうこともありました。作家のファンとして失格でしょう。

人間はどうしたって、何冊も巻を重ねてくると要求が大きくなってしまいます。
初回の出だしの良さが薄れたり、謎だった部分が徐々に明かされたのに、新キャラが登場して主人公格の大株が奪われたりと、読者としてあまり望まない方向へ転がって行ってしまうと距離を置きたくもなります。

以上はもともと最初から追いかけている場合ですが。
気になる小説があるけれども、上下巻でボリュームがかなりあるので、読み通すのはしんどい。なので、横着なのですが、下巻だけさらっと読んでしまった…ということもあります。上巻の内容は本にの背表紙などにあるあらすじや、巻末の解説文などでアタリをつけて、最終巻を読むのです。

この読み方では最初のほうにある伏線の回収などがわからないため、正直、面白みはないでしょう。
けれども、その物語で著者が言わんとしていることはだいたい掴めます。大概の物語はクライマックス時に重要な盛り上がり地点が来るように設計されているはずだからです。


この読み方は前半部で主人公たちが幼すぎてイライラしたり、展開がものすごくスローな場合はおススメです。そもそもじっくり付き合って読みほぐせばいいのですが。まとまった読書時間が取れない社会人では、コツコツ毎日数頁ずつ読んでも、週イチかそれぐらいの頻度ではキャラの名前や特質すら忘れ、なんども行き来してしまう羽目になりかねない。それならば、いっそ重要な部分だけ集中読みしたほうがよいのではないか。とまあ、そんなふうに思うわけですね。

実際に、話題の漫画でさすがにアタマから読みたいとは思わないが締めくくりが気がかりなので、最終巻だけを購入して、感動したので、その一巻だけを折に触れて読み返していることも、私にはあります。途中経過の段階でかなりキャラクターが凄絶な目に遭うようなストーリーだと、もう最終回で幸せになってくれた部分だけ拾い読みしておきたいという。物語でこころをかき乱されたくないがために、私がとる防衛術みたいなものなのです。

というわけで。
ネット上のあらすじをたどって物語を理解した気になるよりも、長期シリーズの小説や漫画の最終巻だけ買って読んでしまうという離れ業もあるよ、というお話でした。おしまいがよければ、はじめて全巻読んでもいいとすればよいのではないでしょうか。

ちなみに怖いのは、あまりに長期に連載された作品で、作者が途中で亡くなってしまい未完結のまま終わってしまうことです。こういう可能性もあるので、10巻以上の連載になった漫画はとくに、随時購入を控えたくもなるのです。まったく読者としては、作者様に失礼極まりないのですが。

(2022/07/30)



読書の秋だからといって、本が好きだと思うなよ(目次)
本が売れないという叫びがある。しかし、本は買いたくないという抵抗勢力もある。
読者と著者とは、いつも平行線です。悲しいですね。





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