ふたりの足は、女子のロッカールームへと向かっていた。
女子ロッカー、そう女子ロッカーである。OLの赤裸々な噂話から、体育会系女子の度のすぎた友情までじんわりいい具合に醸成されてしまう、乙女の聖域である。ここで鍛えられた女子が脱ぐものは、さわやかな血と汗と涙を吸ったトレーニングウェアや制服だけではない。たとえこの部屋を出るときには取り繕いの笑顔をスタンバイしたとしても、ロッカーの扉の裏にある鏡は、年年歳歳戦い疲れた女子の綻びた顔を忘れてはいないだろう。そしてまた、在籍人数にしては多すぎるグレーのボックスに囲まれた空間の中央にあるベンチは、手早い着替えが要求されるこの部隊にあって、長居してしまう同僚のからだの温みを覚えてもいた。
なのはに肩を組まれたまま、そこへ連れ込まれたというに等しいティアナは、顔が熱くほてってしかたがない。
仕切りを隔てた向こうには、共同のシャワー室がある。先に教導を終えたキャロやスバルはもう済ませたのか、誰もいなかった。自分から望んで二人っきりになったくせに、いざとなると誰かいてほしいとティアナは軽く神頼みしてしまっていた。
朝っぱらから三時間みっちりの教導を受けたティアナは、早く汗を流したかったから、もちろん向かう場所であったはず。いつも訓練のあとにシャワーは日課になっているので準備のよかったティアナは、すぐにもシャワーに向かうはずが、その足を止めているのはひとえに同行の師。
さっきのなのはへの答えは出ていない。なのはも答えを出していない。答えを先読みしてしまう自分も怖い。
「あの、なのはさん。お付き合いってまさか、ここでじゃないですよね?」
「うん、この後でね。汗流しておいで」
ティアナを解放したなのはは、邪気のない微笑みをしつつロッカーに立っていた。教導官の制服の上着を脱いで、タイを緩めているので、ティアナは不安になった。
「この後で」と返されても、やはり不安は募る。
「あのぅ、でも…」
「心配しないで。シャワー浴びてるときに襲ったりしないから」
「そういう冗談はやめてくださいッ!」
「ティアナ、なにか警戒してる?」
小首を傾げて言問うなのはに、ティアナときたら、思わずラッパを急に吹いたような素っ頓狂な声で返してしまう。
「し、してないですっ!」
【目次】魔法少女リリカルなのは二次創作小説「高町家のアフターレッスン」