陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「コニャックの男」

2021-06-09 | 映画──社会派・青春・恋愛

故郷を離れて異国で成功した男が幼なじみの娘に再会すべく帰国する。…と、こう書くと、なにやらとても微笑ましいラブロマンスに聞こえますね。だが、しかし。男と女にはひと筋縄ではいかぬ、もつれにもつれた事情がありました。

1970年のフランス映画「コニャックの男」(原題:Les Mariés de l'an II )は、十八世紀、動乱のフランスを舞台にした痛快時代劇。おフランスって、ベルばらのイメージさながらの優雅な雰囲気が漂うと思いがちですが、時代が時代だけになんとも猛々しい。

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渡米して小麦の輸入商に仕え、ついにはその一人娘の婿の座まで射止めたニコラ・フィニエール。しかし、教会での挙式のさなかに、その婚約は破棄されてしまいます。なぜなら、彼には祖国フランスに残してきた妻がいるはずだから。

貿易船に乗り込み一路、故郷を目指したニコラ。
その真の目的はといえば、元妻のシャルロットと再会し、離婚書にサインしてもらうことでした。所在不明のシャルロットを探すうちに、否応なく、革命直後の騒乱に巻き込まれていきます。

共和国国民軍の指揮官の命を狙う侯爵の妹ポーリーンを救ったばかりに死刑にされそうになったり。その妹に惚れられてしまったものの、その兄の侯爵や、妹に懸想する求婚者に襲われたり。実は、その侯爵こそが元妻の現在の愛人であり、さらにシャルロットときたら王妃を夢見ていたので、ちゃっかりフランスのもと王子にも言い寄られていました。

米国に帰れば金持ちの婿殿という立場からすれば、元妻にすでに新たなパートナーがいるなんて願ったり叶ったりのはず。ところが、昔なじみで気心も知れている仲だったせいか、ニコラはなぜか、シャルロットを侯爵や王子から引き離そうとします。不安定な共和国政府で首を吊るされそうになっても、なんだかんだで切り抜け、王党派と国民軍とが全面対決する砲弾飛び交うなかでも、追いかけて追いかける。

けっきょく、元の鞘におさまるかたちのハッピーエンドなのですが、ラブコメドタバタ劇プラス、なかなか爽快なアクション。ハイスピードで進むので、終盤になると正直なにがなんだかの超展開なのですが、100分弱と短いので、まあ飽きることもなく観れるでしょう。

監督、脚本は、「シラノ・ド・ベルジュラック」で知られる、フランスのジャン=ポール・ラプノー。ノリがルイ・マル監督作「地下鉄のザジ」に似てると思ったら、脚本を書いた人だったんですね。
ミシェル・ルグランが手がけた音楽、なかなかいい旋律ですね。主演は「勝手にしやがれ」「気狂いピエロ」のジャン=ポール・ベルモンド、マルレーヌ・ジョベール。秘かに想い合っているがうえに屈折している侯爵の兄妹がワーズワース兄妹みたいで存在感ありますよね。主役ふたりのラブコメより、こっちに焦点当ててほしかったような。

(2014年6月17日視聴)






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