陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「女帝[エンペラー]」

2018-05-11 | 映画──社会派・青春・恋愛

今週末は母の日ということで、あちこちでセールやイベントを見かけますね。
今回はちょっぴり怖い母親がでてくる映画をご紹介いたしましょう。

2006年の中国・香港映画「女帝[エンペラー]」は、中国の五代十国時代(唐滅亡後の戦乱期)にあったある国の皇帝をめぐる愛憎劇。ワンカット足りとも手を抜かず美しい演出を心がけたこだわりが感じられる逸品です。

女帝[エンペラー] コレクターズ・エディション(2枚組) [DVD]
女帝[エンペラー] コレクターズ・エディション(2枚組) [DVD]ギャガ・コミュニケーションズ 2007-12-07売り上げランキング : 45139Amazonで詳しく見る by G-Tools


五代十国時代のある国では、謎の死を遂げた先帝に代わり、その弟リーが即位します。先帝の息子である皇太子ウールアンは仮面舞踏に明け暮れています。最愛の父を失ったばかりか、その死があきらかに叔父の奸計であったこと、さらには義母であり、かつては想い慕った仲であった若い王妃ワンが皇帝リーに娶られることになってしまったのだから。

残虐な方法でのしあがった暴君に見えるリーは、美貌の王妃を手にし、夜な夜なその愛に溺れていく。ワンに対する彼の誠実さは本ものでした。
いっぽう、王妃ワンは、にっくき夫の敵であり、あまつさえ思い初めし皇太子の命すら奪おうとするリーにかしづいてはいますが、その真意は別にありました。ウールアンを北国へ厄介払いする決断を下したリーに、ワンは復讐の決意を固めます。

主要三名の三角関係に、ウールアンの許嫁であるチンニー、そしてその兄のイン将軍の情愛も複雑に絡んで、ワンが練上げた復讐劇は意外な方面へ転がっていきます。愛する人間を守りたいだけの一心で、周囲をもみずからの本心すらも欺き、その美しさがゆえに権力の頂点に押し上げられていく悲しい女の生き様。悲劇でありながらあまりにも入り組まれてつ織り込まれていく人間の関係に、涙を通り越して、深い憐憫の情しか湧いてこないのでした。

ワイヤーアクションの動きがややあざといのですが、色鮮やかな衣装や舞台へのこだわりが高い美意識を感じさせてくれます。

監督はフォン・シャオガン。
出演は「HERO」「グリーン・デスティニー」のチャン・ツィイー、「活きる」のグォ・ヨウ、そしてダニエル・ウー。

台詞回しが秀逸なのですが、シェイクスピアの「ハムレット」を下敷きにしているからなのですね。それの翻案とは分からぬほどかなり大胆に脚色されています。最後に放たれた剣はどこから来たのかが気になります。愛するものを救うために大きな犠牲を払いすぎた主人公への報いだったのでしょうか。


(2011年5月2日)

女帝[エンペラー]-goo映画

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 日本映画「お早よう」 | TOP | 明窓浄机をつづけましょう »
最新の画像もっと見る

Recent Entries | 映画──社会派・青春・恋愛