
以前、私は古本屋で文学の文庫本や新書をよく購入していました。
お安めのセール品もあるし、ポイントも溜まるしで。
ところが、こうした買いあさりを続けた結果、家のなかが積読本だらけに。
文庫本だから軽いとはいえ、何十冊ともなると大荷物。現在、空き家へ一時移動していますが、いずれ処分を考えねばなりません。
そんな私は、ある作家の小説が、著作権切れで青空文庫にあるのを発見。
さっそくダウンロードして読んでみたものの、どうも読みづらい。
フリガナと正文とのサイズが同じだし、小見出しと本文との区別がわかりづらい。
これはテキストデータなので、読者が加工しやすいようにしてくれてはいるのでしょうが。このテキストをWordへ移して、段落や余白、文字列を整え、ページ番号をわりふって、見出しごとに目次をつくって。…という作業を考えるとめんどうくさくなって、やはり本で買った方がいいやとなったものです。
小説を本という形態で読むメリットは他にもあります。
評者の寄稿文や、カバー裏の文言や挿絵、あるいは各巻ごとの簡潔なあらすじ。本であればあたりまえのものが、こうした無料で読める電子テキストにはないのです。
文章だけは確かに読んでいるが、目で追っているというだけで、本を味わって読んだという満足感がないのです。やはり指で頁をめくったり、鉛筆で線を引いたりするのが楽しい。
その反面、電子データにはそれなりの利点もあります。
まず、データが失われない限りは劣化しないこと。クラウド保管できて、デバイスを問わずにどこでも読めること。さらには、自分で改変ができるので、注釈を入れたり、色替えをして楽しむことや、引用するためにコピーペーストもしやすいことです。本で気になった言葉を書きとめたい方にはとても便利ですね。
逆に活字と違って動かしやすいということは、壊れやすくもあるということです。
うっかりデータを消してしまいかねないですし、複数の日付で同じファイルを複製してしまい、どれが最新のものかわからなくなってしまうこともあります。本なら現物ですから、二重買いしたらすぐわかりますよね。
何巻分にもわたる長編だと、文庫で買ってもかさばる。ネット通販の中古だと、決済が電子ポイントのみでわずらわしいこともある。
しかし、データを改変して保存しておく作業もかなりめんどくさいし、それをやる時間があるなら読むのをあきらめてしまいます。
また文学作品は、電子データ上では横書きにした方が読みやすいものの。
どこか縦書きで、すこし狐いろに灼けた紙でないと味気なく見えてしまうものです。紙の薫りや手触り、そういったものが古典らしさを引き立てていることもあるわけで。
どちらを選ぶか、とても悩ましいところですね。
何回も繰り返し読みたいものならば、やはり本で揃えておくにしくはないのでしょう。
(2022/07/18)
読書の秋だからといって、本が好きだと思うなよ(目次)
本が売れないという叫びがある。しかし、本は買いたくないという抵抗勢力もある。
読者と著者とは、いつも平行線です。悲しいですね。