陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

「大神さん家(ち)のホワイト推薦」(七)

2009-05-25 | 感想・二次創作──神無月の巫女・京四郎と永遠の空・姫神の巫女

「ああ、眼に浮かびますね。あの金髪ツインテールの美少女戦士の人形を手にとりながら、『フェイトたん、萌え~♪』とかおっしゃっているアブナい先生のお姿が、ありありと!」
「言ってないッ!言ってないッ!神かけて言うが、言ってな──いッ!」
「休みになると、出張と称してじつは秋葉原に繰り出してるんでしょ? リュック背負い紙袋もちの電車男スタイルで、ウロウロしたりしてるでしょ?メイド喫茶の女子店員に握手迫ったりとかしたでしょ? メロンブックスや信長書店にはすっかり通い慣れてるでしょ?」
「してないッ!してないッ!神かけて誓うが、みじんもそんなことしていな──いッ!」
「ええ~っ、ほんとですかぁ~? 嘘くさいなぁ~?」
「ほんとうだよ!君は師匠を信じないのかね?」

まじめに言い募るところをみると、どうやら大神カズキ氏、ほんとうにそれの何たるかをわかっていなかったらしい。アニメキャラの名を聞いても知らぬ存ぜぬを押し通す。

「ああ、そうそう、実物を見たほうが早いですね。はーい、皆さーん、ご注目あれ! そのフィギュアというのはこれです。おや、これは可動式のお人形ですね。ほらほら、よく動くでしょう?ほら、こうすればお着替えもできるんでちゅよ~」
「わああああああっ。返しなさいッ!」

ユキヒトは、どこから持ち出したものか、カメラの前で美少女人形をいじくり回して体操させたり、脱がしたり。カズキは速攻でそれを奪いとった。ぜーはーと肩で大息をつくほど、興奮しているようだ。



「いったい、いつの間に盗んだんだい?!」
「人聞き悪いなぁ、しばらくお借りしただけじゃないですか」
「だから、これは今度の民俗学学会の分科会で発表する、現代視覚文化の研究材料なんだよ!断じて好きで買ったんじゃないッ!」
「あいかわらず、学者は趣味の追求をおごそかな研究と混同してる人が多いですね」
「度を超した愛がなければ、対象へのアプローチはできんよ。それが学究的であれ、性愛的であれ、おなじことだ」
「やれやれ、ま、いいでしょう」

ユキヒトは遊び飽きた人形を放り投げるみたいに、おふざけをやめた。しかし、彼の道化はいつ、くり返すのだかわからない。

「私のことより、ソウマの件だよ。どうなってるのかね、最近のあいつは」
「僕のマンツーマンの指導の甲斐があって、ソウマさんもいまじゃ立派なコスプレイヤーに成長してくれました」
「まさか、渡している小遣いは、同人誌とやらを買い込んでいるのでは?」
「よくご存じですね~。ソウマさんのベッドの下には、こっそり十八禁本が大量に隠してあったりして」
「やっぱり、君の入れ知恵かね?(プチ憤怒)」

カズキの血走った眼がユキヒトに注がれる。ユキヒトときたら、臆する気配はまったくなしだ。大きなリボンをつまんで、猫の耳のように動かす。猫の耳にお説教は利かない。

「カズちん、おこっちゃだめにゃーの♪」
「ネココくんのモノマネもよさないか?」
「怒りはからだを酸化させて、太るもとになります。顔の皺だって増えちゃいますよ~」
「いちいち、よけいなお世話だよ」



【目次】神無月の巫女二次創作小説「大神さん家のホワイト推薦」






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