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陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

魔法少女リリカルなのは二次創作小説「高町家のアフターレッスン」(十二)

2015-08-04 | 感想・二次創作──魔法少女リリカルなのは

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高町ヴィヴィオは、その日の夕刻、とてもとても退屈していた。

時計の針はもう午後七時近くを示している。
冬日が終わって日が長くなる時節だが、二月も下旬の七時はもうすでに夜といっていい。明々とルームライトに照らされた広い3LDKのマンションの一室に、しまい忘れた食器のように、彼女はぽつねんと残されていた。

彼女の感じる時間は、長い。あまりに長い。このあまりに退屈で落ち着かない時間を終わらせてくれる、待ち人が帰ってくるまでは長すぎる。
お世話係のアイナさんは、洗濯物の始末やお部屋の掃除、そして夕食の支度をすませてくれると午後五時まえには帰ってしまった。

それから一時間弱、ヴィヴィオはネットゲームにハマっていた。
対戦相手は、隔離施設にいる元ナンバーズの女の子たち。ノーヴェやウェンディとは格闘ゲームをやり今のところ、五分五分の勝負。チンクやセイン相手には、囲碁やチェスの頭脳戦だが最後にはかならず勝っている。「聖王陛下」相手だからといって遠慮しないで、と頼んではいるけれど、どうやらあれで彼女たちの全力らしい。「こういう頭つかうのは、クアットロ姉ぇが得意なんスよ」とウェンディは言っていたが、あの眼鏡のお姉さんにはあまりいい想い出がないので、勝負は避けたいところだ。だいいち、「あの」高町なのはの娘になっているのを知ったら怯えて近づきもしないんじゃないか、とヴィヴィオは思う。

きょうの遊び相手は四人全員で、パーティーを組んでRPGとやらをやった。
ほんとは五人全員でゴールまで長時間ゲーム世界に滞在しなきゃいけないらしいけど、ゲームの時間は一日一時間までと決められている。なのはママとの大切な約束だ。きょうの到達点はセーブできるらしいから、また全員の日程があえばはじめられる。

更生組の彼女たちは収容中の態度もよくて、また保護監査役のゲンヤ・ナカジマの後見もあってか、外部と連絡をとることが許されていた。社会復帰も近いだろう。
もしまた自由な生活を手にしたら、ゲームの世界みたいに四人お供にして陛下と遊びに行きましょう、なんて提案してくれているのは、チンクだった。

辺境無人世界にいるルーテシアとも、ちょくちょく動画つきメールのやりとりをしていた。
人の住まない地域だなんて寂しくて耐えられないとヴィヴィオは思うのに、年端もいかないルーは平然とした笑顔を絶やさなかった。モニタには、最近目覚めたばかりの彼女の母親と、お側付きの守護獣ガリューが控えていた。
ルーテシアとおなじ淡い瞳、長い髪をもつ女の人が、にこやかに手を振ってくれる。
同じ血が流れた母子、強い絆でむすばれた主従の獣と人。人少なくても緑豊かで幸せな環境。年の頃はおなじ、なのにルーがもっているものは、ヴィヴィオよりは確実に一個、二個多い。

ゲームを終えてからメールに気づいて、開いたのが午後六時過ぎ。
それから一時間このかた、ヴィヴィオの気持ちのすぼみが続いている。羨ましい──なんて思っちゃいけないのに。

「なのはママ、遅いな…」

ふかふかのムートンのマットに頬を埋めながら、ヴィヴィオは独りごちていた。
時計の針は、一秒ずれていくのすらおっくうに、震えながら進んでいた。


【目次】魔法少女リリカルなのは二次創作小説「高町家のアフターレッスン」



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