腹も減ってきたので深大寺門から一旦植物園を出て、蕎麦屋に行くことにした。
入場券の半券があれば再入園できるシステムである。
ところがその半券がない。
シャツの胸ポケットに入れたはずなのだが、みつからない。
あちこちのポケットを探すが、どこにもない。
K氏が〈半額で入ったんだから、また半額で入ったらどうッスか〉と言う。
いや、そういう問題ではない。
250円をケチっているわけでもない。
窓口に行って受付のお姉さんに
〈半券なくしたんですが、なんとかなります?〉
と尋ねる。
最近ワタシはこういう相談を平気でやるなあ、歳をとるとはこういうことか。
お姉さんは、小さなガイドブックに今日の日付のゴム印を押し、
〈これで再入園できます〉と優しい笑顔で渡してくれた。
ボケ気味の年寄りの扱いに慣れているのだろう。
ガイドブックに押された日付のゴム印。
園を出てすぐ右手の蕎麦屋に入る。
松葉茶屋という。
ここはK氏と昨年来た時も入ったお気に入りの店である。
松葉茶屋はエアコンの効いた部屋もあるが、ワタシたちは天井のないテーブル席がお気に入り。
K氏はいつものように生ビール。
ワタシは冷酒にするかと、メニューを見て驚いた。
8月の終わりにひとりで行った御嶽の茶屋で、一合300円だった澤乃井がここではなんと500円である。
K氏に話すと、〈御岳は沢乃井の隣りの駅だから安いんじゃないですか〉と言う。
〈隣駅つうてもよ、御嶽の店は標高900mやで〉とワタシ。
澤乃井を頼むのもなんだか釈然としない。
で、その下にある同じ500円の〈白鶴淡麗純米〉を注文。
アテはまず板わさである。
そのあと、焼き鳥二本、五目すりみ天、酒は〈白神山地の四季〉300㎖850円を注文。
焼き鳥もすりみ天も美味しかった。
K氏は生ビールの大。
〆はもりそば。770円は高過ぎやね。
店の叔母さんと話などして、再入園に腰を上げる。
〈続く〉