アンソニー・クインについて長々と書いてきた。
『25時』で最後にするつもりだったが、フィルモグラフィーを見てちょっと驚いたことがある。
1990年にアンソニー・クインは『老人と海』に出演しているのだ。
それも主人公の老人役である。
テレビドラマとして制作されたようだが詳細は不明。
劇場未公開だがビデオとDVDは発売はされている。
そのさいの邦題は『新 老人と海』で、レンタルもあるようだ。
『新 老人と海』のメディアのパッケージ。
監督はジャド・テイラーと聞いたことのない名前である。
監督作品を調べてみると戦争映画からSF、ミステリー、サスペンス、ヒューマンドラマ、社会派作品と多岐のジャンルにわたって作品がある。
見覚えのあるタイトルもあるのだが、残念ながらワタシは1本も観ていない。
映画化された『老人と海』といえばやはり1958年制作のスペンサー・トレーシーである。
当初はフレッド・ジンネマンが監督を務めていたが降板して、ジョン・スタージェスに代わった。
ジンネマンについては何度かこの連載で触れた。
監督を降りるについてはどのような事情があったのかはわからないが、ジンネマン版の『老人と海』もおもしろかったかもしれない。
ジョン・スタージェスは西部劇やアクション映画でよく知られている。
代表作といえば『OK牧場の決斗』(1957年)そして黒澤明の『七人の侍』(1954年)のリメイク『荒野の七人』(1960年)あたりか。1963年には『大脱走』もあった。
西部劇やアクション映画中心のジョン・スタージェスがヘミングウェイの文学作品を撮った経緯は不明だが、映画はとても良くできていた。
ワタシはテレビで数回観ただろうか。
それまでワタシが抱いていたスペンサー・トレーシーのイメージを覆すような演技だったと言える。
『老人と海』のスペンサー・トレーシー。
しかし、アンソニー・クインの方がこの作品の主人公としては適役のような気もする。
機会があればぜひ観たいのだがムリだろうな。