洋上風力発電と漁業 海外と日本の経験

Offshore wind farms and fisheries
”洋上風力発電と民主主義”

洋上風力発電と漁業 日本の経験#39 洋上風力汚職 レノバ株暴落前後に全株を売却 / 優良漁場をつぶす洋上風力発電 ~千葉県いすみ市沖 漁師が「待った」~

2023-09-10 11:31:20 | 日記

2023年09月07日 言論プラットフォーム“AGORA”(池田信夫)様から転載

洋上風力汚職 秋本真利の次の検察のターゲットは誰か

 

秋本真利議員が洋上風力の入札不正にからむ受託収賄の容疑で、東京地検特捜部に逮捕された。これ自体は予想されたことだが、こんな小物が入札ルールの変更なんかできるはずがない。

問題は追及が「本丸」まで行くかどうかである。検察の次のターゲットは誰か。この経緯を振り返って考えてみよう(肩書きはいずれも当時)。

萩生田経産相

2021年12月24日に、第1ラウンドの入札で3海域ですべて三菱商事グループが落札した。最低価格は11.99円/kWhという事前の予想を大きく下回るもので、当初は「コスト競争力のある再エネの拡大は大変心強い」など再エネ推進派からも評価は高く、同じルールで12月28日に第2ラウンドの公募が開始された。

これについて年明け2022年1月の萩生田光一経産相の記者会見で、彼はこう語っている。

事業計画の内容について、資金調達内容やそのリスク分析、あるいは対応について、今後精査して、かなり低価格という御指摘があったのですけれども、欧州なんかに比べるとまだ高いんですね。[中略]

ただ私、個人的にはいろいろな仕組みを見てみたかったなという気持ちがありますので、他のプロジェクトの人たちにも今後参加しやすいような仕組みというのは、是非今回の結果を踏まえていろいろ検討してみようかなと思っているところです。

これがのちに「萩生田氏がルール変更を指示した」といわれる根拠だが、その前段で「欧州なんかに比べるとまだ高い」と言っており、彼が6月に予定されていた〆切を延期してまでルールを変更するつもりだったとは思えない。

昨年2月17日の衆議院予算委員会で、秋本は国会質問で入札の審査基準の変更を萩生田経産相に要求した。

このとき秋本が制度の見直しを求めたのに対して、萩生田大臣は「試合のルールを決めて公示をしちゃって、そこに参加している人たちがいらっしゃる以上は、やはり途中でルールを変えるというのはどうかなと私は思っているんです」と否定的に答弁している。

ところが萩生田氏は3月18日の記者会見で突然、入札ルールの変更を発表した。

最後、3点目ですが、洋上風力の公募を見直します。ウクライナ情勢を踏まえ、エネルギー安全保障の面でも重要な脱炭素の国産エネルギー源として、エネルギー基本計画に基づく再エネ導入加速が急務です。

特に洋上風力は昨年末の再エネ海域利用法に基づく公募結果により、実際に太陽光等と競争可能なコストの大規模電源であることが明らかになりました。これまでも運転開始が早いことは評価項目の一部でしたが、今後の公募においては、価格だけでなく早期の導入という観点でも各社の競争を促す仕組みとしたいと思います。

このように価格より早期導入を重視しろというのは、秋本など再エネ議連が主張してきた論点である。奇妙なのは、この1ヶ月前には「途中でルールを変えるというのはどうかな」と言っていた萩生田氏が、いきなり入札延期を決めたことだ。

これは直後の3月22日の経産省と国交省の合同会議で事後承認された。このような前代未聞の変更をトップダウンで決められるのは、萩生田氏より格上の政治家しかいない。

菅前首相

秋本事務局長を初めとする再エネ議連は、2022年の年明けから猛烈な巻き返しを始めた。再エネ議連の柴山昌彦会長は「毎週、議連の会合に役人や業者を呼んで、入札の問題点等について聞き取りを行ってきました」と認めている。

秋本が頼ったのは、法政大学の先輩で再エネ議連の顧問でもある菅義偉前首相だった。菅氏は入札結果を説明に来た資源エネルギー庁の保坂長官を「おかしいんじゃねえか」とどなり上げたといわれる。

もう一人の登場人物は、レノバの千本倖生会長である。彼はこのルール変更の中心人物で、新しいルールは「レノバ方式」ともいわれる。

彼はDDIの元副社長で、電波行政の関係で菅氏とも親しく、当時、議員会館に出没する姿が目撃されている。現代ビジネスの記事では「(菅氏とは)以前から懇意にしていただいており、その面談の目的は洋上風力発電の入札ルール見直しではない」と面談の事実を認めた。

秋本はレノバの株主だったが、洋上風力の入札に失敗してレノバ株が暴落した前後に、全株を売却している。この購入資金はどこから得たのか。レノバから株を借りて利益を清算した「リクルート方式」ではないか、と国会で追及されたが、秋本は答弁を拒否した。

河野太郎氏

昨年3月18日に、第2ラウンドの入札が延期されたとき、再エネ議連の実質的なトップである河野太郎氏は、次のような祝福のツイートをした。

日経新聞が6月にこの問題を取り上げた記事を、彼はこう批判した。

これは語るに落ちている。彼は「クローズの会合の中身をエネ庁が流した」と批判しているが、役所がそういう内部告発をするのはなぜか。それはいったん公示した入札を途中で延期してルールを変更しろという不当な圧力への抵抗だろう。

彼がエネルギー基本計画をめぐってエネ庁を「日本語わかる奴、出せよ」とどなり上げたときも、この録音を週刊文春に提供したのはエネ庁の職員だといわれている。同じような会話が、洋上風力をめぐって行われ、それに怒ったエネ庁職員がマスコミに情報提供したことは想像に難くない。

いずれにせよ、この疑惑解明はまだ始まったばかりで、全体像がみえない。秋本の場合は職務権限(国会質問)、現金授受、請託(いずれも贈賄側が認めた)の3条件がそろっているので、受託収賄罪の成立は確実だが、他の政治家については金の流れがわからない。

ただ2030年までに40兆円にのぼる再エネ賦課金が、再エネ業者が政治家を買収する資金になっているので、金の流れさえつかめば、他にも再エネ議連のメンバーを摘発することは可能だ。再エネロビーの金は野党にも流れているので、そっちから火を噴く可能性もある。それがこの問題に野党がおとなしい理由である。

 

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JAWAN通信 No.143 様 2023年5月10日発行から転載

優良漁場をつぶす洋上風力発電 ~千葉県いすみ市沖 漁師が「待った」~

政府は、洋上風力発電を再生可能エネルギー推進の切り札として位置づけている。だが洋上風力も問題が山積している。漁業への影響も大きい。千葉県のいすみ市沖では、大切な優良漁場がつぶされるとして漁師たちが猛反対している。

(中山敏則)

◆候補地は日本有数の優良漁場

政府は、いすみ市沖を洋上風力発電促進の有望地域に指定した。候補地には磯根(沿岸の岩礁域)が広がる。海藻が生い茂る岩礁である。魚のすみかとなっている。広さは東京ドームのおよそ1800個分。日本有数の優良漁場である。風力発電の建設によってそこがつぶされると、漁師にとっては死活問題となる。そのため、候補地で漁を営んでいる鴨川市の漁師たちは猛反対している。

元東邦大学教授の秋山章男さん(故人)は、九十九里浜自然誌博物館を主宰していた。いすみ沖や南九十九里浜の生態系に造詣が深かった。秋山さんは、いすみ市の沖合に広がる磯根を「いすみ根」と名づけた。こう述べた。

「いすみ根は、水深10~20mの起伏豊かなところにカジメの林が海の里山のように広がっている。海中林というべきものである。1本のカジメの根には、数百もの生物が棲みつき、それらがいすみ根の生物を支えている。いすみ根は日本有数の漁場となっている。北上する暖流の黒潮と南下する寒流の親潮がぶつかりあうところである。そのために良好な漁場が形成され、多種多様な魚介類が生息している。イセエビ、サザエ、アワビ、タコ、イシダイ、イワシ、アジ、タイ、ヒラメ、イナダ、スズキ、ウマヅラハギ、イサキ、フグ、ホウボウなどである。漁師にとって、いすみ根は重要な漁業資源となっている。いすみ根を『銀行』と呼んでいる漁師もいる。『元金』に手を付けずに『利息』だけでやっていけるからだ。私は南九十九里で1000種類の生きものを確認している。その南九十九里生態圏ともいうべき圏域の根幹をなすのがいすみ根である」(『JAWAN通信』第112号)

◆反対漁協を協議会から排除

千葉県の外房には15か所の漁港がある。そのなかで、鴨川漁港はいちばんの漁獲量を誇っている。鴨川漁港を拠点とする鴨川市の漁師たちは「いすみ根」で巻き網漁をおこなっている。獲るのは、ブリやサバ、イワシなどの青魚だ。

その優良漁場が洋上風力発電の候補地になっている。風車の数は三十何基と予想されている。洋上風力発電が建設されると、ここを重要な資源としている漁師たちは大打撃を受ける。そのため、鴨川市の漁師たちは洋上風力発電事業に反対している。

政府は、風力発電設備ができることで利害関係が発生する漁業者を協議会によぶことを義務づけている。ところが、いすみ市沖の洋上風力発電事業を話しあう協議会に鴨川市漁協はよばれなかった。

協議会の名称は「千葉県いすみ市沖における協議会」。政府と千葉県が共催し、第1回会合が昨年2月に開かれた。そこによばれたのは、候補地で漁をおこなっているほかの漁業協同組合(夷隅東部漁協、御宿岩和田漁協)と県漁業協同組合連合会だけだった。

この問題を今年3月12日放送のBS-TBS「噂の!東京マガジン」が「噂の現場」でとりあげた。鴨川市の漁師たちは協議会からの排除を批判し、こう訴えた。

「私たちは、洋上風力発電の候補地となっている海域で巻き網漁を営んでいる。巻き網漁に従事する漁師はおよそ150人である。40代、50代という働きざかりの漁師たちも数多くいる。みんな若くて、漁業をつづけようと張りきっている漁師が多い。巻き網漁は5隻ぐらいの船団を組んでやっているから、従業員も1船団あたり30人ぐらいいる。洋上風力の候補地となっている区域は本当にいい漁場だ」

「利害関係人の意見を広く聴取すると聞いていたのに、私たちは協議会のメンバーからはずされた。洋上風力発電の建設にあたっては漁業者の同意が必要となっているのに無視されている。私たちはそのことに怒っている」

千葉県はなぜ鴨川市漁協を協議会によばなかったのか。番組の取材にたいし、県は答えた。

「鴨川市漁協は、洋上風力発電候補地での操業実態など利害関係があることを認定するに足る客観的な情報がない。そのため、協議会の構成員には含まれていない。当該区域で操業していることを示す客観的なデータの提出を鴨川市の漁業者に依頼してきたが、提出がなかった」

鴨川市の漁師たちは反論する。

「納得いかないというか、びっくりしている」

「操業実態がないと県は言うが、私たちがそこで操業しているデータはきちんととってある。県から聞かれたさいも説明した」

その記録データを番組で見せてくれた。

◆漁協と漁師の間に温度差

番組の取材ではこんなことも明らかになった。

協議会には、夷隅東部漁協と御宿岩和田漁協が出席した。両漁協は、候補地を漁場として利用する頻度が落ちたので、風力発電事業への協力を前向きにとらえているという。風力発電事業に協力すれば協力金みたいのが入ってくるから、そっちのほうがいいとの選択もあるという。

だが、両漁協に所属している漁師たちが同じ考えかというと、そうでもない。漁協としては賛成だが、現場で働いている漁師からは、それはちょっとな、という反対の声もでている。

「優良漁場となっている岩礁(磯根)ではなく、鴨川の方に候補地をずらすことはできないのか」との問いにたいし、番組はこんな取材結果を示した。

「鴨川のほうは砂地だ。岩礁ではない。砂地で洋上風力発電を建設すると、もっと深く基礎工事をおこなわなければならない。岩礁でないと魚が集まらないが、岩礁でない区域では風力発電の建設がたいへんになる。洋上風力発電は国策なので千葉県も推進したい。いすみ市の沖は岩礁であり、建設しやすいということで候補地に選んだ」

洋上風力発電にくわしい海洋物理学者の河野時廣さんも番組に登場し、こう指摘した。

◆風車の建設しやすさで候補地を選定

「政府は再生可能エネルギー(再エネ)を推進している。だが、風力発電の比率は小さい。比率を上げようとすると、今は1基あたりせいぜい2000~4000kWなので、沿岸を風車だらけの状態にしないと石油・石炭火力発電に代わる発電所はつくれない」

いま稼働している洋上風力は秋田県沖の33基だけである。政府は、2030年までに洋上風力発電で1000万kWをまかなうとしている。2500基の洋上風力を新たに建設することになる。そうなれば、各地でさまざまな問題をひきおこす可能性がある。沿岸漁場にも大きな影響がでる、と専門家は言う。

秋田県沖は「洋上風力銀座」と呼ばれている。昨年12月から今年1月にかけて33基の商業運転がはじまった。洋上風力発電の受け入れ賛否をめぐって漁師は揺れた。3分の1近くの漁師が反対した漁協もあった。しかし「魚がとれなくなる心配はあるが、風車が建って補助金をもらいながら漁をする方がプラス」と説得され、賛成に傾いていった。とはいえ、補助金は関係自治体や漁協間の配分など未確定な部分が多い。地元では、政府や大企業との慣れない会議や接待に戸惑う声も漏れるという(『毎日新聞』2023年4月13日)。カネと接待による懐柔である。

◆危機に瀕する沿岸漁業

洋上風力を2500基も新設すればどうなるのか。日本の沿岸は風車だらけになる。沿岸漁業は大打撃を受ける。日本の食料自給率はますます下がる。自然や景観の破壊も進む。

風力発電は不安定である。風が弱かったり強すぎたりすると発電できない。洋上風力発電を2500基整備したとしても、電力の安定供給は不可能だ。現に、昨年3月と6月の電力ひっ迫では風力発電はほとんど役に立たなかった。そこでバックアップ用として火力発電所が必要となる。風力発電は必然的に二重投資となる。

メディアや政党、消費者団体、さらに市民団体などの多くは再エネ過信に呪縛されている。そのため、風力発電の本質的な弱点や漁業への影響などには目を向けない。今年4月3日の『東京新聞』は、洋上風力の野放図な推進を後押しする記事をデカデカと載せた。記事のタイトルは「急げ!洋上風力発電」である。沿岸漁業が危機に瀕していることを黙殺し、洋上風力を手放しで称賛している。なんとかしなければ、と思う。

 

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更新日:令和4(2022)年6月1日 千葉県

ページ番号:486866

(仮称)千葉県いすみ市沖洋上風力発電事業(法対象事業)

1.事業の概要

1事業者 株式会社レノバ

2事業の名称

(仮称)千葉県いすみ市沖洋上風力発電事業

3事業実施想定区域

いすみ市沖(約10,500ha)

4事業の種類及び規模

発電所の設置(第1種事業)

設置する発電所の原動力の種類:洋上風力(着床式)

設置する発電所の出力:最大45万kW(9,500kW×47基~15,000kW×30基)

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